現実を知って川に潜りましょう。
「……何これ」
「…………」
山を下り、麓を目指すこと一時間。
ひとまず到着してネットを開いた。
そして、現実を知る。
「……ネット全体でのドッキリじゃないよね?」
「………」
だよね…。
***
・感染爆発はおおよそ、昨日の午後に全国的に起こった。
・一部の都市は、断水や停電などライフラインが断たれている。
・自衛隊が対処にあたっている。が、事態の収束は期待できない。
僕たちがネットを回って得られた情報はこの位だった。
「…実際に見て確かめたいね」
「危ないだろ。遊び半分で行くわけにはいかないよ」
……。
「戻ろう。情報も手に入ったし。それにこれからやることがあるからな」
「何?」
「帰ってからのお楽しみ」
***
再び山を登ること一時間…………。
「あ~~、疲れた~~~」
色んな所が痛すぎて、もう逆に痛くない所が無い……。
「純平は疲れないの?」
「鍛えてるからな」
嘘つけ。
僕と同じ引きこもりゲーマーのくせに。
「んで、何するの?」
「川に潜るよ」
「……いや、ボケなくていいから」
「川に、潜るよ」
「…何でよ」
「さすがにカロリーメイトだけで生活するのも健康に良くないだろ」
「まぁ、そうだけどさ…」
「タンパク質とろうぜ」
「……」
でも川ってさ…、衛生的な…、ね?
「んじゃ、行くか」
「どこに川があんのさ」
「少し下流まで降りよう」
……まて。
山を下るなら何で登ってきたんだ?
***
「それじゃ潜ろう」
「いや、そんな簡単に捕まえられるもんじゃないだろ」
というか、ここに来るまでに体力を使い果たんだけど…。
目の前にはそこそこな幅を持つ川が。
こいついつの間に見つけてたんだ?
「よし、服を脱げ」
「追い剥ぎか」
びっくりするわ。
「……いやちょっと!全裸で泳ぐの!?」
「あぁ、男らしく」
「全裸で泳ぐのは男らしいのか!?」
もう知らん。ツッコむのも疲れたわ。
学ランを脱ぎ捨てる。
トランクス一丁で仁王立ち。
「ぷっ」
「おい、何で吹いた?」
お前が脱げって言ったんだろーが!
「……ックク、…よし!思う存分取ってこい!」
「期待しないで!」
川に入る。
っ!冷た!
そうだよ!まだ5月だよ!
川遊びには早いよ!
それでも頑張って魚を取ろうとしている僕。
立派じゃないっすかね。
徐々に川底が暗くなってゆく。
よし、このくらいの深さでいいかな。
周りを見てみる。しかし魚の姿はおろか、他の生き物もいない。
「魚いないよ~」
「ファイト!」
ファイトじゃねぇ!
根性で何とかしろってか!?
ってか純平は何で見てるだけなんだ?
一緒に捕まえてくれよ…。
それから僕と川魚(全然いない)の孤独な戦いが始まった。




