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ぼくは死にます。  作者: 彩之介
第一章 小さな賭け
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小さな賭け

以前別のサイトにあげていた小説を大まかに書き直しました。

主な設定はそのままにしてあります。

趣味で書いていますが、少しでも人の勇気になりますように。

紙飛行機が飛んでいた。

ふわり、ふわりと風に揺られながら。



誰も触れない紙飛行機。



それがなんだか自分みたいで、切なくて・・・悲しくて。

気が付いたら追いかけていた。      


ふわり、ふわり。風に乗せられながら・・・・



紙飛行機が飛んでいた。

 

                *


 風が頬を掠める……。寒くないと言ったら嘘になるだろう。

それでも寒さよりも、悔しさが今はいちだんと強かった。

ここは、唯一の逃げ場所でもある屋上。カノジョはこの残酷な学校生活から逃げるためここにいる。


春この高校に入学して数か月。

規則に合わせて、きっちり着込んだ服に黒い髪。しかしその規則に沿った服装やい出立ちは遊び盛りの高校では浮いてしまった。

そして、気が付いた頃には一人クラスで浮いた存在。はずれものになっていた。


 ペタリと冷え込んだ屋上の地面に座りこむと、目にたまった涙を袖で拭き大きく深呼吸した。


今、クラスに戻るとどうなるかそう考えただけで、背筋に寒気がした。心配してくれる友達なんてもういない。


カノジョは一人ぼっちだった。


 


 昼休みなんてすぐ終わる。とくに屋上にいたらすぐに時間が過ぎるのが早い。魔の鐘が学校に響きわたった。昼休みが終わる、またあそこに戻らないといけないと考えるとため息すら出てくる。


教室は、かなり空気が汚い。

別に汚れてるとかではなく、やつらがいるからだ。はずれものになったカノジョを流石に暇な女子高生が放っておくわけはなかった。


 唯一の憩いである屋上を出て、人が少なくなった廊下を歩いて5分もせずにカノジョにとっては戦場に近い教室に戻ってきた。

心も足も重いが仕方ないと、泣いたのをばれないように深呼吸をして扉を開けた。

そして・・・・。


 一斉に集まる視線。

くすくすと笑う女子の声、関係ないという表情の男子。

そして、自分の机にはいつも上がっていないものが乗っていた。


「はぁ・・・・」


机に、蛾の死骸があがっており、紙があがっている。


『山本雪のひるごはん』


 カノジョ、山本雪はこの紙を丸めて蛾の死骸はティッシュに包んでごみ箱に捨てた。今日は蛾の死骸。前はトンボなど。毎日昼休みなど長い時間席を開けると机の上に物が上がっていた。


そう…カノジョ、山本雪はいじめにあっていた。

最初は、悪口とかだったりへんなあだ名とかだったが、最近では机や下駄箱がよく壊されたりしていた。



もう慣れた………


慣れれば、次はかまうのが面倒になる。変に反応すれば相手が喜ぶからだ。


雪は、この程度のいじめには我慢できた、でも。


ふと笑っているグループに視線を向けて、そのうちの一人に目が留まった。

その子は、仲間のメンバーと一緒に雪を見て笑っている。


いじめをしているのは、雪と同じ中学だった友達もなのだ。


「千絵………」     


雪はそう言いかけてコトバを飲み込んだ。雪の元中学時代の友達でもある、千絵がこっちを振り向いたからだ。


「ちょっと千絵~、あいつがこっちみてるよ~」


「何みてんだよ!」

千絵と一緒にいた人が笑いながら千絵に言うと、本人は嫌そうにしながら声を荒げた、それを見てグループの人が笑う。

雪は、そのグループから目をそらして、早く授業が始まるのを祈っていた。



 地元の高校は偏差値が思いのほか低く、中学で仲良しだった子はみんな外の学校へ行ってしまった。

 雪のいじめが始まる前は、千絵と雪はいつもいつも一緒だった。慣れない見知らぬ高校だったから、クラスにいる知り合いが千絵だけだったから。いつも一緒に行動をしていた。


それでも千絵は人付き合いがうまく、その関係は長く続かなかった。

きゅうによそよそしくなったかと思えば、違う中学の子と仲良くなり。そのうち浮いた存在になっていった雪を、グループのリーダーである中村が悪口を言いだした。

それがいじめの始まりだった。

 

 暇な学校生活に良い反応をする変わり物はターゲットにされる。そして女子の中での暗黙のルールである。庇えば自分に降りかかるのを嫌がり、みんな寄ってたかって雪を祭り上げた。

誰かがやられているうちは自分に来ない。

それに最高の暇つぶしにもなる。だれも助けてはくれないことを雪はみをもって知った。


授業終了のチャイムとともに、鞄の中に大切なものを入れる。

このまま帰ってもいいが、先ほど千絵達がいる中村グループがわらわら帰っていった。

このまますんなり帰れるとは、今までの経験からしてありえなかった。


いつも玄関で待っているか、それか下駄箱に何か入れている可能性もある。

そう考えると、足は自然と屋上へ向かっていった。

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