隷属する意思
まあ、とりあえず最低限の信用は得たという事にしておこう。何なら、増えた魔物を退治するなり使役すれば良いのだ。【七大罪処刑】が適応するかは疑問だが。
何なら、この【隷属の首輪】を量産しても構わないのだ。というわけでレプリカを作ってみた。
「トウマ様、これは私の分という事ですよね?」
アリエルアさん、何言ってますか?
こいつら、噂のチョロインって奴かと…いや、混乱するな俺。助けたから錯乱しているだけか、使った魔法の副作用か何かだと思う。思わなきゃやってられない。その期待に満ちた瞳に見覚えがあったから。
まさか、これが真の御導きじゃなかろうな女神様…だとしたら恨むぞ?
「安心しろ。隷属なんてさせるつもりは無い。リーゼアリアもだ」
そう言ったらこの世の終わりみたいな顔を2人にされたんだが、どうすればいいんだよ。神官たちを見たが目を合わそうとしやがらない。せめて聖女様だけでも説得しやがれ。
いや、神官たちの考えが分かる。実際にはそうならなかったとしても国王の後妻にさせられかけた少女が穢されたと思っているのだろう。俺はリーゼアリアからそのような事はまだ無いと本人の言葉をまた聞きしているし牢の中を見たから理解している。
隷属させるつもりは無いが、ここに留め置くのは危険なのは事実か。それはリーゼアリアも同じだ。彼女たちの事を考えるなら、この首輪は俺のもの…というより関係者という何よりの証明になる。
幻の勇者なんて名乗るつもりは毛頭無いが、それなりに魔王らしくすれば無駄な脅威に晒される必要も無い。もっとも、そんな打算的な事をこの2人が考えているとは思えない。むしろ、駄女神様を見ているようでガッカリ感満載ですが何か?
いや、今何と思ったよ、俺…2人が灯里みたいだとか…
「もし、奴隷にしてくれないというのなら…押し倒してでも奪い取ります、お兄ちゃん」
「更に幻の勇者だと言いふらします、お兄ちゃん」
ちょっと待て。リーゼアリアとアリエルアがなんでお兄ちゃんと言うんだ。嫌な予感がする…いや、それしかしない。
さっき、2つの力を行使してアリエルアを助けた。【転移】【回復】を使って。それは構わないんだが、もう1つ【時戻】を使ったのが災いだったかもしれない。
もし、灯里が転生していたとしたら。更にその魂が2つに分裂していたのなら…あながち、あんなザルな考えも女神の生まれ変わりというのも信用出来てしまう。それに何より…
俺をこの世界に呼んだのが灯里なら納得出来るのだ。
「ちょっと聞いてくれ。俺の妹が転生した上に2人に分裂して昔みたいに耳元で愛を囁いてこようとするんだが…え、何を言っているか分からないって。俺にも何がなんだか分からない…」
「「やっぱりお兄ちゃんなんだね」」
現実逃避しようとしたら、確信を持たれたでござる。カマかけだったのかよ…オワタ。仕方ない、現実を見よう。
「確かに俺は前世では藤島燈真だったし、灯里様という妹がいらっしゃいました」
「「灯里様なんて言わないでよ、お兄ちゃんっ!」」
いや、様付けしろと言ったのは君らだからさ。草葉の陰じゃなく目の前で泣くなよ、マジで。
とりあえず、両手でそれぞれの頭を撫でてやる。周りの神官たちの目なんか知った事か。
後、お望み通り奴隷にしておこう。2人がかりで襲ってこられたら負けは確実だから禁欲を命じた上に【色欲】を行使して性欲を減らしておかないと俺の貞操が危なすぎる。
心配しすぎだとか思うだろ。俺だって通夜で俺の遺体を襲って「お兄ちゃんの子を作るんだ」とか錯乱してた姿見てなかったらそう思ってたよ。さすがに奏多が止めてくれたが。
ええ、うちの妹はブラコンこじらせてましたが何か?