大森林での1週間
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初日、転移陣の把握を済ませた。日帰りでも良かったかなとは思ったがたまには1人でのんびりしたいし、稼ぐ必要もあったから魔物退治を不眠不休でやろうかなとも思ったが、ふとフローラにやった秘石の事を思い出した。名前の由来になったのだから、残りの7人にも同じように秘石を渡してやろうかなと思った。
まあ、奏多に聞けば灯里が何処かへ放り投げたとからしく所在不明らしいし探せばあるんだろう。無かったら【時戻】とかで手に入れよう。そんな事すれば引き返せないのは分かっているが、名前与えた時点で手遅れだからな…
とりあえず、【地図師】や探索系のスキルを使って秘石が何処にあるのか調べてみた。7つともあった…大森林の各地に。集落の中にもあるし、それ以外の場所にもある。一番近くから回収していこうか。
それは真っ赤な宝石だった。大きな岩に突き刺さっていた…どうやったらこうなるんだ、灯里。いや、これは奏多が岩で固めたんだろう…そう思う事にした。別に供え物とかしてないし持って帰っても不都合は無いだろう。
そう思って発掘していると割れた。簡単に真っ二つになった勇者の秘石…慎重にやったのだが。仕方ない、ルビィだけでなくローズリッテにも作ってやるとしようと思い、その場でアクセサリーを作る事にした。
ローズリッテはサレナが大好きな女の子だ。いや、変な意味では無く。だからこそ、俺に着いてきたみたいだし、貴族らしくあろうと努力しているが本来は極普通の人付き合いが不器用な子だ。
ルビィはまあ、ラミアとかには忌避感とかは無い。ぶっちゃけ、前の世界では魔物に居たし…だからこそ人化の魔法を掛けた。罪悪感とかあるし。まあ、魔物と比べるまでもなく普通の女の子なんだよな。食ってこようとしないし…うっかり斬ったりしないよう注意しておかないといけない。注意しすぎて近寄りにくい感じだから改善しないといけない。
そんな事を考えつつ、ルビーの秘石でペンダントを作ってみた。というより、宝石デカいからペンダント以外に作りようないな、これ。
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2日目、今度は大木の中にオレンジ色の宝石が入っていた。成長して中に取り込まれたのだろう。周りの木よりやたらと大きかったが単に土壌が良かっただけだ。奏多が投げたか隠したんじゃないかと思い始めた。帰ったら問い詰めないといけない。
大木の伐採中にまた真っ二つになった。脆くないか、この宝石…まあ、大まかに切りすぎた俺にも問題あるし宝石として使うだけなので構わないんだが。というわけで、加工しよう。マリーテレズとトリン用だな。
マリーテレズは…あいつ、腹黒いだろと思わざるを得ない。ローズリッテに比べたら計画して行動している事があるみたいだし油断ならない。まあ、それでも子どものする事だしサレナが好きなのは姉と同じだから心配する必要は無いのかもしれない。
トリンは怪力ではあるが、美的センスが壊滅しているドワーフだ。まあ、それを除けば頑張り屋で他の6人を取り纏めたりしているし悪い印象は無い。ファルと連携して大森林をどうにか改革していきたいとか考えているとイリーナは言っていたから期待しておこう…力で解決されたら大変だから気を付ける必要もあるが。
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3日目、土の中に埋まっていた。もうこれは奏多がやったの間違いないだろ…かなり掘り返してようやく出てきたわけだし。しかも、最初から割れてた…圧力でこうなったのか、割れたから隠したのかは知らないが、嘘はよくない。まあ、わざと割って再び誰かを召喚しないように仕向けたのかもしれないが。
それも追々聞くとして、何で順当に黄色が見つかるんだろうとも考えさせられる…偶然だろうとは思うけど。ディライアとオウギ用でいいか…
ディライアは…アホイヌだな。ミケと喧嘩しないだけマシだが、飯で簡単に他人の言う事聞くタイプだ。後、強い奴には従うらしいから扱い易くはある。まあ、イヌが嫌いなわけではないからきちんと躾けてやらないといけない。
オウギは…アホドリだ。黄色はそんなのばかりかとも思うが、朝から耳元でド下手クソな歌を聞かされたら誰でもそう思う。セイレーン気取りはもう1人居るし、ミケと3人で騒音問題を巻き起こすから始末に負えない。羽毛が黄色だからバカにされてただけじゃないと思う。
2人のアクセサリーには知力上がる効果とか必要かもしれない。他のも後で何か付与しておこう…
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4日目、泉の中にあった。何か投げ入れたら良いものに交換してくれる系の神が無断で住み着いてたが穏便に済まなかったので色々投げ込んで埋めてやった。不要な神具をそれ以上のものに交換してくれる事は無かった。泣きながら宝石を渡してきたので許してやった。まあ、トウシューの方の飲み水じゃないから大丈夫だろう。一応、周辺の集落には注意喚起しておくが。それで討伐されても知らん。
というわけで、手に入れたのは緑色の宝石だった。カビていたりはしてないし、何回も浄化しておいたから大丈夫だろう。とはいえ、リーヴァとエメラに渡すのは気が引ける。
リーヴァは魔族らしからぬと言えば語弊があるのだが、とても優しい女の子だ。最年少という事もあるのだが、皆に甘やかされがちだがそれ以上にしっかりしている。それに霊魔族としては成長途中でまだまだ強くなるらしい…
エメラは無口な感じもするが、光合成してるだけの植物好きの女の子だ。むしろ、蔓の棘以外はまさに植物系な子だ…親が居ないだけで供物にされかけたらしく、トウシューの緑化に貢献したいと張り切っていた。
あかん、こんな汚い宝石を純粋な2人に渡すべきではない。あらゆる殺菌消毒した上で再構成して抗菌とかしておかないと。今までのもそうしよう。過保護かもしれないが、あかりん菌だけで十分なんだよ、こっちは…
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5日目、秘石の噂を聞きつけて集めようとしていた王の類いが洞窟に隠れていたので倒した。さすがに2日続けておっさんと対峙するのはめんどい。早く帰ってミケの猫耳モフって癒されたい。
今日の収穫は青色だった。順当なのは気にすまい。既に割れていたからおっさんの頭も同じようにしたら消え去ったから大丈夫だろう。後処理はパシリに任せた…受け入れないとこの世界に全部くっ付けるぞと言ったら喜んでやってくれた。色々あるんだろう。こっちもロニカとルマリのために色々しないとな…
ロニカは…ハエ娘だ。そう言われているが、実際に人の頭の上を飛んでるからちょっとウザい。灯里よりは可愛げあるだけマシだが、羽音を含めたら微妙か。いや、悪意が無いだけ……どっちも同じだ。殺虫剤使わないよう精神鍛えないとな。
ルマリは魚臭い音痴だ。しかも青魚に多く含まれる頭に良い栄養が足りて無い。ミケの餌になる日も近いかもしれない…この前は風呂で煮魚になりかけてたらしいし。魚を食べようとすると涙目でこっち見てくるし。そのくせ、自分は食べるという…
どうして、さっきのおっさんといい青色に関わる連中はこうなのか。きっと灯里の所為だな。水の勇者のイメージカラーが青色で残念なのが発端だ。間違いない…
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6日目、そろそろ灯里が探しに来そうなものだが来ないので集落で宝石探しをした。藍色の宝石を手に入れたと同時に対立している集落との小競り合いに介入しなきゃいけなくなってしまった。そんなオーク同士の女騎士取り分で揉めるなと。しかも、シチュエーション楽しむだけの善良なプレイじゃないかと。顧客の大半は魔族らしいし…
まあ、適当にするしか無いんだろうな。明日になれば対立している集落にある宝石もくれるらしいし、さっさと加工して明日に備えよう。ルフィニとサファの分だな…
ルフィニは苦労人だ。ただでさえ個性的な他の貴族の纏め役なのに、ダメドラゴンとガキドラゴンの相手までしてくれてる。正直、息抜きしないといけないとは思う。サレナのお気に入りみたいだし、イリーナ共々頼りになるから帰ったら息抜きさせないと倒れられたり謀反されたら困ると思う。
サファは…まあ、タコ足でのマッサージが上手だ。変な意味ではなく、指圧のような感じで体のツボを吸盤で的確かつ絶妙にマッサージしてくれた。マッサージ師としては一流なのだが、スキュラとしては亜種であるからと供物にされたらしく、中々の苦労人なのはこちらもだったりする。その反面、志は高いようでヘビ毒を用いた治療が出来ないかとアクアに相談しているらしいし…
さっさと済ませて帰りたくなってきた。無謀な事を考えたものだと思う…それで見つかるのもどうかと思うが。
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7日目、俺が代表をする「くっ殺せ」と言われても持て成すオークの集落と、敵対する「くっ殺せ」と言われたらヤる事やるオークの集落の代表との話し合いになった。
代表が灯里だった。いや、意味分からない…
「大丈夫だよ、お兄ちゃん。『くっ殺す』ってやったら怯えて手を出して来なかったから」
「そうかい…」
襲われてたらこの世界は消えてただろうから良いんだけどな。俺が消すか灯里が消すか奏多が消すかは状況次第だが…
灯里は1週間も枕を探していたらしい。で、無かったから作ろうとしたところでオークの集落があったので寄ったら巻き込まれたらしい。交渉が上手くいけば高級枕を作って貰えるらしい。「新婚専用の枕だよ」というからろくな枕じゃない気がする。
とりあえず、交渉は両方纏めて緩急つけて接客すれば良いという結論に落ち着いた。灯里の「ツンデレだよ、ツンデレが良いんだよ」という発言と俺の説明がきっかけだったとか違うとか…どうでもいいや。
で、灯里の報酬は明日までに用意するからと泊まる事になった。灯里と同室なのは微妙だったが、別の部屋でも不安は不安だ。どのみち襲われるなら同じ部屋で構わない…対策しやすいから。
と思っていたのだが、さっさと寝やがった。枕を探し続けて疲労が溜まっていたのだろう。奏多たちが捜索しているんではなかろうかと思うが、明日くらいに大森林焼き始めたりしないよな…
まあ、明日帰るから大丈夫だろう…というわけで、ラベンナとツァイのアクセサリー作りをしよう。
ラベンナは、まあ…魔族の風俗管理を率先して行う部門を担当していたのか根本的に魔族思考の残念娘だ。むしろ、トウシューにまで事業拡大しようと考えてるところがある。灯里と組ませたら大変な事になりそうだから気を付けなければならない。いや、ある意味手遅れかもしれないが…
ツァイは器用だ。自分の糸で編み物してるわけだし…色だけで差別されて供物にされたらしいので酷い話だと思う。むしろ、アラクネ族の損失ではないかと…だけど、帰しても良い事は無いしトウシューで店を開けば良いんじゃないかと思うわけだ。
店の事はシュウゾウに聞くが、ラベンナのは却下させるよう圧力を加えなければいけないと思う今日この頃…
そう考えたら、全員に渡す必要あるかなと思えてきた。まだ引き返せるのも居るわけだし…というより、説得すれば引き返せると思うわけだ。あかりん菌の感染拡大を防ぐ方法も思い付いたわけだし…
それはさて置き、このままだと他の奴らに土産が必要か。枕を土産にされたらどうにもならないし。まあ、あいつらの事だから灯里と一緒に帰ったらバカな事を考えそうなわけだが…心配される方がマシかもしれない。




