第4話 「止まった世界」
世界が止まる。それは普通に生活していたら、体験することのない現象だと思う。
世界が止まると、そこに暮らしている人々も止まるわけで、俺たち何も特殊能力のない人間も止まってしまうわけで、普通の人は世界が止まってことに築かない。それなのに俺たちを止まっていない。
これはいったいどういうことだろうか?
「いったい何なんだ」
見ると、阿倍も何が起こっているのか理解できていないようだ。
当たり前だ。今まで普通に生活していた人間が謎の事件に巻き込まれたとなると、理解が追い付かないのは当然だ。
まして自分たち以外世界がすべて止まるなんてことになったら誰だって理解しようとするのをあきらめるか、何もない虚空に向かって状況説明しろ的な発言をすると思う。
まあ、後者は圧倒的に厨二病患者だと思うが・・・・・・。
「とりあえず廊下もこうなっているのかも、確認しようぜ」
俺は、回りをよく見て、何とか状況を理解しようとしている阿倍にそう言った。
「ああ」
阿倍はそう言って立ち上がろうとした。
したのだが、椅子を引こうといて動きをやめた。
そしてその行動に対し俺は、
「ふざけてないで、ちゃんとやれよ」
と、誰がどう見てもふざけているようにしか見えない行動をしている阿倍に向かってそういった。
阿倍はさっきと同じ行動を三回ほど繰り返したあと、
「椅子を引いてくれないか?」
などと言ってきた。
しかし今回はいつもふざけて言っている時とは違い、ピクリとも椅子が動かなかったような気がした。
なので、いつもやっているような一方的な暴r・・・・・・軽い運動は行はずに、たかが机だから簡単に動く、そう思いながら机を動かそうとした。
・・・・・・動かない。なんで?
見た目は、何の変哲もないただの机。
いつも掃除のときに運んでるただの机。
普段ならさほど苦労せずに、動かせる机
それなのに、今はまるでボルトで固定したかのように動かなくなっていて、確かに阿倍の身体を拘束していた。
試しに他の机も、手で押してみた。やはりビクともしない。
とりあえず状況確認。
生徒。HRが終り、友人と会話している途中で止まったのか、口が半開きになっている者や、楽しそうに笑っている者もいる。
隣にいるナルシストに声をかける。しかし予想どおり返事は返ってこなかった。
教室。モノクロになったことを除いては、ついさっきまでの教室そのものだ。時間が止まったからなのか、それとも俺たち以外のものが動かなくなっているの原因なのか、さっきから時計の針も止まっている。
出入り口には、数人の女子生徒がいる。その中には、体の一部だけがこの教室の中に入っている人もいる。となると、廊下もこのありさまなのか?
空間。この世界で俺たち以外唯一と言っていい時が止まってないもの。普通に息をしても、呼吸ができるのでここだけは、時間が止まってないのだろう。
初めから、この誠意に取り残された人のためにこういう仕様にしている気がする。
もしそうなのだとしたら、何というご都合主義・・・・・・
とりあえず、俺だけでも見てこいと言うので、廊下に出てみた。
すると目の前には、
さっきまでと全く同じ空間が広がっていた。
「ふざけてないで、ちゃんとやれよ」
阿倍がさっき俺が言ったのと同じ言葉を俺に向かって言ってきた。
俺はきちんとやったのに、そういう風に言われるのがいらっときてもう一度、廊下に出ようとした。
結果はさっきと変わらず、廊下には出れなかった。
そして阿倍は、「ふざけてないで、ちゃんとやれよ」と言ってきた。
そんなやり取りをさらに数回繰り返して、阿倍は本当に廊下に出られないことがわかったようだった。
すると阿倍は急に、今後の心配をしだした。
確かに、今後いつまでこの状況が続くかわからない。
となると、やはり一番の問題は、食料だ。
あいにくここは学校、しかも普通の教室。
こんなところに食料なんてあるわけがない。
ということは、ここで餓死するしかないということか。
俺と阿倍が、そんな結論に達した時その変化は起こった。
ピキピキピキ
卵が孵化する時の音に近い音が鳴り、空間にひびがはいったのだ。
そして、パリンという大変コミカルな音とともに、空間が裂けた。
布のように引き裂かれた空間の中は、様々な色が混ざり合い混沌とした空間があった。
俺と阿倍は、一瞬の浮遊感とともにその裂け目に吸い込まれた。
阿倍は机に挟まれってたのに、どうして阿倍単体で吸い込まれるのか、そんなどうでもいいことを考える暇もなく俺は意識を失った。
止まった世界での2人のやり取りです。
ほんとはもっと会話文が多くなる予定だったのですが、なにとぞ私の力量では、この程度が限界ということで納得してもらえるとありがたいです。
もう少しキャラが増えると、会話文が多くなると思うんだけどな。
最後に、誤字脱字などがありましたら、ご報告してくださるとありがたいです。