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それは奇怪な邂逅。そして与えられたもの

神と化したとしても、神殺しの武具に貫かれれば生きてはいない…


では、生きるとはなんだろうか。



「生きてる事が辛いならと歌ったら、批判浴びた歌手が居るが、死ねない事が辛いならどないすればええんやろうな?」


「ここは…」



目覚めると、屋台が目の前にあった。そして、俺の体は…



「空っぽの体があったから、魂たましいちょいと詰めてしただけなん。刻み生姜は嫌いだからごま塩だけあるんなー」


「いや、そもそもあなたは誰ですか…」


「オラはただのメシ屋のおやぢ。あるいは村人…時々太陽神とかソーセージとか。まあ、好きに呼べばええねん。責任者として怒られるのは慣れてますん」



まったくもって意味が分からないが、俺のしたい事を後押ししてくれたであろう事は理解出来た。


空っぽになった奏多の体…それに俺の魂を詰め込む事で消滅を防いでくれたのだ。


元々は分の悪い賭けでもあった。守りたいものを守る…ただそれだけであったし、最悪でも易々と体を渡すつもりなんて無かった。もし、渡してしまったなら、その先に待っているのは………



「腐生刀『カタナ』…もとい本郷奏多。それはただただプラモを作るために作った刀型のニッパーやねん。ただ、ちょこっと要らん聖女の要素を組み込んだだけの。それを曲解した連中が変な事に使ったんやろなー」


「………は?」


「悪路罰多と炉道索多の余った部材で作った本郷奏多と言ったん。つまり、オラが打ち手なん」



目の前のおやぢが何か暴露しようとしているが、まったく理解が追いつかない。


俺が好きになった少女がただの物だとでも言うのだろうか…それは…



「物にだって魂は宿るん。むしろ、魂を宿したん。だから、思う存分ヨスガればええねん。人は心で愛を紡ぐ…体は二の次。とはいえ、人とは心と体からなるもの。それが神であっても同じなん」


「はあ…」


「自分の好意を否定するな。誰かを好きになるというのは尊い行為である。んで、これがオラの厚意の干しイカを使ったイカ天丼だす。これを食って力付けるだす」



目の前に突然丼鉢を置かれた…後、一本の大きな両剣も。



「これは…」


「おっさんの餞別だす。神でも魔王でもあるオマイには役立てるはずだす…オラがかつて作ったハイエルフの残り物で作ったのには組み込まなかった八つ目の美徳と大罪である《自由》と《正義》を入れた剣。銘は《無限(インフィニット・)攻撃(ストライク)》…不良在庫品処分と、自称創造神なトの字の父ちゃんとしての慰謝なん」


「不良在庫品……」



とてもじゃないけど、そんなものには見えなかったりする。手に取らなくとも『秩序(コスモス)』や『混沌(カオス)』の比ではない力が込められているのが分かる。


そんなものを餞別などと言って渡されても困るのだが…



「とりあえず冷める前に食え。そして身に付けた力で目覚めて多々買え…否、戦え。戦わなければ大切な連中は守れないん。そして、夢を叶えろ…自らの悪夢を吹き飛ばしても」


「悪夢?」


「後輩と添い遂げるという夢の一端…その加護を受けたかもしれないオマイさんに、ハーレムという地獄を味わってもらう為だけの口実だから気にすんななん」



分かった事が一つだけある。この人の言葉を理解しようとしてはいけない…さっさと天丼食べて、この後の事を考えよう。







食べるだけ食べたので追い返したん。まったく、最近の若いのはいただきますとご馳走様も言えんのかと…手を合わせて心の中で言うのと声に出すのは違うん。それは愛も同じなんなー。



「で、あんな在庫品を渡す程の価値はあったのん?」


「トの字に新しい刀削麺用の包丁渡すよりは遥かにマシなんなー。刀削麺の為にあんなナマクラを持ち出すとか思わなかったん」


「不良在庫がナマクラか持ち手の両方に剣が付いてるのしかなかったからなのん。それでなくともトィリスには色々渡しているのん…誰やねん、イリスシリーズに世界管理させようとしたの」


「だからオラはオマゲドーでええと言ったん。それはさておき、イカ天余ってるん。力が干しイカって事でこの世界の力を欲する連中に配って来てええかな?」



謎のおやぢと看板娘が細々とやっている「メシ屋」は今日も何処かの狭間で営業中なのである。今日もどこかでデビ◯イカである。


この2人、ある人々はこう呼ぶ。迷惑神と…なお、自称もしている。自重はしてない。





イカ天丼を食べ終わったら、急激な眠気を覚えた。いや、それは意識の覚醒だったのかもしれない。


さっきまでの事は夢……ではなさそうである。


体は確かに奏多のものだし、手には歪な両剣がしっかりと握られていた。


後、手紙が一通…



『拝啓、背景のオラからハーレム主人公へ。


 その剣を使うに当たって必要なのはただ1つ。


 一度好きになってしまったのなら嫌々でも渋々でも仕方なくでも貫けばいい。たとえその好いた者が悪鬼羅刹になろうとも、罪人悪人になろうとも、駄女神やウドキチになろうとも。


 それがお猿さんだよー………南の島のな。敬具』



速攻で破り捨てた。そんなの言われなくても分かってるっつうの。『愛』って言うんだろ。


と、破り捨てた手紙が何故かくっついてゆき…



『追伸、正解はキングコ◯グでした。漫才大会で優勝出来なかったのに公言して離婚するとか言ったのを不意にしたのではない。


 だからこそ、言った事は守れなんなー』



イラァ…

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