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始まる覚悟の季節



久しぶりに奏多に腕枕をして寝た気がする…まあ、心配させたわけだし構わないんだが、朝起きたら復活した灯里に問い詰められた。原因が何を言うと突っぱねたが。そもそも、昔みたいに泣きそうな奏多を放置出来るわけないだろ…俺が死んだ時も泣きはしたが気丈にもお前を支えてたじゃないかと言いたい。



「それに、俺もすぐに寝たんだからな…」



おそらく、貧血だ。カティナではないが血が足りてない。後、そういう欲望の方も何故か足りてない。今は大罪で抑え込んでいる感覚が無いというのに奏多を襲う気すら起きなかった。燈真の時は知らず知らずの内に処理させられていたがそういう欲求が無かったわけではないし、むしろ抑え込んでいなければユーカとかメアとかに……いや、そういう事はいい。踏ん切りつけるために解放していこうとは思ってたけど、先に憤怒が解放されてあのザマだったんだし。


まあ、だからといって奏多を襲っていたかは別だと思う。そもそも、死後に奏多から聞いたのだし、見ているわけだから最初に手を出さなきゃいけないのは灯里だと理解している。でなきゃ、また斬られて今度はフランケンにされかねないと思い知ったわけだし。


というわけで、この2人にはさっさと渡しておこうと思う。



「とりあえず、俺の気持ちだ。受け取ってくれ」



あの対結界阻害用の指輪を2人に渡す。何の変哲もない銀色のシンプルな指輪だ。



「こ、これは…婚約指輪?」


「灯里ちゃん、ただの付与効果がある指輪だよ……そうだよね。お兄?」


「思いたい方を思ってろ…」



敢えて深くは言わない。言ったところでそれは陳腐にしか聞こえない。「好きだ」とか「愛してる」なんてのは1人に向けて言う言葉だ。全員にその言葉を言うのは軽薄でしかない。だから、こう告げるしか出来ない…



「その代わり、一度したら二度と外すな…とまでは言わないが他の男から送られた物をするな」



そう言って、2人に渡した指輪を奪い取りそれぞれの指へ、あるべき位置へとつけた。



「……呪いの指輪とかじゃないよね、お兄?」


「あー…呪いの指輪かもな。ある意味じゃ」



放心してしまった灯里を見てるとそうかもしれないと思う。そんなのは付与してないつもりだが、ある意味最大の呪いを施したようなものだ。後悔はしないし、本心からの言葉だから身悶えたくなるが今更だ。


とりあえず、次からはもうちょっと工夫と雰囲気作った上で渡そう。後、この状況がとんでもなくヤバいと今気付いた。確実にまだ血の足りてない俺に対して完全回復している2人…押し倒されたら抵抗しても無駄だ。指輪の効果で害意なければレジストしてしまうだろうからスキルで眠らせるのも難しくなった。



「あー…お兄の考えも分かるし、個人的にはあの日の続きを合意の上でしたいとは思うけど、お兄の元気な姿を皆に見せたいから今は…」



それに灯里だって口ではあんなだけど、結局最後の一線は越えなかったからと奏多が灯里をヘタレ認定した…まあ、気付かない俺もどうかはさておき、灯里だって罪悪感とか葛藤とかあったはずだ。その結果、残念度が増したんだろうし…


俺だって燈真としてはその一線は越えなかったのは幸いだが、肉体的に兄妹でなくなった今なら越えるのは悪くないと割り切ろうとしている。抵抗が無いわけではないが…もう少しでボートに首だけ乗せていかれそうだったと思えば倫理とか禁忌とかなんて二の次だろ。



「…改めてって事にするか。先に指輪を渡しておいた方が良い奴も居るだろうし、家を作ってからでもな。まあ、何人が受け取ってくれるか次第だけどな」










お兄に灯里ちゃんと2人で肩を貸しながら食堂へと向かった。左手の薬指には優越感があったけど、これで皆との立場が変わったわけじゃない…むしろ、昨日の出来事で対等になった。


案の定、食堂に着くと皆がお兄に抱き付いてきた。歳下の子ほど大胆に、歳上の子はさりげなく…皆泣きながらだ。


神様だから、そう簡単に死ぬ事は無い。ましてやお兄は最強の神だ…でも、どう見たってあの状況は死んでいたとしか言いようが無い光景だった。知らない子が見れば尚更だ。そんなお兄が蘇った…もし、あの時そうであったならあたしたちだってそうやって泣きながら抱き付いていたはずだ。


神様とか魔王とか、藤島燈真でもアレクでもレトラでもカイン・アゲートでもトウマ・アレクトラでも構わないけど…お兄は生きている。皆が大好きなお兄が一度死んでも生きている。


失いかけて初めて分かる事だってある。恐怖とか関係無く大切だって思えるから昨日は……



「奏多、俺がデュラハンになって皆を襲ったらしいんだけど…ちゃんと分かるように説明しろ。ローズリッテたちが女神にスキルアップしてる事も、フローラが話せるようになった事も含めて全部」



あ、お兄にバレた…しかも若干怒ってる。どう説明したものか。










ミケが俺と戦って、「やっぱり強かったにゃん」と言い、ファルやサレナが「もう二度と戦わせないで」と泣きながら懇願してきて…以下略するが、どう考えても話がおかしい。フローラが「ごしゅじんさま、子作りするガウ」って言ったのは別の意味でおかしいとしても、総合して判断すると俺が皆を襲ったという事になる。戦闘的な意味で…


そうなら、先に指輪を渡していたらあの悲劇をまた繰り返すところだったという事になりかねなかった。結界があったから皆は無傷だったらしいし、俺には沢山ダメージ与えたようだがそれでフレアたちは折れたらしかった。



「…というわけで、お兄デュラハンを弱らせたところで首をくっつけて元通りになってめでたしめでたしなんだよ」


「全然めでたくないな…」



館の中で身内発端による世界滅亡寸前の戦いが小規模に繰り広げられていたとか…というか、自分で言うのもアレだがそんなバケモノに結界あるとはいえ、よく立ち向かっていけたなと。灯里である【秩序】が頭に美徳、体に大罪を綺麗に分けてくれたお陰でバカ魔王の時みたいに自爆しなかっただけマシかもしれないが、俺はどこぞの愛と勇気しか友達居ない奴かと…現在進行形でそうではあるが。



「まあ、先輩が無事だったんだし誰かが犠牲になったわけでもないし良いじゃないですか」


「兄様、首に違和感があればまた一度切り離してつけ直しますけど…」


「俺の顔にアンコは詰まってないからその発想やめろ」



俺の頭に脱着機能は無い。灯里に斬られたからといって…というか、少なくとも俺は胴体から真っ二つにされた記憶あるのにどうして首で分離したのか。振り回しやがったな、あいつ…後で風呂とかで確認しておかないと逆にくっつけてあったとかありそうで怖い。


怖いといえば、結界が発動していない事も今更ながら疑問に思えた。指輪を俺が持っているからとも思えたが、そうではないらしいのは感じられる。奏多が言うには俺の負の感情を返り血を浴びて神になったルビィたちに分散して肩代わりさせたらしい…なんと危険な事を。だが、それで今の俺が危険な存在ではないと認識されているのであろう。その結果がローズリッテたちのスキル女神化になったのは微妙なものがあるが。


後、フローラが話せるようになったのはミケが何やらやらかしたらしかったが理解に苦しい…合体ってなんだよ。ロボットか何かと勘違いしてるんじゃないのかと。まあ、たとえロボットでも異星人でも俺はこいつらを手離すつもりは無いらしい。俺なんかパンになりかけたわけだし、そんな事は些細なわけだ…



「お兄、食べられるのは同じだけどパンはないよ…」



奏多がなんか酷い事言ってるが気にしない。どのみち、責任とか何とかよりも俺がこいつらを傷つけなかった事や無事でいてくれた事に安堵しているのだ。そこに答えがあるわけだし、俺が無事で良かったと泣いてくれる奴らを無下に扱う程、俺は腐っていないつもりだ…後でちゃんと神経やら血管やら切断されてないか確認しよう。マジで腐ったらシャレにならん。

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