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神などではなく

結局、3人といい汗をかいた。泣いて喜んでいたよ…いや、普通に戦っただけだが。なのに、帰ってきたら何人かに鬼畜扱いされた。おかしい…



「お兄ちゃん、小さな子を痛め付ける趣味があったんだね…むしろ、それなら私がして欲しい」


「お兄って、昔から男の子には容赦なかったもんね。でも、今は女の子なんだからボロ雑巾になるまで痛め付けるのはダメだよ」



いや、俺は反撃してもいないんだが…自爆とか味方を巻き込んだ攻撃してたのはあの3人だし。そんな事を言っても、俺の好感度は元に戻らなさそうだった…なんでやねん。











夕食では微妙な距離感があった。まだ殴られる方がマシだった。明日から渡せるか不安になってきたが、無理なら無理で仕方ないと割り切ろう…というより、ここからは強制でもなければ必然とは思っていなかった。


全員、大切は大切だし幸せにしたいとは思っていた。責任とかあるが、灯里や奏多たちを他の男になんていう嫉妬もある。簡単にいえば、それが正しいと思うか否かの違い…しかも、その正しさは自己満足だ。



「というわけだから、拒んでくれて構わないんだが…」



部屋に呼んだアースとカティナにそう告げた。アースに関しては前世では接点がないし、犯罪神の処理も終わって庇護する必要は無い。カティナだって、灯里の分身とかではなく1人の存在として自由にして欲しい。


なんて言ったら、アースは泣き出した。いや、展開としては分かっていたが、犯罪神から受けた傷は簡単には癒されない…また殴ってくるべきか?


そんな現実逃避してる場合じゃないか。別に嫌なわけでは無い。フレアの事とかあるし、そっちに走らず男である俺にそう思えるわけだし、他にそんな人が出来るのかという疑問もある。それ以上に犯罪神とそっくりな俺でいいのかとも思うが。



「また、同じ事をさせようとしたあなたが悪いんです…」



同じ事か。彼女は自分の死後報われない生き方をした。助けたかった人に2度も殺された…つまり、完全に俺は助けたかった人になったわけだ。しかも、体を砕かれる程の恐怖を味わい、今捨てられかけている。


奏多の剣から解放される方法だってある。成仏も選べる状況なのに、それをしない。ましてや、神剣を超えただろうからマナの女神として復帰出来るだろうが、それも拒むらしい。



「フレアが兄貴と呼ぶからだけではなく、1人の女の子として傍に居たいと思っているんです…剣として使ってくれるのは構いません。惜しいと思うなら、手離して欲しく無いです」








まだ、真緒だった時にお葬式に出た。亡くして惜しいと好きな人や皆が泣いていた。それに釣られて泣いた…その程度だった。


転移して、その人が皆の支えになった。美化とか英雄視出来る人が身近に居なかったからだろうと割り切ったけど、その人の事を悪くは思わなかった。


死後、マスターから何度も何度も聞いた。助けたかった人が居た。同じだったから共感出来た。フレアも同じだった。


そして、こうやってきちんと出会って、色々して貰った。そして、気付いた。皆を通して見ていたのはこの人だと。


だから、失うのは嫌だ。








まあ、沖田が好きだったのがいつの間にか俺に変わった理由は理解しておこう。でも、泣き落としはやめて欲しい。罪悪感が半端ない…俺が悪いのは自覚しているけども。


やっと救う事が出来たわけだからな。大切だと思えた人を…



「分かった…但し、奏多の剣として償うのはもうおしまいにしろよ。神とか云々じゃなく女の子として生きていくのが条件だ」



償いはもう終わったと思う。確かに今も魔物による被害とかある…が、闇の勇者の活躍に比べたら可愛らしいものだ。それに生活の一部として根付いているのだから構わないと思う。


むしろ、俺は償いなんてしないまま今に至るわけだし、そういう面ではアースの方が立派じゃないか…まあ、魔物をけしかけて反省する相手が居ないからしないけども。



「女の子として…」


「普通に笑って過ごす方が良いだろ。少なくとも俺の死とかに関しては何の責任とか無いわけだし、俺の前で負い目を感じる必要だって無い…それに、許して貰えたんだろ。灯里たちに」


「はい、それは…」



この世界に生きている中で400年前の出来事を未だに恨むのは生きていた奏多くらいだ。むしろ、立場が違ったらあいつら全員やりかねない…灯里なんか、間違いなくやったはずだ。はずだというかやってるか。


だからこそ、おしまいだ。俺が大切だと思うからこそ笑っていて欲しい。それだけは変わらない…誰に対しても順番とか関係無く平等にだ。


だから、俺はアースの手を取り指輪を嵌める。



「この世界の神である俺が許した。それだけで誰も恨めない…でも、俺の女になるなら神なんて関係無いなんて恨む奴からでも守る。だから、笑ってくれ」



俺はあいつらに比べて十柴真緒という少女を知らない。マナの女神としてどれだけ頑張っていたかも、精霊王の悲しみも知らない。けど、知らないから拒絶するなんて出来ない。好きにならない理由なんて無い。



「よろしくな、アース」


「う、うん…」



顔を真っ赤にしてるアースと、俺らのやり取りをずっと黙って見てたカティナ…そろそろ、こっちも相手にしてやらないと噛まれそうだな。



「……私が居なければ止める事なんて出来ない。ううん、誰が欠けてもあの時の時間はここには繋がらない。愚かな女神が神を解き放ち世界が滅んでいた…だから、感謝しているのなら私たちを拒まないで欲しい」



カティナはそう言って左手を伸ばしてきた。その表情は真剣そのものだった。それに、そう言われたら拒む事は出来ない。



「やっと出来た居場所を奪わないで欲しい」


「…そうだな。カティナ…いや、灯奈とうな


「……え、いつから知って…」



藤島灯奈…生まれてくるはずだった灯里の双子の妹。それを知ったのは死後、墓に入ってからだ。本当に小さな骨壺があった…俺たちの知らない妹が、生まれてこれなかった妹が居たと知ったのはその時が初めてで、おそらく灯里も知らない。



「それはこっちのセリフだ。刺された時の残滓が伝わってきたから繋がったけど…」


「あの駄目姉と1つになった時に生まれてくる前の出来事を強制的に…だから取り込まれた時も拒絶反応とか無かったのだと理解したし…元は1つの存在だなんて思いもしなかった」


「あの…お話の意味が…」



アースをすっかり蚊帳の外にしていた。伝えるべきだろうか…妹がまた分裂していたとか。いや、元々そんな状態だったわけだが…

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