いつ、どこで遭遇するか分かりません。
何だこれ。
両手にはそこらで拾った木の棒。
隣には同じく木の棒を構えた純平。
そして、目の前には。
おおよそ、学校以来となるゾンビの姿があった。
「行くぞ!」
「う、うん…」
事の始まりは今朝までさかのぼる。
***
「山の散策に行こう」
「…うん、いいけど。何しに行くの?」
「食べられる山菜とかあるかもしれない」
………。
個人的には、昨日食べた鮎をまた捕まえたいところだけど。
「鮎なら、また捕まえよう」
「僕の心を勝手に読まないでよ」
まぁ、山の散策も楽しそう…かな…?
野生の獣に注意しながら食べ物を探す。
何が食べれるかなんて全く分からないけど。
「セリにコシアブラ、ワラビもある…!」
何がそんなに嬉しいのか…。
こんなテンションの純平も久しく見ていないぞ。
「和樹!今日は御馳走だぞ!」
生暖かい目で見守る。
うん。孫を見るお婆ちゃんもこんな感じの気持ちなのかな。
ほんわか暖かい気持ちになってしまう。
っと、僕も何か見つけないと。
「純平。これ食べれる?」
手短な実をつけている草を取り、純平に渡す。
「……ヒヨドリジョウゴだな」
「食べれるの?」
「毒草」
………。
やっぱり見守っているだけにしようっ。
しばらく行くと開けた所に出た。
って、ここは…。
「登山道、だな」
登山者は本来ここを登り、山頂まで行く。
「…誰も居ないね」
「…そうだな」
周りを見渡しても人っ子一人いない。
うーむ。
「戻ろっか」
登山道から山道に戻るというのも変な話だな。
普通逆。
「…ん?」
「どうしたの?」
「いや、あれ…」
純平の視線の先。
そこには人影があった。
登山道をゆっくりと登ってくる。
次第に明確になってゆく姿。
年齢は多分20代位。男…か?
ハーフパンツにTシャツ。
浅黒い肌。白目。よだれ。腹部から垂れている血液。
「和樹っ!」
「………」
何でここに?
「ほれっ!それ使え!!」
そこら辺に落ちている木の棒を投げてくる。
とりあえず掴み、構える。
「くそっ!」
「ねぇ……、純平」
「何だよ!?」
「……これで何するの?」
「っ!決まってるだろ!」
「倒すんだよ!!」




