やっぱり食料が大切です。
「食パンにポテチ…、コーンフレークに作りおきのカレー…」
「えっと…、麦茶と牛乳、野菜ジュース…。…うん、飲み物はこのくらいかな…。あっ、可奈子っ!アイスあるよ!アイス!」
「香織…、できるだけ大きな声は出さないようにね…」
あいつらが寄って来ちゃう。
あれから香織の家の現状を確認した。
まず電気が通っていない。
復旧は考えない方がいいと思う。
水も出ない。
正直、一番困った。
そのつど、補給にいかなくてはならないため、危険が伴う。
「こんなものか…」
テーブルの上には今現在、香織の家にある全ての食料が並んでいる。
食べ物は数日から1週間は持ちそう。
しかし、
「飲み物が無いね…」
「うん…」
二リットルの麦茶一本に少量の野菜ジュース。
それに牛乳。
牛乳はそんなに日持ちしないので、実質麦茶一本しか飲み物が無い。
「……外に行かなきゃならないかも」
途端に香織の表情が曇る。
「行きたくないな……」
「生きるために外に行くの」
死なないために。
生きて行くために。
「……うん、そうだね。生きなきゃ」
皆の分まで、と小さく聞こえた。
ふと、外を見る。
いつの間にか太陽がかなり傾いている。
オレンジ色の光が、リビングを紅に染めていた。
不思議。
こんなに日常が変わってしまっても、太陽は変わらずに私達を照らしてくれている。
綺麗…。
「……綺麗だね」
香織も同じ事を思ったのか、溜め息を漏らしている。
そのまま二人で暮れゆく太陽を眺める。
ひょっとしたらいつまでも沈まないのではないかと思わせるほど、幻想的。
しかしゆっくりと確実にその姿が隠れていく。
それに伴い、空が藍色のグラデーションを帯びてきた。
そして、数分と経たずに残光もろとも消えてしまう。
「沈んじゃった…」
「…うん」
普段は気にも止まらない風景。
それがひどく尊いもののように思う。
……夜が、やって来る。




