鮎はビタミンD、リン、カルシウムなどの栄養が豊富です。
「……やっぱり無理」
あれから30分近く水に浸かっていたためか、指先の感覚がもうほとんど無い。
「見つけられるんだけどなぁ…」
「あんなにバシャバシャ暴れていたら、魚でなくても逃げていくさ」
じゃあお前がやれよ!と言いたくなったが、そこは大人の対応をする。
「じゃあ、純平もやればいいんじゃないかな?」
ニッコリと笑顔を浮かべて言う。
あくまで笑顔を浮かべているつもり。
「言われなくてもやるよ」
そう言い、持参したバックパックから何かを取り出す。
針金とガムテープ…。
「何に使うの?」
「まぁ、見てろ」
針金を2、3本束ねて、U字を作る。
そして、そこら辺から丈夫そうな木の枝を数本持ってきて、これもガムテープで束ねる。
最後にU字と木の枝を繋げた。
……あぁ、モリか。
最後に持ち手の部分をガムテープでぐるぐる巻きにして完成。
「…よし、こんなもんか」
純平もボクサーパンツ一丁になり、川に向かってゆく。
「本当にそんなんで捕れるの~?」
「捕れるよ」
言うが早く、川に飛び込んだ。
***
「すっげ…」
目の前には川魚が2匹。
本当に捕ってきやがった…。
「鮎だよ」
うわぁ~~。
魚だ~~~。
「何して食べる!?塩焼き!?塩焼きだよね!!」
「…任せるよ」
よし!
塩焼き!
***
焚き火がパチパチと心地の良い音をたてている。
その横で串刺しになった鮎がこんがりと焼けている。
「まだかなぁ~!?まだかなぁ~~!!?」
「落ち着けよ…、子供か」
「だってさ!!自分達で捕った魚だよ!?」
「俺が捕った魚だ」
「そんなのどうでもいい!」
何かもう美味しそうな匂いが鼻孔を刺激してなおかつ斜めに串刺しにされたその魚のボディーがいわれようもない存在感を放ちつつもおしとやかな慎ましさを演出していて多分食べたら淡白なホロホロの身がビックバンのように口の中に広がり言われようもない感動が僕を包みつつもさらに頬張りたいという欲求を生んでし………
「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!」
「ちょっ、おまっ!?」
もう我慢できない!
食っちゃえ食っちゃえ!!
豪快に背中にかぶりつく。
「…………う」
「う?」
「うまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」
何だこれ!?
超うめぇ!!
「和樹さん。食レポお願いします」
「……よかろう。まず口の中に入れたときに広がるその風味。これが言われようもないコントラストの中に、ダイナミックな統一感がある。一言で言うなら………。ナイアガラの滝です。」
「下手か」
「…まぁまぁ、それはいいから!純平も食えって!」
「……ん」
無言で鮎をかじる。
もっとテンション上げろよ!
「……うまい」
何度も頷きつつ、かぶりつく。
俺も食おう。
しかし、数口食べただけで骨と頭だけになってしまう。
もうおしまいか…。
「和樹」
「ん?」
何やら純平が食べ終えた骨を火で炙っている。
僕もそれにならい炙ってみる。
数分後………。
***
「何だこれは……」
めっちゃカリカリ!めっちゃカリカリ!
「骨を火で炙ると、カリカリのおつまみになるんだ」
骨も美味しく平らげて満足。
でも……、
「もっと食べたいなぁ~」
思春期男子の胃袋はこんなもんでは膨れない。
「次は罠でも仕掛けてみるか」
「もっと食えるなら何でもいーよ」
そこら辺は純平に丸投げ。
「……あ~あ、楽しいなぁ…」
自然と欠伸が出る。
「…明日は、山の探索でもするか?」
「鮎取ろ。鮎」
「……分かったよ」
仕方がないといった風に薄く笑い。
横になった。
俺も何か眠たい……。
体こそ疲れてはいるけれど、心地よい。
何となく、よく眠れそうな疲れだった。
…よし、明日も頑張ろう。




