第1話 「いつもと変わらない朝」
「お姉ちゃん、朝だよ」
何やら下の階から妹の俺を呼ぶ声が聞こえた気がするのだが気のせいだ。
何やらこの部屋に向かって足音が聞こえた気がするのだが気のせいだ。
何やらこの部屋の前でひたすら「起きて」などと言ってノックを繰り返しているがこれも気のせいd・・・・・・じゃねえ! いつまでたっても起きてこない俺を妹が起こしに来たようだ。
明らかに俺のことをお姉ちゃんと言っているのは、2つ下の妹、成実の声だろう。
なぜか身長が168などと女子の中どころか男子よりも高い。また、運動神経抜群で髪型がショートでボーイッシュな容姿のためか初めて見た人には必ずと言っていいほど兄と妹を間違えるか、姉妹と認識される。
何やらクラスメイトに言わせると「中世的な魅力のある兄と、可愛い妹」らしい。
さらに母親いわく、「2人とも性別逆に生まれればよかったのにね♪」とのこと。
・・・・・・まあなんとも兄不幸な妹だと思う。
そんな妹は「朝ごはんだから早く来てね」と言い残して下に降りってたようだ。
さて人の気も知らない邪魔物もいなくなったので俺は、自分のからだに変化がないかどうか確かめるとするか。
昨日の夜に「男らしくしてほしい駄目でもせめて女装させられないようにしてほしい」とこのペンダントに願っておいたのだ。
あのおじさんの言葉を信用する気にはならなかったがこのペンダントからは、何か謎めいたオーラを感じたのだ。
しかし、目線がいつもと変わってないような気がするのだが・・・・・・
不安になり、母が「女の子の部屋にはこれくらい必要でしょ♪」などとほざいて撮り付けた姿見で確認してみよう。
・・・・・・鏡の中には、身長152、変声期前、色白、女顔という容姿で、イベントのたびに女装させられるような容姿という、昨日の夜願ったときと全く変わらないいつもの自分の姿がそこにはあった。
まあ、わかってたけどね。あんな趣味で始めたような骨董店で売っているようなものなんかどうせ複製品とか、そういうものばかりだろ。そうじゃなくたって無名作家の作品だろ。ただでさえ骨董品は、本物が少ないって昼の骨董鑑定番組の再放送で言ってたし。
・・・・・・うん、泣いてなんかいないよ。この目から出てくるのはただの水だ。目の乾きを抑えるための水だ。そうに違いない。
そう言って少しへこんでいると、下から「お姉ちゃん、早く」と妹の声が聞こえてきた。
一階に下りるとすでに妹が一人で朝食をとっていた。
なぜかって?今この家には俺と妹の二人しかいなからだ。
父親は現在東京に行って単身赴任をしているのでいない。
対して母は、夫についていくなどはせずに、この家から仕事に行っている。
ただ、勤務時間が夜な為に日中はほぼ確実にいない。俺たちが学校に行く時間までに帰ってくるのは、1、2週間に1度くらいだ。
そのためいつも家事は妹と分担して行っているのだ。ただ、俺は寝起きが悪い方なので、朝食はいつも妹が作っているのだ。
いつもどおり自分の席に着くと妹が「はいこれ、お姉ちゃんの分」と言ってほどよく焼けたトーストをさしだしてくれた。
その後は、朝のニュース番組を聞きながら二人でもくもくと朝食を食べていた。
それの半分以上を食べ終えたころに妹が、
「あ、そうだ。昨日これ買ったんだけど、お姉ちゃんどう思う?なんだか願い事一つだけ叶えてくれるって言ってたんだけど、全然効果なかったんだよね。ま、デザインいいからそんなことどうでもいいけどね」
そう言って見せてきたのは三日月の模様が描かれたコインのチョーカーだった。俺はこのとき、なにか聞いてはいけないことを聞いたような気がした。
実際にそれを聞いた妹が、よくぞ聞いてくれました的な表情になった。
たぶんその手の店を、友達と行っただけ。そう信じたかった。
そしてその爆弾は投下された。俺の期待を裏切って・・・・・・
「一昨日までは空き地だったところに新しくできた骨董店だけど?お姉ちゃんも何か欲しいの?骨董品じゃないのも売ってたから今日の放課後にでもいっしょに行く?」
、と・・・・・・
妹が初登場しました。
この娘については後々重要になってくるのかもしれません。
最後に友紀ちゃんが予想していたのは、姉妹で同じことをしたんじゃないかと思ったとでもいうことにしておいてください。
次回からしばらくは、2日に一回の投稿になると思います。
最後にプロローグのときに書き忘れましたが、誤字脱字などありましたらご連絡お願いします。