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捨てられた勇者の地で

アベルティア王国から徒歩で移動する事数日。強敵いもうととの夜戦も何とか回避し続け、観光都市まで後少しという場所までやって来た。



「お兄様、ここはかつてナシビトの森って呼ばれていた場所なんです」


「ここがか…」



のどかな畑が広がっているこの場所に森の面影は無い。200年前に焼かれ、それ以降田畑としてこの場所は有効活用されてきたのだとアリエルアはさほど無い胸を張って説明している。


奏多に色々教えてもらっているから知ってるんだよ…と言うのは野暮なので話を聞くか。



「200年前まではここは魔力の無い貴族の子どもを捨てて処分するところで、巨大な魔物の住んでるところだったんだよ。だからナシビト…人も居なくて魔力の無い子の森。そこに捨てられた可哀想な子が居ました。その男の子は死しか待っていない森の中で生き抜き、力を手に入れました」



何の事はない、創作物でよくある封印されていた力が解放された虐げられてきた無能貴族の少年の話だ。ただ違う上に灯里が知らないのは…


その少年が灯里のクラスの30人目の同級生で俺たちのよく知る人物、近江竜介おうみりゅうすけだという事くらいか。


竜介は皆が召喚された日、教室には来れなかった。そして、200年前に転生したのだ。普通なら、そこから物語が始まるのだろうが…



「男の子は同じ境遇の子どもたちを助け、共に暮らしていきました。その中で助けられた子どもたちもまた力を手に入れ巨大な魔物を倒せるようになりました」



竜介以外の2人の男の子、2人の女の子は転生者ではなかったが魔力を封印されていた。その封印を解いたのは竜介だ。だからこそ、竜介は4人に慕われていた。親に捨てられた者たちの繋がりは確かなものだった。



「そんな中、隣国の魔王が戦線布告を行いました。子どもたちの親は噂を聞きつけ、子どもたちを迎えに来ました。子どもたちの強さを求めて」



奏多曰く、竜介たち5人の力は勇者当時の奏多より強かったそうだ。巨大な魔物を簡単に殺す事が出来るからこそすぐ迎えに来てもらえなかった。恐ろしさと捨てたという事実を隠すために。



「男の子が助けた3人が親の元へ帰り、魔王との戦いに参加しました。でも、魔王の軍は強かった…3人の勇者は男の子たちに助けを求めました。でも、男の子は助けてくれませんでした。男の子の態度を見かねた女の子だけが3人を助ける事にしました。そして見事魔王を倒す事が出来たのです…でも、男の子は深く嘆き悲しみました。女の子が魔王に殺されてしまったから。そんな事をするために子どもたちを助けたのではなかったと嘆きました。男の子はこれ以上親に捨てられる子が出ないように森を焼きました。こうして森は無くなり、子どもが捨てられる事は無くなりました。めでたしめでたし」



全然めでたくないし、内容が違いすぎる。


確かに竜介が助けた男の子たちに女の子1人は魔王…というレッテルを貼られた隣国の王との戦争に赴き、劣勢だから竜介たちに助けを求めた。竜介はバカじゃないから戦争の道具にならないよう3人を説得したが残っていた少女が彼を氷の中に封じてしまった。戦争が終われば助けるつもりで…竜介を守るため、国を守るために少女は脅されて3人に連れて行かれ王との直接対決で3人の盾にされ死んでしまった。


全てが終わり、竜介の力を恐れた3人と国は森ごと焼いてしまおうと火を放った。そこに居合わせたのが敗戦国となった国から命からがら逃げ出したお姫様。竜介は彼女に助け出され2人で大陸の北へと逃げてそこで幸せに暮らしましたとさ。めでたくないが、それが真実なのだ…



「不憫すぎるよ、竜ちゃん…かなちゃんが好きとか言ってたのに諦めちゃうなんて」


「うまく立ち回ればハーレムだったのに氷漬けって…」



事実を告げた感想がこれな方が不憫なんだが…まあ、竜介は出会った当初は奏多の事が好きみたいだったが、いつの間にか友人と割り切っていたし、竜介を凍らせてまで守ろうとした女の子の方が一番不憫なんだがまあいい。


実妹と結ばれていたらそれはそれでヤバかったと思うし。

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