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再会の印に

というわけで、【隷属の首輪】を力の灯里1号リーゼアリアと技の灯里2号アリエルアにさっさと着けましたが何か?


まあ、神官たちは聖女様が奴隷になったと騒ぎ立てていたが、お前らなんかに大切な妹を任せられるか。やるというなら全力で相手してやる…いかん。前世の感覚でそれやると虐殺起こすわ、いやマジで。


とりあえず、アリエルアは神殿を出て俺に付いてくるのは確定。リーゼアリアも言わずもがな同じだ。早いうちに城下町を出ないと暴動に巻き込まれかねない。まあ、巻き込まれたところで大量虐殺して乗り切るが、さすがにやる気は起きない。妹のためだと自分に言い聞かせればやれそうな気もするが。だからシスコンと言われた前世…だが、反省はしない。後悔はしてる。



「私、リーゼアリアとアリエルアは双子らしいんだよ。家庭事情が複雑なんだよね。母様は次期女王だったんだけど神殿長さんとお付き合いしてたのに、国王になりたかったあのクソ野郎が寝取ったらしくて。で、権力を使って不貞したと母様に女王辞退を持ち上げて無理やり結婚して、どっちが父親か分からないまま私たちが産まれたけど、髪の色が違うからってアリエルアは神殿長さんに押し付けたわけなんだよ。髪の色なんて適当な世界なのにバカだよね」


「適当って、お前…」



アリエルアが自室に戻って荷物を纏めている間、俺はリーゼアリアから話を聞いている…というより、腕に抱きつかれ逃げらないでいる。こういうところは灯里なわけだが、リーゼアリアの記憶を失ったというわけでもないらしい。ドロドロな家庭事情は聞きたくなかったが。



「でも、私は私だしアリエルアはアリエルアだけどお兄ちゃんの妹って部分だけは共有してるんだよ。どっちが灯里の偽者って感じは無いし…前世で死ぬ時に魂が真っ二つになるような攻撃を受けたからなんだと思うよ。それであの子の子孫として産まれたのはまだ救いようあったよ。助けられたからこそ、こうやってお兄ちゃんとまた会えたわけだし」


「そうかい…」



あの子というのはこの国の初代王妃らしいのは何となく分かる。助けて良かったというのなら、それでいいのだ。俺もあの子を助けられて良かったと思っているのは事実だし。



「それに、あかりの意識が戻らなくてもリーゼアリアはお兄ちゃんに全てを捧げるつもりだったよ。大切な親友で妹を救ってくれたから。それに、転生してもお兄ちゃんは格好良いし…」


「はいはい」



さすがに中身が灯里とはいえ見慣れない美少女がはにかみながらそう言う姿に一瞬心奪われそうになる。いや、奇行さえなければ前世も灯里に心も貞操も奪われていたのかもしれない。あんな姿を見て抱いておけば良かったなどと背徳的な感情を抱いていたのは黒歴史中の黒歴史だが…



「…でも、お兄ちゃんに豚殺しさせちゃったんだよね」


「せめて人って言ってやれ。豚の方が人よりまともだぞ、マジで」


「お兄ちゃんも苦労なさったようで」


「そこはお互い様だ」



それに、倒さなきゃ穢されていたのは目に見えてる。そうなったら、消し飛ばしたのはこの世界だ…なんて考えるからシスコンと言われるんだよな。



「とりあえず、アリエルアが準備出来次第ここを出るぞ。買い出しも必要だが、金はあるのか?」


「うん。国庫から幾らかは拝借してるよ。国王の裏金は沢山あったから」


「ずっと国王と呼んでるが、父親とは思った事ないのか?」


「まさか。神殿長さんならともかく、あんな無能な奴の血が通ってるかもと考えるだけで転生したくなるよ」



つまり、リーゼアリアとしても一度たりとも思った事ないのか。まあ、そこまで言うなら何も言うまい。



「それよりアリエルアの話も聞いてあげないと。あの子も私だけど、あの子はあの子なんだから」


「なら、荷造りの手伝いしてきてやれよ」









というわけで、リーゼアリアアリエルアの荷造りの手伝いにやって来ました。うん、ややこしい。


でも、前世の記憶が戻って本当に良かったと思う。最愛の人にまた会えたのだから。



「そう思うよね、アリエルアも」


「えっと、リーゼアリア様…双子で前世の魂の影響で気持ちすら共有出来るとはいえ私たちは別個体の存在です。同意はしますが、リーゼアリア様はリーゼアリア様としての自覚を持った方が」



あ、前世の良い子ぶってるモードが完全発動しちゃってるよ、これ。さすがに気持ち悪いなぁ…こんなのに告白してくる男の子の気持ちは分からないよ。



「以心伝心してるんですが…」


「あはは…まあ、リーゼアリアらしくなんて言われてもね。ついさっき王女としての私は死んだ。そして、愛の奴隷して生まれ変わったリーゼアリアはこういう奴なんだよという事にしておいてよ」



むしろ、リーゼアリア自身は相手が誰であっても復讐を代行してくれて妹を救ってくれたなら全てを捧げるつもりだったのだ。前世の私がお兄ちゃんに全てを捧げたかったように。


そして、相手が転生したお兄ちゃんでリーゼアリアは転生した私の半分だった。何の不都合も無い最良の結果。空っぽの人形に堕ちるはずだったリーゼアリアが灯里という存在で再び満たされた。そして、それは…



「確かに同じですよ。もう犯されてしまうだけの人生を助けてくれたのはリーゼアリアとお兄ちゃんです。心が弱りきってきたのに、不思議な力で私を満たしてくれた。何日も湯浴み出来ずに汗と埃で汚れきった体を優しく抱き抱えてくれたのはお兄ちゃんです。そして、失明してしまうところを助けてくれたのだって…」


「うん。知ってる。貴方アリエルアが灯里抜きにお兄ちゃんを好きになってしまった事も。そして、リーゼアリアとは違う混ざり方をしたのだって。でも、私たちの本質は一緒…」


「「お兄ちゃんを愛している」」



そして、この体は灯里ではない。つまり、お兄ちゃんと血の繋がった忌々しかった体じゃないんだ。だから、お兄ちゃんと一線を越える事をもう戸惑う要素が無い…死の間際に願った想いが叶う人生を謳歌する事が出来るのだ。



「「私たちは…本当に幸せだね」」



私は私に向かって祝福の言葉を告げる。


そして、こうも願った。


お兄ちゃんを好きな人たちがもっと転生していますようにと。







「何だ、この悪寒は…」



体の芯から凍えてしまいそうな寒気が全身を駆け抜けていった。嫌な予感がする。


それはさて置き…いや、置くべきではないと反応が告げているが、【強欲】を使って作ったアクセサリーが完成した。


リーゼアリアにはブレスレット、アリエルアには指輪だ。いや、指輪に他意はないからな。ただ、ペンダントは首輪があるから諦めただけだしピアスとかは抵抗があったからこれにしたまでだ。更に模造とはいえそれぞれに有効な能力に加えて俺の加護も加えてある。


再会の記念としての贈り物だ。墓参りは墓参りでするつもりだからこれから一緒に旅をする中で危険は付き纏うのだから念には念を入れていかなければならない。


もっとも、俺の危険は倍加した妹なのだが…【色欲】があまり効果無いとかどれだけだよ。



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