とりあえず外に出ましょう。
眩しい朝日で目が覚めた。
清々しい朝の陽気が、一日の始まりを実感させる。
「……うぅん」
隣で香織が寝返りをうつ。
次第に意識が鮮明になるにつれ、信じたくない現実を実感する。
夢だったら良かったのに。というか夢であってほしかった。
「香織、起きて」
軽く揺する。
「うぅん…、あと五分……」
こんな香織の反応も微笑ましい。
「香織、起きてってば」
「ふむぅ……」
この街がおかしくなってしまってから、二日が経っていた。
もしかしたらこの街だけじゃないのかもしれないけど。
昨日はずっと家の中にいて、限られた食糧で過ごした。電気も止まっているため、保存のきくものが少ない。
いずれ食べ物が無くなるのを見越して、今日、どこか近場のスーパーにでも食糧を調達しに行こう、という話になった。
「今日は外に行くよ」
まだ寝ぼけている香織に声をかける。
「うん……」
浮かない顔つき。それが寝起きによるものか、私の発言によるものか、判断できなかった。
***
二人とも何となく制服に着替え、香織の家にあったリュックを背負う。
「これどっちもパパのなんだ…」
「……」
香織の両親は未だ帰ってきていない。
心配になるのはもちろん分かる。だけど…。もう…。
「可奈子は?ご両親の安否とか…」
「私は大丈夫。お母さんとお父さん、旅行に行ってるから」
「そうなんだ…」
嘘。
お母さんは家に、お父さんは職場にいる。
心配ないといえば、そんなことはない。
でもまぁ……、あの人たちなら…、多分大丈夫なんじゃないかなぁ…。
「よし!行こっか!」
「う…、うん」
「…大丈夫だって!さっさと行って、さっさと帰ってこよう!」
「…そうだね。……可奈子」
「うん?」
「もしもの時に、使って」
手渡されたのはラケット。硬式用だからけっこう重いし硬い。
「私が持っているより、可奈子の方がいいと思うから」
「…うん。分かった。使うときが来なければいいね」
「…そうだね」
静かに玄関の扉を開けて、周りを確認。
辺りには誰も何もいない。
互いに頷き、外に踏み出す。




