夢
ガラン ゴロン ガラン ゴロン…。
ガラン ゴロン ガラン ゴロン…。
上手く体に力が入らないような、ふわふわとしたこの感覚。 此処は私の夢の中らしい。
ガラン ゴロン ガラン ゴロン ガラン ゴロン…。
真っ白で何も無い部屋。窓も電灯も無いが明るい。部屋は正方形でそれなりに広い。その部屋の壁際に在る唯一の「物」。それが先程から部屋の中で音を立てている。
ガラン ゴロン ガラン ゴロン ガラン ゴロン…。
洗濯機。
どうやら私は夢の中で洗濯機になっているようだ。正面に取り出し口のある一般的なドラム式洗濯機。
私の視界はドラム内から覗いたようなかたちで見えている。
ガラン ゴロン ガラン ゴロン ガラン ゴロン…。
音を立て洗濯機は回り続けている。
暫くすると、部屋の中に人が一人入ってきた。部屋に入口が有ったのかは謎だがその人は私の死角から音もなく、すうっと視界の端に現れ、私のほぼ真ん前で立ち止まった。足先から腹部までしか視界に入っていない。
この人も白い。ダボっとした白い長袖のシャツとズボンを着ていていて、その先から見える手も裸足の足も白い。
服のせいで体の起伏も目立たず、男か女かも分からない。私は視線を上げて「人」の顔を見ようとした。
しかし私の視線が人の肩程まで上がった瞬間、人はバラバラになった。
血は出なかった。音も無かった。ただいきなり砕けるように、ぶつ切りサイズでバラバラになった。
ガラン ゴロン ガラン ゴロン ガラン ゴロン…。
私はただ見ていた。
次の瞬間、人の部品は宙に浮きながらくっつき元に戻った。無駄な動きなく、寝そべっていた人間が立ち上がるように、すっと元に戻った。
だが、首から上は無かった。
元から無かったのだろうか…。
ガラン ゴロン ガラン ゴロン ガラン ゴロン…。
すると人は私の方に向き直り、少しかがんで片手を洗濯機の角に乗せ、じっとこちらを見た。
頭部は無いが、じっと中を“見ている”。
ガラン ゴロン ガラン ゴロン ガラン ゴロン…。
中に何が入っているのだろう…。愛着や未練でもあるかのように見ている。
ガラン ゴロン ガラン ゴロン ガラン ゴロン ガラン
ゴロン ガラン ゴロン ガラン ゴロン ガラン ゴロン ガラン ゴロン ガラン ゴロン ガラン ゴロン ガラン ゴロン ガラン ゴロン ガラン ゴロン ガラン…。
……やっと理解した。 私は洗濯機ではなかった…。
私は、洗濯機の中で音を立てて回り続ける「頭部」だ。
ガラン ゴロン ガラン ゴロン…。
ガラン ゴロン ガラン ゴロン…。
音を立て回り続ける。
色んな解釈を持って頂けたら幸いです。