第40話「クレライト、再び」
気がつくとそこは見知らぬ場所だった。
前にもこんなことあったけな。そう言った思いもしっ旬だが確かにあった。
しかし、今回は一体どうだろうか?
目の前に広がっているのは、木目の美しい壁や床、それに開け放たれた窓ぐらいなものだ。他には何もない。
質素というよりも、貧相な景観だった。
なんとなく窓からの眺めを見てみる。そこには、先日見たクレライトとか言う街の大通りが目の前にあった。
そう言えば、前にここに来た時に、フラーモが俺のところに来たんだったよな。
「お姉ちゃん、いる?」
そんな感慨に浸っていると、唐突にドアをノックする音と成実のそんな声が聞こえてきた。
「ああ」
そう言ってドアに近づく。ノブを捻り、ドアを開けるとそこには成実と風音線の姿があった。
「やあ、友紀ちゃん。今日は来てくれたんだ」
「あ、はい。昨日はめずらしく母が帰って来たんでこっちには来れませんでした」
うちの母はどこか抜けているというかずれているというか、そんな感じの母親だから基本的にはあまりなにかと干渉してくるタイプの人間ではない。
しかし、夜勤が多いためか、家にいる時間は家族との時間を少しでもとりたいという考えのもとからか帰ってくる日は積極的にからんでくる。
もっとも、酒臭くすぐに寝てしまうからあまり意味はないと思うのだが……。
ともかく、そういった事情があり、昨日は風音さんと阿倍の二人だけがこっちの世界に来ていたのだった。
「まあ、お母様の教育方針がそうなら仕方ないとは思うけどね」
流石にこの言葉には俺も成実も苦笑いせざるを得なかった。あの人、何か考えてるようで何も考えてないからな。
そして思い出されるのは過去の記憶ばかり……。
そこで俺はふと気付く。あの人はあの人なりに考えていたと……。
…………自分が楽しく感じられる方向に…………。
「ところで、阿倍はまだ来てないんですか?」
思い出してしまった昨年のクリスマスや今年の正月などから目をそむけるために俺は強引に話題を逸らす。
「ん? ああ、けーちゃんならばたぶん1階にいると思うよ」
その言葉を聞くなり、俺は二人を置いて近くの階段を下りてゆく。
「よう阿倍」
目的の阿倍は1階のテーブルに腰をかけていた。
「おう、友紀か」
そう言って阿倍は手元にある雑誌から目を離した。
「なにを読んでいるんだ?」
阿倍の読むものにほんの少しの興味を抱き、そう訊いてみた。
すると阿倍は、その雑誌の表紙を無言でこちらに見せてきた。
「『月刊:アッシュフォード』……ってまたその雑誌かよ」
阿倍の読んでいた雑誌は先日こちらの世界に来た時にも阿倍が購入して読んでいたあの雑誌だった。
「ああ、といってもあれは号外だからな。こっちは本誌だ」
確かに、前に見たあの雑誌は16ページという薄さだったがこちらはどうやら52ページで70Asらしい。前に説明を受けた気もしなくもないがこの世界の金銭感覚がいまだにわからないのでこの雑誌が高いのか安いのかは俺には分からない。
「そうか。今号にはなにか有益な情報でも乗っているのか?」
その質問に阿倍は、首を縦に振った。
「とりあえずこのページでも見てくれ」
そう言われ開かれた状態で差し出された雑誌に書かれていた内容。
そこに書かれていたのは先月の即位式のことであった。
「ほら、あの時な。サフランさんの一撃でフェンギルドは殺されたじゃんか?」
それを読み始めようとしたときに阿倍からそんなことを言われた。
あの新国王が死んだという情報は初耳であったが、確かにあの出血量では命はないだろうと思っていたので、そのことに関してはあまり驚かなかった。
「それがどうしたんだ?」
「だからその答えがそこにあるんだって」
その言葉に促される形で、読む前に中断した雑誌に目を落とす。
そこにはいろいろなことが書かれていた。
例えば、そう。
「なあ、阿倍。ここに書いてあることってやっぱり事実なのか?」
その問いに対しても阿倍は深く、先程よりもさらに深く頷くのであった。
雑誌に書いてあった一文。
それは俺たち4人を『中央守衛隊』に迎えるという文章であった。
…………ところで、『中央守衛隊』ってなんですか?
どうも、マチャピンです。
こちらの世界においては現実とは異なった時間が流れているために現実では1日程度でもこっちの世界だとそれなりの日数が経過するのであしからず。
あと、『中央守衛隊』は騎士団みたいなものだと思ってください。
では、最後はいつものあいさつで
「俺、本当は誤字のこと直す気なかったぜ・・・・」
嘘ですので見つけたらご連絡ください