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最強の覚醒

それは、ミケが放ったものではなかった。ミケは蹴りの体勢からすぐさまシュウを抱き抱え着地し…



「ご主人様っ…まだ生きてるにゃんっ!」



その言葉に俺は近付きありったけの魔力を使い胸の穴を塞ぐ。


俺の手は怒りで震えていた。



「四天王ともあろうあなたが、何故勇者を助けるのですか。ミケ様?」



そんな言葉が聞こえてくる。さっきまでシュウが居たその空に1人の男が飛んでいた。


400年前、亜人や魔族や精霊を裏切り灯里を殺した裏切りの種族…天使。その象徴たる白い翼を持つ男だ。



「誰にゃん貴様。我輩はお前なんか知らんにゃんっ!?」


「何をおっしゃいますか。我らが主の妹にしてワタシと同じ四天王ではありませんか」


「妹…あのクソ兄貴が何をしようとしてるにゃんっ!?」


「風の勇者の抹殺さえ成し遂げれば虐げられた我々の時代が幕を開けるのです。天使、魔族、猫耳族の新たなる時代がっ!」



ごちゃごちゃとうるさい…そんなもののために、勇者だからというだけで殺そうとしたのか。



「そんな時代、潰してやるよ」



この怒りは【憤怒】で抑える必要なんて無い。俺は初めて、ずっと抑えつけていた感情の封印を解いた。


その後、覚えているのは血の臭いだけだった。







お兄ちゃんがキレた。シュウちゃんはお兄ちゃんの力で回復してアリエルアが引き継いでいるけど状態が悪い。



「我輩は…敵じゃないにゃん。信じて欲しいにゃん…」


「うん。分かってるよ」


不安そうなミケちゃんを私は抱き締めた。お兄ちゃんだってそれは分かってる。だからこそ、私たちにくれたものをミケちゃんに返した。ペンダントを…



「固まっていましょう。今の兄様には言葉は届かない…そうですよね、ファルさん?」


「うん…下手に動くと巻き込まれる」



2人もイアリングとアンクレットを貰っている。きっと戦いが終わったらシュウちゃんにだって何か渡すはずだ。


そんなお兄ちゃんは天使のところへ飛んで行った。空はいつの間にか暗雲が立ち込めていた…



「何だ貴様は。ワタシが四天王の1人、天使族の長と知っての狼藉か?」


「天使……灯里を殺したゴミクズの分際で再び俺の大切な女を手にかけようとしただけで万死に値する」



ヤバい、お兄ちゃんがかっこいい。それにシュウちゃんもハーレム入り決定だ。



「何をぬかすか。高貴なる我々天使族を侮辱するつもりかっ!?」


「侮辱したのは貴様らだ。勝手に俺の大切な人たちの未来を奪い、利用するだけ利用して邪魔になったから殺した。よこしまな神に従い、血を流させたお前らの行いをおれが許すとでも?」


「何が神だ。ふざけた事を言うな。神の使徒は大魔王ブチ様だけだっ!」



お兄ちゃんの厨二が加速しちゃってる…でも止められないよっ!



「大魔王…面白い。なら、それを超える俺の力を見せてやろう」


「…兄様のステータスが変化してる。武器さえも…」



イリーナさんの言ってる意味がよく分からないけど、お兄ちゃんが負けるはずないからいいや。



「【聖竜波動】が称号と武器のスキルを吸収して【美徳神ギゼンシャ】に。【魔王研鑽】も称号と武器スキルを吸収して【大罪王ゴクアクニン】に。そして魔剣が神剣【混沌カオス】に変化したわよ…」


「ネーミング、ネーミング」



お兄ちゃんがこの世界に対応してしまった。名字が街の名前になるより痛いよ、これ…



「大丈夫にゃん…ご主人様はご主人様にゃん」


「うん。本質は変わらないよね…きっと」



その後、あの時みたいに何処からか次々と出てくる蛆虫てんしをお兄ちゃんは剣の一振りで消滅させた。


あまりに強すぎると特に言う事は無いんだなって思う。その一振りで最初居た天使も消え去ったわけだし。







「という感じかな」



気付いたら俺はベッドで寝かされていた。リーゼアリアによると色んな意味で酷かったらしい。


シュウの意識は回復していないが一命は取り留めた。ミケはイリーナたちから事情を一応聞かれているが、疑いではなく話にあった猫耳大魔王ブチの事を聞かれているだけだそうで。


で、俺はすっかり形が変わってしまった剣を見る。禍々しい悪魔の装飾を施されていたのが良かったんだが、どうしてマーブル柄の変哲の無い片刃の大剣になってしまったのか…シュウの次にかなりショックだ。



「とりあえず、風の勇者を狙ってきた天使が魔族や猫耳族が関わってたと言ってたなら…」


「うん。しのぶちゃんも敵かもしれないし、魔族との全面戦争になるかもしれないよ」



400年前の因縁が今更になってかよ。さすがに勘弁してくれとも思うが、仕方ないのかもしれないな。そんな事よりも…



「とりあえず、シュウのところへ行くか。ミケも心配だし」


「あ、うん…」

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