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俺の望むもの  作者: マチャピン改三
第3章「命がけの救出作戦(ゲーム)」
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第24話「目覚めると……」

目が覚めるとそこはベッドの上だった。

 見慣れない天井。見慣れない家具。見慣れないメイド。

……メイド? なんでメイドがこんなところに?

 試しにまばたきを繰り返してみる。しかし何も起こらない。そんなことをしているとあちらも俺が起きた事に気付いたのかこちらに近寄ってきた。

「お目覚めになりなしたか、友紀さま」

 メイドはそう言って深々とお辞儀をした。

 状況が理解できない。確かさっきまで………………

そうだ、思い出した。確かグレアムさんの依頼でヴェイルドまでの護衛を受けて、その途中で盗賊の襲撃を受けて……

「そうだ、グレアムさんの依頼は!?」

 布団を跳ね除け、メイドを見る。

 メイドは小さく首を横に振った。それは失敗したということだろうか?

「そんな、それじゃあみんなは……」

 なんてことだ。阿倍も成実も風音さんもフラーモも、みんな……

「安心してください、友紀さま。阿倍さまも、成実さまも、如月さまも皆ご無事です。お譲さまも無事でしたし、今回の件は残念な結果になりましたが、いたしかたないことだと思って割り切ってください」

 メイドはどこか楽観視したことを言った。

 確かに、そう思えれば楽かもしれない。しかし、

「こっちは依頼人の命を預かっていたんですよ! それが守れませんでしたじゃ、ダメなんですよ!」

 はっきり言って冒険者に自らなったつもりはないが、それは言い訳にしかならない。曲がりなりにも、ギルドカードを持っていて、他人から依頼を受けた以上、それはもう立派な冒険者なのだ。依頼に失敗してもいいという考え方では、この世界では到底生きていけない。

「あの、何か勘違いしていませんか? グレアムさんは……」

 ――――ドドドドドドド――――

 そのとき、メイドの言葉を遮るように何者かの足音が聞こえてきた。その足音はこの部屋の前で止まったようだ。

 刹那。

「サフランさん、いつになったら戻ってくるんですか?」

 足音の主がドアを開け部屋の中に入ってくる。その人物の顔は、どこかで見た事のあるような顔だった。

「ん? ああ、気がつきましたか友紀さん」

 足音の主――――グレアムさんは俺に気付くなり笑顔で言った。

「あれ? なんでグレアムさんがここに?」

「いやいや、それは流石にひどいだろ。ほら、グレアムさんが困ってるじゃないか」

 グレアムさんの後ろから、阿倍が現れた。

「なんでもグレアムさんは<簡易転移装置インスタントポータル>で、一時的に商館へ避難していたらしい」

「ええ、帰りのための分を持ったまま転移してしまった時には少々焦りましたが、考えてみれば商館の方には<転移魔法テレポーテーション>の使える術師がいるのを完全に忘れていました」

 はっはっは、とグレアムさんは笑う。だが、その表情にはもっと別の黒い何かが隠されている気がした。

「ここで話しているのもなんですし、場所を変えませんか?」

 メイド――――サフランが提案する。もちろん、俺以外の二人はもともとサフランさんを呼びに来たのだから、拒否する要素がない。

 俺は頷き、一同は先刻までみんなでいた所へと戻った。


 部屋の中には各々でくつろぐ仲間たちの姿があった。

「あ、おはよーお姉ちゃん」

 フラーモと話していた成実がいち早く俺に気付き、声をかける。その言葉をトリガーとして、残りのメンバーが一斉にこちらを見た。

「友紀さん、お体のほうはよろしいのですか?」

 フラーモが心配そうにきく。その隣には、本を読んでいる風音さんの姿もある。

「ああ、特に痛むところも無いし、いたって普通だ」

「そうですか」

 フラーモはほっと胸をなでおろしていた。

「ささ、友紀さまもおかけになってください」

いつの間に持ってきたのかはわからないが、サフランさんが新たに椅子を一つ用意してきた。俺たちは促されるままに椅子に腰かけた。

全員の目の前に温かい紅茶がおかれる。それを阿倍はゆっくりとすすると、おもむろに口を開いた。

「グレアムさん、この度は誠に申し訳ありませんでした」

 阿倍は椅子から立ち上がり、頭を床にこすり付けんとするかの勢いで土下座をした。

「いや、何もそこまでしなくてもいいから。今回の品物は案内いするついでに運んでいたものだしそんなに高いものじゃないから」

「確かに、荷物は安いものだったかもしれません。しかし、失った商品とグレアムさんの信用は帰ってきません。自分たちの未熟さゆえにこのような事態を引き起こしてしまい、申し訳ございませんでした」

 グレアムさんが顔をあげるように説得するも、阿倍は一向に顔をあげようとはしなかった。むしろ、放って置くとさらに床にめり込みそうな勢いで頭を下げている。

「よし、じゃあこうしよう」

 突如としてグレアムさんが言った。

「商館に避難している時に小耳にはさんだ情報なんだけど、なんでも東の国との国境線付近で新たに精霊石が発見されたらしいんだ。ちょっとそこまでの護衛を頼めるかな?」


いつもよりも短い気がしますが区切りがいいのでこの辺で投稿します。

どうも短編を未読の方は3カ月、読まれた方は1カ月ぶりのマチャピンです。

さて、今回より第3章「命がけの救出作戦ゲーム」開始しました。

では、いつもどおりにご挨拶を。

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