正確に頭を狙いましょう。
ゾンビは少しずつその距離を詰めてくる。
動きはそんなに早くない。
「和樹っ!頭を狙うぞ!頭!」
「うっ、うん…」
かすかに手が震えている。
ゾンビとの距離。
およそ20メートル。
「っ!」
純平が飛び出す。
そして、
思いきりゾンビの脳天めがけて、
木を振りかざし、
叩きつける。
一瞬の逡巡の後、
頭部が飛び散った。
「えっ……」
「ん……?」
謎の間。
「……っ和樹!戻るぞ!」
「…あ、あぁ…」
登山道を外れ、山道に戻る。
***
戻ってきてすぐに川に直行した。
返り血に汚れた学ランが気持ち悪い。
ジャブジャブと手揉み洗いをする。
「何か……、あっけなかったね」
「……そうだな」
全然そう思ってなさそうな表情を浮かべて、学ランを擦っている。
「豆腐でも叩いたのかと思うぐらいに柔かったよ。……アイツ腐っていたんじゃないか?」
「腐ってはいないと思うけど…。だって感染爆発からまだ2日しか経ってないんだよ?」
「……そうだよな」
…言っちゃあれだけど、僕も少し拍子抜けしていた。
インドアゲーマーの純平で勝てるなら、僕も倒せるだろう。
「あれなら僕でも勝てるかもね~」
「……」
「……純平?」
「……」
何やら考え込んでいるようで、返事をしてくれない。
しばらく二人、無言で手を動かす。
***
大体落ちたかな……。
元々が黒であるため、血が落ちたかどうか分かりづらい。
「……先に戻ってるよ」
まだ手を動かし続けている純平に背を向けた。




