不合格な理由
受験戦争とまでは言わないが、この世界で唯一の学問の現場に入るには並大抵の努力では難しい…らしい。
いや、読み書きと軽い計算が出来れば構わないみたいなんだが。魔法という能力があれば大体の事は出来るこの世界。更にここ100年は戦争らしい戦争も無い…天使とか骸骨集団の件は戦争扱いしないそうだ。むしろ、参考書でマリンが災害扱いされてて涙目になっていた。安心しろ、アースとカティナも同じようなものだ。
たまに、自分の活躍を参考書に書かれて悶えている奴もいるが本当に参考書か、それ?
◇
そんなこんなで、編入の試験当日を迎えたわけだ。ここに至るまで俺の自由と睡眠時間は大幅に削られた。まあ頼られるのが嫌ではなかったが、ほぼ全員を多かれ少なかれ教える事になったのは疲れた。
というか、試験内容は事前に大まかなものを伝えられていたが小学生レベルのが大半なわけでかなり甘いと言わざるを得ないような合格前提の問題だった。これで落ちたら人として終わりじゃないかと思うほどに…
「我輩たちは待ってるにゃん。ひなたぼっこ日和にゃん…こんな日に受験するなんてバカにゃん」
後、発覚した事といえば皆を煽っているミケは一度ここを卒業していたという事だ。アクアの血縁だからか、前世の反動か意外と頭良かったらしく再び通うなら試験免除。むしろアクア同様に客員教授扱いにしても良いと言われたから三食おやつ昼寝付きで快諾しやがった。まあ、構わないんだが…
後、さすがに生後数日のフローラは資格とかの関係で試験は無理なので俺と一緒に会場へと入る皆を見送る側だ。
「もし、落ちるような事があれば指輪剥奪して追放処分だからな」
「ぎ、ギリギリでも通れば良いですよね…ギリギリでも…」
3バカならまだしも、シュウがそれ言ったらダメだと思う。むしろ、お前は試験内容を確認する立場でもあったんだから満点じゃなきゃダメだろ。
「お、お兄ちゃん。満点取ったらいいよね?」
「…満点取れなきゃ左手ごと指輪剥奪されるって前提なら構わないぞ」
「うっ…遠慮します」
自信あるかはさて置き、妹様は変な事を考える暇があるなら最後の追い込みしとけよ。余計な事を言って皆を不安にさせた負い目はあるが、満点取れたらそれなりに褒めてやるつもりではいるというのに何か止めようかなとも思えてきたし…
とはいえ、前世で入試を体験している連中には予備知識あるわけだし、魔族の貴族ともなれば以下略。結局は3バカが問題なだけで、そこそこの点数取れるとは思っている。過度な期待はしないが、合格は出来ると信じている。信じなきゃどうにもならない。
「頑張ってこい」
俺はそう言って送り出した。頑張ってくるものと信じて…
◇
結果は即日発表する事になっていた。しかも、今時珍しい貼り出し方式の点数表示付きだ。だが、これは…
「…どうしてこうなった?」
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合格者
1 ルフィニ・レヴィア100点
2 サレナ・シュヴアル 99点
3 シュウ・キタザト 97点
4 ラベンナ・アスモス 91点
5 ローズリッテ・シルフ 87点
6 イリーナ・シュトレイ 85点
7 マリーテレズ・サータ 81点
8 ツァイ 80点
9 サファ 79点
10 カティナ 76点
11 リーゼアリア・シルコット 72点
12 藤島灯里 70点
13 アリエルア・テオライト 68点
14 リーヴァ・マーモ 64点
15 ルビィ 63点
16 ファル・エラーシャ 62点
17 マリン・ラピスラズリ 59点
18 ロニカ・ベルぜ 56点
19 アース・ガイア 55点
20 ディライア・ベルフ 53点
21 リーシャ 49点
22 エメラ48点
23 セーラ 47点
24 フレア・フレム 44点
25 ウィンディア・ストーム 41点
26 トリン 35点
27 オウギ 33点
28 ルマリ 32点
不合格者
本郷奏多 0点
平均 62.96点
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高望みはしなかったし、用紙見せられたらこの世界に関する事も多いしそんなに簡単なものとはいえなかったのは確かだ。それでも合格は30点を目安にしているので大丈夫だろうとは思っていた。というのに…
「…今日からバカナタって呼ぶからな。後、当然指輪は没収な」
「そんな、酷いよお兄…」
酷いのは唯一不合格になったお前だろうと本人以外の全員がバカナタを見ていた。何処のいじめられっ子だよと…
言った事が間違っているとは思わないが、無理矢理奪うつもりは無い。自主返納するならともかく…だが、こいつはこんなに頭悪かったかとも思う。なので、解答用紙を公開するべくアクアに取りに行ってもらってる。
逆に凄いのはルフィニだ…最後の1点は取れないようにしてあった難問のに、満点になってたという事は解いたのかあれ。むしろ、合ってるのかどうかも分からない難問を誰が採点したんだ…俺が見た夢とか誰が分かるよ?
ルフィニを見ると、少し頬を赤く染めている。まあ、頑張ったご褒美は考えておこう。そんな事を考えているとアクアが奏多の答案を持って戻ってきた。そして、それが全ての始まりだった…その紙には絶対に書かれていなければならないものが書いていなかったのだ。