第30話「理不尽かもしれない出来事」
気がつくと、そこは建物の中だった。
「? ここはいったいどこだ?」
辺りを見渡す。
人一人分しかない狭い室内。やや埃っぽいが、むしろそれがこの場の雰囲気に合っているといえる。
正面には、木製の扉。
壁にかかった燭台の明かりが、この先にある扉までの唯一の明かりだ。
数歩で扉までたどり着き、それを押す。
思いのほかすんなりと扉が開き、俺は中に足を踏み入れた。
そこは、どこかの酒場といった雰囲気のところだった。
「あ、お姉ちゃんこっちこっちー」
成実のそんな声が聞こえる。
そこでふと、違和を感じた。
こちらの世界にいる状態ならやや低めの声のはずなのに、今さっきの声はまるでこっちに来る前のそのときの声のようだった。
そちらに視線を移動させる。
すると、ニヤニヤしながらこちらを見ている成実と目があった。
「おい、どういうことだ。なんでもとの姿に戻ってやがる」
そう、成実の姿はこちらに来る以前と何ら変わりない、見慣れた少女のそれであった。
それを周囲の人物(主に阿倍とか阿倍とか阿倍)が何かを期待したような眼で俺と成実を見比べている。
なんか腹だ足ったので、適当に阿倍を気絶させつつ、成実に向き直る。
「さてと、なんでお前が元の身体に戻っているのかについてじっくりときかせてもらいましょうか」
このときの俺の顔は、きっと笑顔だったろう。でも、たぶん目は笑っていなかったはずだ。
「え、えっとね……」
成実がやや怯えながらも、声を発した。
成実との距離をさらに縮め、続きを促す。
「さっきあの占い師みたいな人からもらったあのチップを封装にふれさせたら、頭の中にアクエリアの声が聞こえて、それに従って封装に魔力を流しこんだら……」
「元に戻ったと」
成実はコクコクとうなずいている。
そして、おもむろに懐からカードを取り出した。所属とか、性別とかが書いてあるあれだ。
それの性別欄を確認すろ。
そこにか「女」と記載されている。
その記載は、俺の精神に甚大な被害を及ぼした。
「あと、これからは好きな時にシフトできるってさ」
そして阿部が、反撃と言わんばかりに追い打ちをかけてくる。
へえ、そうなんだ。とりあえず、いつ復活したのかわからない阿倍を再び昏倒させつつも、再度成実に問いかける。
「ねえ、なんでお前だけそうなるの? ねえ、なんで?」
理不尽だと思いません?
こっちだってこんな体めんどくさいから一刻も早く戻りたいのに、何故ここ最近はどこか楽しんでる間のあった
成実が先なんだよ。
待てよ。アイリスならあるいは……
――――いっておくけど、私には無理だからね。
そう思っていると、脳内にアイリスの声が響いた。
――――マジですか?
――――わいいーえす
――――YESって、本気で言ってます?
――――信じて、お兄ちゃん!
――――ほんとに?
――――…………うん。
――――今の間は何?
――――?
――――いや、そんなわけがわからないみないな顔されても。
――――まあ、出来ぬものは出来ぬから、我が主には諦めて頂きたい。
――――そりあえず教えてほしいんだけど、なんで?
――――うむ。えっと、精霊にはそれぞれ固有の性質ってものがあって、その性質に合った力しか使えないから、っていえばわかる?
――――なんとなく
――――で、アクエリアの性質は「変化」。水が状況によってその状態を変化させるように、アクエリアもまた、自身や契約者の性質を変化させることができるというわけ。わかった、お兄ちゃん?
――――だいたいはな。ところで、だったらお前の性質はなんなんだよ?
――――…………。
――――え? ごめん、聞き取れなかった。
――――何でもない。
それっきり、アイリスから返事は返ってこなかった。
どうも、ここ最近俺望を書いていても筆が乗らないと感じているマチャピンです。
なにぶん、ここ最近は伏線のようなものの回収などを行っているので、あまり自由にかけていません。
まあ、その自由さのせいで、自分の首を絞めているんですけど……。
さて、この辺で本日は筆を置かせていただきたいと思います。
最後に、
ご飯にする? お風呂にする? それとも、ご・じ・だ・つ・じ?
----もう、作者ですら何を書いているのかわからなくなってきた…………