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さんくちゅあり

 カチッ、カチッと弾切れの音が鳴る。


「ローディング!」


 私はすぐにマガジンを外して腰のポーチに差して別のものを装填する。

 カバーしていた方向はすかさずスコールさんが飛び込んで寄ってくる悪魔たちを斬って灰に変えていく。

 あの人はいつも接近戦だ。

 黒尽くめで両手に変なナイフを持って。

 どうもナイフを聖水に浸けて使ってるとのことだが、それだと数十回で使えなくなるはず。


「ローディング、サポート頼む」


 ゼファーさんがしゃがんでドラムマガジンを外しているところにカバー。

 実銃ではなくエアガン(エアソフトガンの威力ではない)ので、規格通りのマガジンを使わなくていいという利点がある。

 私は40発入りのマガジンだし、ゼファーさんはサブマシンガンにドラムマガジンなんていう普通は見ない組み合わせ。


「はい!」


 すぐに構えて撃っていく。

 撃ち出すのはBB弾で、実弾じゃない。

 それに人の形をしているけどあれはもう人じゃないから、そういうのもあって撃つことへの忌避感は少ない。

 ガサガサと草をかき分けて走ってくる悪魔ディアブルと化した人間たち。

 一発あたるごとに体のどこかが灰になって崩れる。

 足を撃って倒れたところに、トドメとして頭に命中弾を送り込む。


「サンキュ、ユキ」


 ゼファーさんが復帰するとすぐに私も担当の方向に向き直る。

 移動しながらの戦闘。

 足場は草とぬかるみでかなり悪いのだけど、みなさんは平気で移動していて遅れ気味の私に合わせてくれている。

 だけどそのせいで悪魔たちに目を付けられてしまったから、申し訳ない気持ちが溢れてくる。


「ほいほい、きやがれ悪魔ども!」

「いっそゼファーが制圧射撃している間に先に行かせるか」

「無茶っしょ、私らだけで行ってスコールたちがいなかったらどうやって帰ればいいの」

「そうだぜ。それに危なくなったときに切り捨てられるのは一番やくにたたない……分かった分かったこれ以上言わない」


 後ろ側でなにやら言い争いになっているが、恐らくスコールさんが黙らせたのだろう。

 あの人には真顔で黙らせるという技がある。

 いつも不愛想、無表情だから十分に怖いのだ。


「あー、それにしてもタンデム弾が欲しいな」


 強引に話をそらすためか、ゼファーさんが撃ちながら言う。


「聖水詰めて空に撃ち上げるとかだったらクラスター弾頭の方がいいぞ」

「いやいや、折角倉庫の中に奪ったパンツァーファウスト3があるんだからさぁ」

「弾頭自体がないだろうが」

「けっ、面白くねーの」


 やけになったのか、リコイルのカタタタッという音が増えた。

 恐らく予備のエアガンも使って両手撃ちを始めたようだ。

 ゼファーさんが使っているのはクリスベクターというものらしい。

 実銃の方はスコールさんから聞いたことだけど、独特の機構で反動を下方向に逃がしながら連射できるものらしく、本来使用する弾丸はM1911、コルト・ガバメントなどで使われる大口径のものだと。


「よし、よし……お前ら走れ!」


 茂みの中、林の中から現れる悪魔が減り始めた頃にスコールさんが言う。

 もう少しで榊の生えている場所だ。

 そこには降った雨が榊を伝って地面に染み込んでいるため、悪魔たちは一歩たりとも踏み込めない。

 天然の結界であり、最も安全な領域。


「はいっ……ってスコールさんどうするんですか!」


 一人だけナイフを構えたまま向かってくる悪魔たちに斬りかかっていく。


「完全にがら空きは不味いからな、少ししたら追いかける」

「わ、わかりました、気を付けてください」


 四人で濡れた草の生えた山道を駆ける。

 さすがに一人ですべてを引き付けるようなことはしなかったのかできなかったのか、数人の悪魔が追いかけてくる。

 一番後ろは私。

 走りながら上体だけ振り向いて横薙ぎに撃つ。

 当然精度はガタ落ちだけど、腰のラインに放たれたBB弾は確かに悪魔の動きを刈り取った。

 トドメを刺さなければいずれ回復してまた動き出す。

 だけど、狙いをつけようとすると続々と悪魔たちが現れ始めた。

 スコールさん、まさか……。


「ユキちゃん!」

「は、はいっ」


 アスリートのようなフォームで走ってくる悪魔が数名。

 生前……感染前はそういうことをしていたのか、かなり早い。


「あと少し!」


 追いつかれる寸前。

 榊の生えた場所に飛び込んだ。

 ふんわり生えた下草がクッションのように身体を受け止めてくれて、背後からは鉄の焼けるような音が響く。

 目を向けると灰になるどころか、結界に踏み込んだ足から侵食されるように真っ赤に赤熱してじりじりと身体を消滅させていっていた。

 聖水でさえ灰にするだけの”浄化”力があるのだから、力の源であるものにはさらに強い力があって当たり前。

 だけどここまで強いとは……。


「ざまあみやがれ!」

「ちょっとゼファー、そんなこと言ってる暇があったら榊を切ってよ」


 すでにホノカさんとミコトさんはリュックから剪定鋏を取り出して榊の枝を採取している。

 山道を走った後ですぐに作業できるって、体力あるなぁー。



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