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 両手に持ったビニール袋に詰めた荷物をようやく降ろす。

 ちょっと買いすぎたようだ。

「まさか特売セールだったなんて…チラシのチェックが甘かったわ」

 一息ついて、買ったものを片づけていく。

「冷蔵庫に全部入るかしら」

 一抹の不安を感じながらも手は止めない。

「牛肉はここ、レモンは…とりあえず後回し、鮭は…」

 ふと手が止まる。


 『どうしてこんな所にいるの?』


 頭を振って作業に没頭しようとする。

 それは理解してはいけない事だから。何故かそう理解していた。

 玄関の方から、ただいまの声。

 娘が帰ってきた。


「お帰りなさい」


 なぜかほっとして、玄関に迎えに行った。



*---*



ブレーキ音。

それが全てを狂わせた。

きらきらと自動車の破片が飛び散る様は、どこか現実離れしていて。

そうそれは夢。

夢の事。

炎の赤も……

血の赤も……

全てが夢の中の事。



*---*



 意識ははっきりしていた。

 自分が目覚めている事も自覚していた。

 それでもしばらく静枝は体を起こさなかった。

 体が重い。どこか調子が悪いという訳ではなかったが動こうとすると体が拒否する。

 だからといっていつまでも寝室にいる訳にはいかない。

 今日も夫は会社へ、娘は学校へ行かなくてはならないのだから。

 のろのろと体を起こす。

 廊下へ出てリビングまでの距離がやけに長い気がした。

 何故こんなに動くのが辛いのか。

 静枝は少し考えた。

 夢を見ていた気がする。

 とても非現実的な夢。


「どんな夢だったかな…」


 ぼんやりと呟く。

 思い出せない。思い出せない程度のものだったのだろう。


「ま、いいか…」


 朝食の準備にかかろうとして、ふと脳裏によぎる。


 『どうしてこんな所にいるの?』


「………」


 手が止まっていた。

 何も考えられなかった。

 空白の意識のスミに滲むように何かが見えてくる。

 それは…。

 何かが浮き上がろうとしていたその時、廊下の軋む音が。


「いけないっ」


 夫が起きたのだ。

 朝食の準備はほとんど手つかずの状態。


「あわわっ、しまった。早くしないとっ」


 ドアを開けて入ってきた夫に向かって静枝は慌てていった。


「す、すぐ作るからちょっと待ってっ!」



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