武器が無ければ足を狙いましょう。
屍達が校舎に向かって移動を始めた。
「……っ香織!逃げるよ!!」
息をなんとか整えて香織の手をとる。
「嫌ぁ……、嫌ぁ……」
「香織っ!!!」
「……………………(コクン)」
……急がなきゃ。
廊下に飛び出る。
すぐ側に1階への階段があるが、ここは校庭に近いため危険。
…………となると。
昇降口への階段っ!
思いきり駆け出す。
昇降口への階段は2階を突っ切った先にある。
そこから逃げるっ!
「はぁ…、はぁ…、うぅ……」
香織も涙を浮かべながら必死に走っている。
あと少しで逃げれるから…、お願い、頑張って……。
階段に差し掛かる。
ここを降りれば……!
安堵した束の間、視界に1つの影が飛び込んでくる。
「ひぃぃっ……」
喉を鳴らす香織を横目に、その影の正体を確かめる。
その影は一人の男子生徒だった。
……もちろん「普通の」であるはずがないけど。
「可奈子ぉっ!!」
「分かってるっ!」
こんなところで足止めくらってたまるかっ!
何かのマンガか、映画で見た。
あやふやな記憶。
それを、思い出す。
再び走る。
屍との距離が縮まって行く。
手を伸ばせば届く距離。
そこぉっ!!!
思いきり、屍の両足を横から蹴飛ばす。
バランスを崩した屍は頭から床に落ちた。
この隙に!
階段を1階まで一気にかけ降りる。
昇降口は閑散としていて、人っこ一人見当たらない。
逃げきれる。
その予想を裏切るように、多くの足音と呻き声が聞こえてきた。
校庭のやつら…!
もう昇降口まで……、
でも…………、迷ってはいられない。
昇降口から外に出ると、まばらながらも屍がいる。
足音と呻き声こそしたものの、まだ大多数は来ていないようだ。
今なら……!
屍達の間をくぐり抜け、全力疾走。
「正っ、門っ!」
正門から校外へ出る。
後ろを振り向くと、おぞましい数の屍が追ってきていた。
「はぁ…、はぁ…」
……間一髪。
「可奈子……」
「……うん、行こう。」




