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新しい住処と仕事と居場所

全員に指輪を渡した…という事で灯里が早速襲いに来たが指輪の能力の1つで抑え込んだ。有名な猿の頭に着けた輪っかと似たようなものだ。破茶滅茶が押し寄せてくるのは分かってたし…


まあ、こっちの覚悟がまだ出来てないのに襲われたらなぁ…というより、俺の体が藤島燈真のものでないと割り切れているのかどうか…ファルやサレナ、リーシャならまだしも。

そこを互いに割り切るまでは一線を越えるつもりは無いというか、その気持ちが持てないのが実情だ。生殺しではあるけれど。


苦痛で気絶した灯里は放置して、シュウとシュウゾウに呼び出されたので領主の執務室へ赴いた。



「……寮を屋敷にしろと?」


「まあ、全員が合格すればの話なんですけどね…」



シュウが言うには、古くなって使わなくなった学校の寮を入学したら使う方向になっているらしいが、どうせ使わないなら改装して俺たちの家にしてしまえという話だった。


つまり、労せずして家を手に入れたも同然…但し…



「その際には寮父と名誉講師をやっていただけるならトウマ様のご負担はありませんよ」



寮父はまだしも、講師として働くのが前提らしい。別にそれは悪い条件ではない…というより、出来れば校長をという事になっていたらしいが、それは固辞した。さすがにそこまでするつもり無いし。今の校長に逆恨みされても…神になってもらえるならとか言って喜んで辞める気がする。いや、その光景が目に浮かぶ。



「…前提として、全員が合格すればの話だろ。1人でも不合格ならこちらとしても無理だ」



現状、フローラは学校には通わせないつもりだから心配なのは3バカだ。無論、そこで落ちたら指輪剥奪なわけだが。


魔族の貴族であるローズリッテたちは英才教育を受けているから心配要らない。試験も難しくないから前世の記憶あればどうにかなる。リーシャとカティナも頑張っているし、セーラは…いいや、あいつどうせ剣だし。



「最悪でも先輩の女だって言えば裏口入学出来ますよ。それに、前世の記憶とかあれば貢献出来ますし」



俺の女とかって言えばどうにかなるのは微妙な気がする。というか、400年もあれば色々進歩しているのはここ数日あちこちに出向いて見ているので理解している。さすがに電化製品の類いは無いがそれなりに良いものはある。俺の力でコピーは出来るだろうが新しいものを作るのは…面倒だ。作れないとは言わない。戦艦作ったわけだし。


まあ、名誉でも臨時でも収入があるのは有り難い。



「で、俺は名誉講師をして何人の不良学生を始末すればいいんだ?」


「先輩、そんな学生を在学させる程甘い管理してませんから…貴族の名誉とか権力とか全部排除してます」



さすがは金でものを言わせようとしていた事だけはある。お陰で学園生活も暇そうだ。最近戦いに飢えている…不法滞在している神を見つけてフルボッコにしても収入無いからそういうイベント欲しいというのに。



「ならあれか。教師の中に魔王の手下とか…」


「猫耳魔王…もとい、猫耳覇王の前にそんな教師が居たとしても一撃必殺ですよ」


「まあ、確かに」


「トウマ様には実技の授業を担当して戴きます。特に難しい事はありませんよ」



主に規格外を担当するらしいが、規格外が身近以外に居るとは思えないの巻。ちちくりあって金まで貰えるのを仕事と言って良いんだろうか?


というか、勇者が多いわけだし何の実技をすればいいのか…保健体育とか言わないだろうな。まあ、その内容をシュウゾウたちが知っているか分からないしお楽しみにしておこう。保健体育なら拒否させてもらうが。












そんなこんなで、就職先と転居予定先を確保した俺は入学に向けて勉強に励む奴らを叱咤激励…という名の叱咤を行いにやってきた。



「というわけで、合格出来なかったら指輪没収だからな。特にそこの3バカ」



言わずもがな、心配なのはそいつらだけだったりする。むしろ、土下座講習会での遅れを取り戻す事が出来るかが問題だ。



「お兄、さすがに鞭だけじゃ厳しすぎるよ。きちんと飴も用意してあげないと」


「子作りが良いにゃん。子作りするにゃん」



外野が余計な事を言ってる。とはいえ、少なくとも奏多やミケは合格確定だからな。放置しておいたら世界が破綻する。


とはいえ、このまま放置したら明日は灯里に追随して集団で襲われて俺が破綻する…間違いなく。


だが、このまま襲われてという展開は望んでいない。これは俺の問題ではあるが、同時にこいつら全員の問題でもある。


だから、口を開く…










「…最悪の宿題をもらいましたね」



兄様が部屋を出て行ったけど、重い空気が部屋を支配したままだった。



『俺が俺でなくなっても、愛し続ける事が出来るか?』



わたしはこの中で、その言葉の意味を深く知っている。メアだった頃から、兄様はそれを悩みにしていた事を…


今、兄様が豹変した理由を…大切な仲間を手に掛けた原因を誰もが理解している。けど、アレクの魂がいつ戻るか。それに怯えているように毎日を過ごしていたのではないかと思う。


わたしだってそれが怖い。でも、メアや満ではなくわたしがイリーナとして生きるには必要になるのかもしれないと考えた事もある。



「よく分からんにゃん…ご主人様がご主人様じゃなくなったらなんて分からんにゃん」


「アレクくんでもトウマくんでも同じ…」



まあ、難しい話だと思う。藤島燈真という人はもう存在しない。アレクやレトラという存在のまま今の兄様がある。でも、全てを知っているのは…



「奏多さん、単刀直入に聞きます。兄様が兄様でなくなる可能性はありますか?」



ただ1人、それを仕向けた彼女だけだ。









彼女の問いはお兄が求めていた答えそのものだ。だから、言えなかった。お兄が不死身の神様を越えた存在だからこそ…


事実、首の無くなったお兄に襲われた。あれはお兄の意思で動いたものじゃない。では誰が…それがアレクの魂でない事は確か…でも、お兄でないのも確かだ。


お兄がお兄でなくなるというのはそういう事も含めての事だ。つまり、お兄はこう言ったんだ。


俺が俺でなくなっても、愛し続ける事が…いざとなったら、愛し続けるためにお兄を殺す事が出来るかと。


あの時、皆でやった事は間違いとは思わない。でも、あれで成功しなかった時はどうしていたのだろう…きっと、お兄を殺していた。どうにかしてでも。たとえ、殺されたとしても。


それが、あたしの最初からの答えだ。お兄でなければ必要無い。アレクという器がお兄を拒むなら…新しい器を殺してでも奪い取るまでだ。



「大丈夫だよ。お兄がお兄じゃなくなるなんて無いから…色々経験して歪んじゃったところはあるけど、本質は変わらないよ」










正直、お兄ちゃんの言いたい事が分かる。それは皆…転生してしまった皆が抱える問題だと思う。お兄ちゃんの知っている灯里と今の私が同じとは言えない。カティナやリーゼアリア、アリエルアにアクアとして過ごした時間もある。


イリーナちゃんやファルちゃん、サレナちゃんにしてみれば前々世と同じだから違和感少ないはず。リーシャちゃんにしてみれば当人だし、マリンちゃんが一番お兄ちゃんの悩みに対して答えを持ち合わせている気がする。


でも、お兄ちゃんが気にしてるのは中身じゃないんだよね。今のお兄ちゃんと子どもを作る事が正しいのか。これから先にお兄ちゃんが変容して今の体を捨てた時にお兄ちゃんが中古化した私たちを受け入れ難いって展開もある。


つまり、今のお兄ちゃんと子どもを作る事はお兄ちゃんがバージョンアップした時に捨てられる可能性があるって事だ。


確かに待ち焦がれていた事が出来るところまで来ている。けど、今はそのタイミングじゃないんだ。お兄ちゃんだって男なんだし、きちんと処理してないから短絡的になりかねない。でも、我慢しているんだから私も我慢しようと思う。


私が越えなきゃ、大丈夫なんだと思う。ただ、この指輪をしている以上はお兄ちゃんだけの悩みじゃないんだよね。


皆はそれぞれどういう意味なんだろうって悩んでる。私の考えが全部じゃないし、解釈だってそれなりにある。あるいは、答えの無い「最悪の宿題」だ。カンニングとか丸写しなんて出来ない、お兄ちゃんですら答え合わせ出来ないもの…最悪、全員の答えでお兄ちゃんは消滅を選ぶかもしれない。


まあ、そんな事はさせないし、スライムになったとしても中身がお兄ちゃんなら私は気にしないんだけど。

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