第19.5話「商人のお話」
俺たちが風音さんたちの机に座るなり、商人がもう一度始めからお話しいたしましょうと言って、語り始めた。
「あれは5日ほど前の夜遅くのことです。その晩は、翌日までに届けなければならない品物があったので、寝る間を惜しんでヴェイルドへ向かっていました。それでも、最後に休憩した場所からかれこれ8時間ほど移動していたので、今日はこの辺で休もうかとい、わたくしたちは丘の上に野営の準備を始めました。ちょうどそのその時です。丘の下から数十名の人たちがこちらに向かってきました。おそらく、盗賊の類だろう。そう思いわたくしたちは雇っていた護衛に、もし攻撃してきたら、全力で排除しろ。そう頼みました。しかし、奴らは、こちらなど見向きもせずにそのまま通り過ぎて行きました」
「それのどこに不審な点があると? 俺には、傭兵団がたまたま通りがかっただけとか、他の考えも浮かんでくるんだが」
商人の話を聞くなり、阿倍がそう質問した。
確かに俺も今の話を聞いて、気まぐれで襲わなかっただけという考えが浮かんだ。
しかし商人は、それを否定した。
「たぶん、それは違うと思います」
「なぜだ? 何を根拠に?」
「彼らの中にはわたしたちを襲おうとした者もいました。ですが聞こえたのです」
商人は、何が聞こえたかははっきり言わなかった。しかし、その部分が非常に重要なことなのだとは、容易に想像がついた。
「なんて、聞こえたんですか?」
それが誰の言葉なのかは、俺には分からない。阿倍かもしれないし、風音さんかもしれない。成実や、俺、フラーモのものかもしれない。あるいは、そのうちの数人かもしれない。
とにかく、俺たちは商人の言葉が気になった。
商人は、一拍あけてこう言った。
「『時代は変わった。こんなところで時間をつぶさずに、さっさと依頼主に商品を届けようぜ。それがこの国のためになる』って。どうですか? なんだか、怪しくないですか?」
ここ最近.5話とつくのが多くなている気がします。
それは置いといて、.5話なのでおそらくまた明日次話投稿するかも。
まあ、テスト近いから五分五分なんですけど。後1週間あるんですけど。
それでは、誤字脱字、誤字脱字がございましたら、ご報告お願いいたします。




