魔王と猫耳魔王と
「「ネコちゃん〜〜〜」」
「みぎゃーーー」
【時戻】を使ったら、やっぱり彼女は小夏だった。もっとも、2人とは異なって小夏だった事を知ったというだけで影響は少なそうだ。2人に抱きつかれて被害はあるが…
「とりあえず、話をしよう。敵対するつもりは無いからな」
俺たちが何者であるかをミケと名乗った彼女に伝えなければならない。もっとも、聞ける状態にないのだが…
◇
お兄ちゃんがネコちゃん…いや、ミケちゃんに説明しているけど揺さぶりすぎたからアリエルアが回復させている。正直やり過ぎた。後悔はしていない…するとしたら、あの瞬間の事をだ。私が【水魔法】を使いこなせていれば誰も犠牲にならなかった。大きな氷を作ってスイッチを押せば、水圧でスイッチを押し続けていれば…気付いたのは洞窟の水が引いてから。かなちゃんと一緒に皆を迎えに行った時だった。
皆、安らかな顔をしてた。私が殺してしまった。そして、約束を果たせなかった…私は皆の願いを叶えてあげられなかった。でも、かなちゃんは叶えてくれたんだと思う。ネコちゃんが生まれ変わったならきっと他の皆だって…
だからこそ、かなちゃんも呼ばないといけない。そう決意したんだけど…
「勝負だにゃんっ!」
あれー…どうしてそうなるのかな?
◇
小夏はこんな残念娘じゃなかった。ネコというよりは犬っぽい奴で頭を撫でれば喜ぶし、食べ物を与えれば嬉しそうに食べた。
そう、決して…
「スライムを手なづけて人類に恐怖を与える計画がお前らの所為で台無しにゃんっ!」
などとふざけた事を言う奴ではなかったはずだ。いくら前世が小夏であろうともちょっと残念すぎるだろ。最初から残念な妹はさて置いて。
まあ、100年前に現れた魔王も残念な奴だったと聞く。その子孫なわけだから残念でも仕方ない。そういえば、小夏も勉強の方は残念だった気もする。
「そこの雄…いや、魔王トウマ。お前が負けたら我輩の配下になって雌たちを解放するにゃん。仮にも万が一我輩が負けたら奴隷になってやっても構わないにゃん」
「なるほど、典型的な突っ掛かりヒロインを狙ってるんだね。ミケちゃん」
「あー…すぐ負けてチョロインになるんだね。そんな事しなくてもお兄様は奴隷にしてくれるのに」
俺の妹がこんなに残念だった…ではなく、何言ってるんだ、こいつら。今すぐ解放…したら、まず間違いなく襲われるのでやらないけどな。
そうこうしている間に、ミケが笛を取り出した。
「我輩の力を思い知るがいいにゃん。カモン、【使役魔物召喚】」
笛の音が辺りに響き、周囲が震える…あまりにも酷い音色で。
「「ああ、やっぱり音痴のネコちゃんだ」」
「やかましいにゃん、あかりんズっ!」
なんだ、この茶番…でも、あかりんズという纏め方は今度使おう。
それはさて置き、酷い音色でもきちんと召喚は成されるようで光の柱が現れ、中から巨大な魔物が次々と現れる。白いヘビ、金色カブトムシ、火を吐くブタに九尾の赤キツネと緑色の信楽焼…うん、なんか最後の方が変だ。
まあ、ヘビとブタとキツネでいいか。
「これで勝ったも同然にゃん。降参するにゃん」
「【傲慢】に生き、我に従う事を許そう」
俺は【七大罪処刑】を使って強制的に魔物を使役する。特に大罪に関連した動物の姿をしていれば誰が主でも使役出来るのだ。
ヘビなら【嫉妬】、ブタなら【暴食】、キツネなら【強欲】といった感じに対応しているから簡単な事なのだ。
これでミケに勝ち目はない。
「はいにゃん。ご主人様に従うにゃん」
ちなみに、【嫉妬】の対応動物はネコも含まれていた。いや、こういう展開期待してなかったからさ、マジで。