第25話「王都へ」
新たに見つかった精霊石の鉱脈はここテームルからおよそ半月ほど馬車に乗ったところにあるらしい。この世界での一日を現実に換算すると70分程度であることがわかっているので、現実ではおよそ18時間ほど経過するらしい。俺たちが気絶していた時間は半日程度だったようなので、現実の時間はすでに半日経過している計算になる。幸いにして、こちらに転移してきたのが土曜日の朝だったので、まだたっぷりと時間はある。そこまで計算したうえで、阿倍が毎度の如く依頼を受けた。
ここから国境までの日程としてはまず、7日ほどかけて王都まで向かい、そこで一泊し必要な物資を補給し、進路を東に変えてリスドラクト高地を超え、6日ほど進むと国境付近の防衛都市フェトストーロに到着する予定らしい。そこからは、半日もあれば件の鉱脈にたどり着けるらしい。
善は急げということで、本日中に旅支度を済ませて明日の早朝にここを発つこととなった。
あくる日の朝。
俺、成実、阿倍、風音さん、フラーモ、グレアムさんそしてサフランさんの計7名は場所に乗り、王都へと向かった。
道中は特にこれといって何か起こるわけでなく、起こったことといえば少し飛ばし過ぎたせいか阿倍が軽く酔ったことと、成実がついに封装の精霊と契約を済ませたことぐらいだろう。
それ以外には目立った異常も無く、一行は王都へと到着した。
王都は東京までとは行かないもののかなりの賑わいを見せており、通りが人であふれていた。
しかし、それは今日が休日であるということと、この通りが中央どうりであるという理由のもとであり、ここから一本道を外れて裏通りに入ると途端にひとけがなくなり、生活感漂う空間がそこには広がるばかりだった。
中央通りに戻り、人込みをかき分けながら進むと大きな広場に出た。広場の中央には一人の男性の銅像がそびえ立ち、その周りを大きな池が囲っている。
人込みの中のわずかなスペースを通り抜けながら、さらに進むと急にだだっ広い空間が現れた。大勢の人々が露店を開き、旅人風の客がそれらを品定めしているのがちらほらと散見できる。人々はみな生きる活力に満ち溢れていた。
視線を正面に移すとギルドの紋章が視界に飛び込んできた。その建物はかなりの大きさを誇っておりまた、威厳をまっとったたたずまいをしている。
「今まで見てきたギルドよりも一段とでかいな」
阿倍が感嘆交じりにつぶやく。
「ああ、確かにな。この規模は今まで見てきた奴とは比べ物にならないな」
阿倍の言葉に俺は同意する。他の二人も俺たちと抱いた感想は同じようだった。
「あれ? もしかしてみなさんは王都に来るのは初めてなんですか? てっきり来た経験があるものとばかり思ってましたが」
俺たちの様子がよほど気になったのか、俺の隣に立っていたグレアムさんが俺に訪ねてきた。
「はい。実は俺たち4人はこの国じゃなくてここからかなり離れたところの出身なんですよ。この国に来てまだ1カ月もたっていないものでして王都まで足を運ぶ機会に恵まれていなかったんですよ」
本当はこの国どころかこの世界ですらないんだがそれを言っても信じてもらえないだろうし、もっとも話したところでこちらにとって何の得にもならないその行為をする意味も無いのだけれど……
「えっと、ここはこの国のギルドの本部で、他の4カ国にもっこと似たような建物があるの。で、この建物の役割は担当する国内の冒険者の管理や新たに冒険者になろうとしている者の養成学校としての役割があるの」
であった当初のようなどこか距離を置いた話し方ではなく、すっかり打ち解けた口調でフラーモが言う。
「でもそれはあくまでも建て前上のものであって現実とは相違点がありますけどね。実際に東の国にあるのはすでに廃墟となったギルドのもと本部しかなく。再建案はないそうですね?」
グレアムさんが言う
「そうですね。確かにあの国は冒険者に対してあまりいい感情は持っていませんから。年でも冒険者のことを欲望に満ち溢れた野蛮人とか言っているらしいですね」
「他にも金のためなら平気で人を殺す危険生物だとか、金の狂信者とか欲望の化身だとかとも言っているらしいですね」
「わたくしの聞いた話によりますと国民の大半が冒険者に対してそのような負の感情を抱いているらしいですね」
「まぁ、あの国にはもともと国家資格のようなもので遊撃士制度がありますし仕方のないことだと思うんですけどね。だからといって、あからさまに冒険者を否定するのはちょっとどうかとも思いますが」
「わたくしもそう思います」
「あの国は現在の主要5カ国の中でも一番の伝統を誇る国家だと自負してますからね。あちらからしてみればこちらの行為は由緒正しい歴史を丸ごと否定されているように感じるのでしょう」
ダメだ。さっぱり理解できない。
お前もそうだよな? そう訊こうとして振り返るとそこで意外な人たちがこちらに向かってきていた。
その人たちもこちらに気付いたようで手を振りながらこちらへと足早に駆け寄ってきた。
「奇遇だね。まさか君たちも王都に来ていたなんて」
「お久しぶりですね、ポールさん。こっちにはついさっきついたばかりですけど」
グレアムさんの元護衛の3人がそこにいた。
入試が無残な結果に終わったマチャピンです。
今後はいつ連載が休止になるかわからない極限状態となりますので、なんのお知らせもなく更新しなくなることになるかもしれませんがその時は見捨てないでください。できるだけそのようにしないようにがんばりますから。
さて、この回を書いている際にかつて投稿したものを読み直しているとかなりの誤字を見つけられたことに内心驚きを隠せなかったので、皆さまお手数ですが誤字を見つけたら報告よろしくお願いします