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はいきょ

 服は着ることが出来たけど、装備は何もないまま結界の外に放り出された。

 私とスコールさんとゼファーさんのたった三人。

 結界の上には銃口をこちらに向けている人たちがいる。

 いずれも魔狼の所属ではない人たちでスコールさんには信用するなと言われている。


「あーあぁ……てかなんで僕まで……」

「追い出されるだけのことはやっただろうに」


 確かに。

 一通り終わった後に隊長に会わせろとゼファーさんは散々に騒いでいたけど、ちょうど不在だったらしい。

 ここにいる中ではスコールさんと同じくらいに戦い慣れした人で、私たち下っ端には知らされていないことも知っているとか。


「あの……これからどうするんですか」

「どうするつってもさ、もう夜だぜ? どこで寝るんだよ」


 揃ってスコールさんの視線を向けると、いつも通りの表情だ。


「適当にビルに入って高層階にバリケードを作る。それで夜を明かす」

「……なあ、どうせお前のことだからどこかにセーフハウスくらいあるんだろ?」

「もちろんある」

「あるんかい……」

「とりあえずついて来い」


 その言葉に従ってスコールさんについていく。

 夜は昼よりも危険だ。

 それはどんなときでもあたりまえだけど、ここの場合はちょっと違う。

 昼間でさえもあれほど恐ろしい悪魔たちが活発になり、変異体もかなりの数が姿を見せる……まるで魔界とでも言いたいほどの状況になるのだ。

 遠征班はそんな状況でシェルターを作って危険な夜を越す。

 それを思うとここには私の知っている中で一番強くて頼りになる人がいるから心配なさそうに思えてくる。

 しばらく歩くと本当の夜になる。

 月明かりがなく、街頭なんて無くて当たり前の本当の闇。


「あ、あの……」

「見えないなら適当に掴まってろ」


 見えないならって、なんでこの人たちには見えているのか不思議だけど。

 音で追いかけていくのももう限界だからどこに掴まろう?

 パーカーの裾? それとも手?


「わきゃっ」

「さっさとしろ」


 悩んで立ち止まっていたら、グローブの感触が私の手を取った。

 声で分かったけどスコールさんだ。

 言い方はちょっとひどいけど、なんだか全然トゲがないって言うか、私たちを邪魔だと思ってないような感じ。

 暗闇の中に二人分の足音だけが響く。

 私とゼファーさんの。

 スコールさんは確かに私の手を握っているはずなのに、それ以外の気配を何も感じない。

 手の平からグローブ越しに伝わってくる温もり以外、そこにいるということを証明するものがない。


「ゼファー、ユキ」

「はい?」

「なんだ?」

「持って後……三十八時間。後は二人で何とかしろ」

「…………」


 後何日くらい、ではなく時間と言い切った。

 明後日にはいなくなる……いや、もっと早めにいなくなるだろう。


「もうそんな時期か」

「ああ、そんな時期だ」

「え? 何の話ですか?」


 ちょっとかみ合っていない。

 内容からすると何か別の?


「言ってもいいのか?」

「別に構わん。どうせあれを証明できるのはあいつらしかいないし」


 一体何の事だろう。


「スコールって実は……」

「ゼファー!」


 突然弾き飛ばされ、地面に叩き付けられる前に背中をゼファーさんに支えられた。


「なんですか、いきな……」


 目を開くと私たちの進む先に炎があった。

 確かに燃えている火柱だけど、周囲を照らさない。


「オイオイコンナトコロニニンゲンガイルゾ?」

「アァイイヨルダ」


 続々と変異体が姿を見せる。

 別に炎の明かりを反射しているわけではないのに、闇の中にしっかりと見える。


「やれるか?」

「やる。雑魚だ、素手でいける」


 タッと地面を蹴る音が聞こえると、走る足音が響く。

 変異体が腕を振り回し、炎を口から吐き出した。

 それによって照らし出された周囲の光景は異様。

 気付かない間に全方向を悪魔ではなく変異体に囲まれていた。

 一体だけでも苦戦するような怪物が数えきれないほど……。


「グギャアアアァァッ」


 周りを見ていると正面から金切声のようなものが響く。


「本物の悪魔ならその程度で悲鳴を上げるな」


 目を向けると、二体ならんでいた変異体の片方の目に腕を突き込んだスコールさんがいる。

 引き抜かれた腕には黒いヘドロのようなものがべっとりと張り付いていて、それを払う事もせずに崩れ落ちた変異体の頭を思い切り踏みつける。


「来いよ雑魚ども、先が長くないんだ。最後に遊んでやる」



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