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茶番の後の虚しさ



数日はかかると見込んでいたが、たった1日で四天王は壊滅し…俺は灯里を失った。いや、その程度の犠牲で済んだと思うべきか…


俺は気を遣われ、広い部屋の広いベッドにうつ伏せに寝て今日の出来事を振り返った。


まずはリーシャとセーラだ。リーシャは俺が消えた後、絶望のドン底へ叩き落とされたそうだ…俺の目論見通りに。酷いとか言うな。メアたちを先に殺したのはリーシャなんだし、それで俺は先にドン底へ叩き落とされたんだからお互い様だ。むしろ、あれが失敗していなれけば…いや、ゲスだからそれ以上は考えまい。


で、そんな中でリーシャはセイントドラゴンの声を聞いた。剣に宿っていた魂がリーシャの食った肝を通して語りかけていたのがようやく聞こえたらしい。そこで魔王城の転移陣の事を教えられ迷わず飛び込んだらしい。その対価に何を使ったかは聞かない。昨日、合体してしまった世界をフレアが見て回ったが人間居ないと言っていたし、予想は出来るからな…


そして、奏多がリーゼアリアたちの発言を聞いていたから呼び出そうとしていたバカネコ大魔王の魔王召喚にねじ込んでこの世界に送ったらしい。で、【隷属の首輪】のダブルを着けられ四天王の1人として働かされようとしていたが、セイントドラゴンの肝を食い【竜殺しの剣】の影響で【聖竜波動】を修得していたリーシャには無意味だった。


まあ、詳しい話は奏多の仕打ちが終わってからにしよう。きちんとイリーナとも話し合わせないと解決しないし…



次にサレナだ。城塞都市の姫君様は会って早々に土下座してきた。性格こそ変われどユーカそのものだった。ちんちくりんなところも変わってなかった。まあ、こちらはリーシャとは違って一度は終わった話だ。それでも謝ってくるのだから…そういえばリーシャはまだ謝ってない。だから…いや、それは置いておこう。


100年前の出来事で城塞都市はアマゾネス化とまでは言わないが、それに近い女尊男卑であるらしい…だからこそ、戦力に不安がありトウシューとは敵対しないと約束してくれた。個人的にも同級生と事を構えるつもりは無いらしい…全てはクソネコ大魔王の脅威から都市を守るために四天王をやらされていただけで彼女は世界を支配するつもりさえ無かった。


むしろ、あの世界で魔族が恨んでいたユーカがこの世界の魔族として生まれ変わって、守ろうと必死になっていた。そんな彼女を許さなかったり切り捨ててしまえば俺は過ちしか繰り返さない。そこまで俺はバカなつもりは無い。それに、ユーカは俺を殺そうとしたわけではない…デタラメな推論が根拠を持ち始めた。それはまた追々考えよう。



ウィンディアとなった竜介…いや、光の勇者・ディルクはちょっと厄介だ。懇願され【時戻ときもどし】を使ってユートの記憶を戻したら「殺してくれ」と叫び出した。ユートは…いや、竜介はディルクとなった後も人を傷つける事は決して無かった。さっきだって用意されていたスケルトンやゾンビを率いていただけだし、色々と良いように見せられていただけのようだ。


ユートは村の子どもたちを次々と槍で突き刺していた。それはユーカやディナもだがユートは…いや、そうさせてしまったのには俺も責任がある。だから、あまり気は進まないが俺はウィンディアを抱き締め背中を優しく叩いて慰めた。過ぎた過去だと…少なくともディルクとしてのお前は幸せな生涯を過ごした。竜介としてお前は奪った分の命を少しでも救おうとしたのだと。慕ってくれた子どもたちを、好きになった女の子を自分の手で殺した痛みは俺にも分かる。だけど、それはウィンディアの中では過去だ。新しく生きて繰り返さなければ良いと説得した。



そして、リーゼアリアたちだ。異世界から魔王として召喚されたリーシャ、魔族の長であるサレナ、そして北方猫耳族の先祖である竜介が四天王だと思い込んでいた…いや、奏多でさえそう認識していたのに、誤算があった。あの国王が魔王として四天王になっていた。バカネコ大魔王もただのバカネコではなかったという事だ。


だが、リーゼアリアとアリエルアは変容していた…いや、元へ戻ったというべきか。ステータスにも灯里の名前が無かった…輪島莉瀬と中野有紗。彼女たちの事は覚えている。







輪島莉瀬という少女は外見だけを見ればギャルといった感じの女の子だった。彼女が高校に入学して少しした時に告白されて断った。その後、メールをやり取りする仲に収まり、直接遊びに行ったりという事は無かったが親しい間柄だったと俺は思っている。


中野有紗という少女はイジメられっ子だった。中学の頃からイジメを受け、その延長で高校に入っても中学の同級生からイジメを受けていた。そんな中でよくある事をさせられた。告白させて振られるのを陰で見て嘲笑うというもの…相手は俺だった。それがきっかけだった。イジメを知った俺は彼女を庇い、輪島さんに相談した。


それから彼女たちは親しくなった。だが、俺は振った側の人間だからメール以上の接触は持たなかった。別に彼女たちの事を嫌っていたというわけではない。むしろ、告白してもらえて光栄な事だ。だけど…






そんな彼女たちが泣きながら謝ってきた。「灯里を殺してしまった」と…フレアから事情を聞いた。俺の甘さが原因だった。灯里の魂が国王ゾンビを消滅させた…その全てを引き替えにして。リーゼアリアとアリエルアが悪いわけではない。むしろ、少し安心していた自分が居た…リーゼアリアとアリエルアに灯里を重ね続ける事への罪悪感からの解放。灯里が悪いというわけじゃない。俺のワガママだ。


泣きじゃくる2人を慰め、皆で話し合い、そして俺は部屋に戻ってきた。


そしてやってくる喪失感…リーゼアリアとアリエルアは居る。彼女たちが本来の姿に戻ったのは悪くない事だ。だが…



「遥か昔、マナの女神は魔物をこの世界に生み落としました…彼女は邪神と呼ばれ、勇者たちによって倒されました。その勇者たちが尊敬していた幻の勇者は新たなこの世界の神として人々に信仰されるようになりました。でも、人々は知りません。この世界の前の神がマナの女神でなかった事を。マナの女神が生み落とした魔物と自らが召喚を手助けした勇者たちの戦いをゲーム感覚で観戦していたこの世界の神が居た事を。そして、その神を倒した勇者の欠片の物語を…お兄、灯里ちゃんはまだ生きてるよ。むしろ、お兄ちゃんを待ってる…勇者ラピスと一緒に」



灯里の喪失を落ち込ませるつもりはないと言わんばかりに奏多が転移で現れ、そんな事を言ってきた。



「待ってる?」


「うん、待ってる…リーゼアリアの灯里ちゃんもアリエルアの灯里ちゃんも消えたわけじゃないはずだよ。魂が不完全だから転生なんて出来ない。魂が消滅するほどの戦いなら3人だって無事なわけない。それに、あたしの中に残ってる灯里ちゃんが言うんだよ…『お兄ちゃんと結ばれるまで死んでも死にきれない』ってね」



そのあかりん菌が奏多をおかしくしているのはよく理解出来た。とはいえ、灯里が生きていると聞いて安堵しているのは事実だ。



「なら、今すぐにでも迎えに行かないとな」


「うん…って言いたいけど、灯里ちゃんを助けるにはラピスちゃんの解放が必要だし、その場所は猫耳大魔王のアジトだから簡単にはいかないよ。きちんと皆で特訓していかないと面白味無いし」


「面白味言うな」



奏多は何を考えているのか…とはいえ、今回は俺の浅はかさが原因な部分もある。シュウは挑むには弱すぎたし、リーゼアリアたちに同行すべきだった。もし、サレナが最初から敵対していればファルだって危険だったし、万が一にもリーシャが俺みたいになっていたら…不安は尽きない。だからこそ、強くならなきゃいけない。

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