パジャマパーティーという名の審問会その2
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とりあえず、皆の覚悟を聞いていきたいと思う。私とかなちゃんが進行役なのはお兄ちゃんと付き合いが長いからだ。1番妻と2番妻の余裕…と言えるまでの自信は無い。このメンバーを見てるとお兄ちゃんがロリコンなんじゃないかなって思えてくるからだ。いや、違うはずだ。お兄ちゃんは年下から愛される人だった。それだけの話だ…若干、ロリババァも混ざってるけど。
とりあえず、私とかなちゃん、ミケちゃんとイリーナちゃんとファルちゃんとサレナちゃんは聞く必要無いと思うから後回しだ。私にはまず解決しなきゃいけない2人の心友が居る。
「リーゼアリアちゃんとアリエルアちゃんは嫁側だよね、当然」
「…まあ、アカリ様がそうしろと言うのなら…」
「そうですね。その方が良いのでしたら…」
ダメだ、日ごとに自信を失っている気はしていたけど卑屈になってる。むしろ、いつの間にか【隷属の首輪】を着けていた。私が抜けた事と前世を思い出させた事で精神的に弱ってるとお兄ちゃんは言っていた。あかりん菌と言われても否定出来ない…アリエルアちゃんなんかは私の使っていた僕っ娘設定を懸命に真似ているわけだし。こんな事なら2人になってた時に貞操奪っておけば良かったとも思えてくるよ…
「この世界の、この時代のメインヒロインは2人なんだから、お兄ちゃんが好きだってはっきりしないとただ父親殺しに加担させた迷惑な娘とその妹って扱いで終わっちゃうよ?」
まあ、2人の事を考えればお兄ちゃん以外の人と幸せになるって手段もあるにはある。学園に通えばそれなりの男はいくらでも居るはずだ…相手は亡命したとはいえ王女と聖女ならそれなりの需要はある。でも、2人はお兄ちゃんの傍に居たいと思っているから私を受け入れていたのは確かだ。なら…
「前世の2人はお兄ちゃんに恋人にしてもらえなかったけどメールの付き合いだけはあったんだから、下地はあるんだし…」
「あの…お言葉ですが、莉瀬の時はメールだけの付き合いじゃなかったですよ?」
「3人でたまに遊んだり、勉強教えてもらったりしてました」
「……なんですと?」
かなちゃんの方を見るけど初耳って顔してる。ミケちゃんたちもだ…そういえば、たまに友達と遊んでくるとかって出かけてたよ。友達は友達でもメル友だったのか…
水族館や美術館に3人で行ったとか、夏休みの宿題を一緒にやったとか…2人で盛り上がって話をしてる。修学旅行のお土産も貰っただと…私たちとほぼ対等じゃないか。
「………2人は奴隷妻で良いと思うよ、もう」
「灯里ちゃん、奴隷妻って…」
かなちゃんが私をたしなめようとするけど、そんなものだと思うよ。サレナちゃんなんか2人の話を聞いて落ち込んでるし…前世の話とはいえ、除け者になってたから尚更だよ。
「まあ、莉瀬の時は冗談半分で本郷さんと付き合った後に1回だけ浮気してもらおうなんて話し合ってましたし…」
「それできっぱり諦めようって…」
「不潔だよ、2人ともっ!」
「灯里ちゃんは他人の事言えないよ…恋人が出来てそれがあたしだったら3人でしようとか言ってたじゃない…」
それはかなちゃんだけじゃなくネコちゃんたちにも言ってましたが、何か?
まあ、前世の事とはいえそこまで考えてるなら生まれ変わっても叶えた方が良い事もあるよ。
「こほん…とにかく。リーゼアリアちゃんとアリエルアちゃんはお兄ちゃんの愛の奴隷妻になるしかないんだよ。じゃないと、娼館に売り飛ばすからね」
「言うに事欠いてそれですか…」
イリーナちゃんが横槍入れてくるけど、一緒だったわたしはよーく知ってる。スライムの影響がどれだけのものか…魂に欠落させるほどなんだし、2人の思考に影響を与えてる事も。そう考えてみればあかりん菌もスライムの一種ってお兄ちゃんに言われそうだ…
「とにかく、私が入ってたとはいえお兄ちゃんと添い寝までしたんだから、自信持って良いよ。余程の事がないとそこまでしてもらえないんだから」
「それはあかりんが襲うと理解してたからにゃん…小夏の時は毎回潜り込んでも怒られなかったにゃん」
ここにも裏切り者が居たし…毎回とか聞いてないよ。たまに泊まりにきて夜中に目が醒めると居ないなとは思っていたけど。ネコちゃんの裏切り者っ!
「まあ、灯里ちゃん寝相悪いから避難したくもなるよね…」
「かなちゃんまでそんな事言うんだ…」
落ち込む私を放置して、イリーナちゃんが話を進めようとしてる…
「結局、最後に決めるのは兄様と自分自身ですし周りの言葉に惑わされる必要は無いんです。兄様と一緒に居たいって気持ちがあれば受け入れてくれます…裏切らず、死なない限りは」
「イリーナさんがまた私を責める…」
リーシャちゃん、まだ嫌われてるのか…いいんちょらしくないけど仕方ないね。でも、お兄ちゃんを裏切ったら私たちが始末するよ。
「まあ、きちんと考えておきます。それに…少なくとも私たちは答え出てるんですよね。失ったあの時からずっと…」
「また失う事になっちゃったら、今度はスライムじゃ足りないですよね…」
2人は決意を秘めた目でそう言った…
「まあ、お兄のスキルを一番多く受け入れて人間半分辞めちゃったからね…お兄も責任取ってくれるよ。ダメならお兄をスライム漬けにすれば良いんだよ。2人ならスライム作れるでしょ?」
「かなちゃん、それは最終手段だよ…」
私の親友が一番危ない。2人もドン引きしてるし…だいたい、それやったら裏切りだよ。
とりあえず、2人は改めてきちんと考えて判断するって言ってた。とはいえ、結論なんて最初から出てるようなものだし…半分神になって意味が無くなってるのに【隷属の首輪】をしてる時点でお兄ちゃんのものになりたいって思ってるようなものだもん。いざとなったら私と3人掛かりでお兄ちゃん押し倒そう。いや、お兄ちゃんが押し倒すべきかな…