さくせん
「AP、スコール以下十二名。ワンマンと六セルで行動開始」
『こちらAP、確認しました。それにしてもスコールさん……私の仕事を全部取らないでくださいよ』
「事務処理とサポートに家事全般。負担デカすぎでタスクの実行速度が遅いんだからいいだろう」
『そ、それはそうですけど……』
「とりあえず榊採取の二セルの指揮はこっちで執るから、水確保の四セルの方を頼む」
『了解しました、お気をつけて』
揃ったメンバーはみんな知ってる人たちだ。
班分けは私たち榊採取の五人、水確保の八人。
あちら側の指揮は退役軍人のクセロさんとアサルトプランナーさんがいるから大丈夫。
こっちは自称元学生のスコールさん……。
「それじゃいきますかー!」
「待てゼファー」
「なんだよ?」
「お前ら全員、危なくなったら逃げろ。これだけは覚えておくように」
「いや、当たり前だからな、それ」
「そうですね……」
口々に言いながらみんながバリケードを登っていく。
バリケードの出入り口になっているのは、意図的に上り下りがしやすいようにでこぼこした場所だ。
低いところで三メートル、そこを登って反対側に降りていく。
スコールさん、ゼファーさん、ホノカさん、ミコトさん、そして私。
「あ、ゼファーさん覗きですか」
「いやいやいやややや、違うよ!」
「がっつりみてたね~」
先に降りた男性二人、スコールさんはマップを確認していたけど、ゼファーさん、なぜかホノカさんとミコトさんのスカートの中に視線が……。
「あははっ、パンティーだと思った? 残念スパッツでした」
「横に同じくショーパンでした」
「ガーン!」
「お前ら、”外”ではあまりふざけるなよ」
「はー……い」
ドサリ、とすでに感染者、悪魔をその場に蹴り倒すスコールさんがいた。
数こそ少ないけど、この辺りにも入り込んでくる。
それに、そもそも触れられたら危ないから本来拘束するまでもなく倒すのが普通なんですが。
こんな風に押さえつけるのは州軍の方々が実験体として確保するときくらいで……それでも専用の罠を使うんですが。
「ほんと、不思議だな」
腰にぶら下げた小瓶から聖水を垂らす。
ぽたりと落ちたそれは、悪魔の衣服をも灰に変えながら息絶えさせた。
「素肌に触れられると感染、意識を侵食されて仲間入り。その後は身に着けているものまでだ」
「だよなー……お蔭で州軍がやられて感染した奴、メチャクチャつぇーのに装備を取れないのは……」
「言っても仕方ない、出発するぞ」
スコールさんとゼファーさんを先頭に私たちが続く。
格好はみんなそれぞれだ。
接近戦を主に行うスコールさんは半袖シャツに長ズボン、上から長袖のパーカーを羽織ってグローブ。
残りの私たちはいずれも丈夫な生地で作られている軽装で、肘や膝にプロテクター。
多分スカートを穿いているホノカさんとミコトさんは見えないところにナイフとか持ってると思う。
「遠征から帰ってきたやつらと、入れ替わりで出て行ったやつらが通った後だから、念のため警戒は強めるように」
会話は少なめに、みんなエアガンのセフティーを解除して、指を添えて構えている。
撃つ寸前まで指は掛けるな。
傷つけたくないものには装填していなくても向けるな。
それがスコールさんの命令。
他にも色々と細かな指示は受けている。
例えば狙うなら頭ではなく、心臓でもなく、身体の中心。
一撃必殺より、標的がどう動いても初撃を当てて動きを止める方がいいとのこと。




