第15.5話「跳躍直前」
翌朝、「ひっさしぶりの休日は~、お酒でも飲んで寝る!!」と言っていた母の声を聞きながら、俺と成実は阿倍の家へと向かった。
昨夜
母は、ソファーで成実と一緒に寝ているアイリスを見ると、
「友紀、拾った以上はきちんと世話しなさいよ」
と、およそ人間(いや、正確には人間じゃないんだが)に向かって言うようなセリフじゃない事を言いながら、身だしなみを整えることもなく自身もソファーで寝息を立て始めた。
仕方ないので、テレビを消し、俺は適当に毛布をかけて部屋へと戻っていった。
阿倍の家には、風音さんが来ていた。
今日は休日のため、昨日約束していた午前9時よりも早く全員が集まった。
「よし、みんな集まったな」
阿倍が辺りを見渡し、全員いることを確認する。
「じゃあ、風音さん。説明よろしく」
阿倍が、何の脈絡もなく風音さんに説明を促した。そんなんで何を説明していいかわかるわけ、
「うん、わかった。まず、封装に意識を向けて」
わかったらしい。
で、何だっけ? 封装に意識を向けるんだっけか?
封装に意識を向けると、見慣れたアイテムウインドウが出てきた。
「で、そこから時限跳躍魔法を選択して」
は、時限跳躍魔法? そんなもん、どこにあんの?
アイテムウインドウには、当然のようにアイテムした表示されていない。
隣の阿倍を見ると、こちらの視線に気づき、
「どうした?」
ときいてきた。
「いや、その時限跳躍魔法ってものが、見当たらなくてな」
「あー、そうか。友紀まだ、封装の使い方に慣れてなかったな」
「悪いかよ」
「いや、別に悪くはないんだが」
「じゃ、いいじゃねえかよ」
「まあいい。説明始めるぞ」
なんだかんだで、説明はしてくれるらしい。
「まずは、魔法を使いたいって念じろ」
「どこにだよ」
「封装に決まってるだろ」
「わかった」
阿倍のアドバイスに従い、もう一度封装に意識を向ける。しかし結果は、
「ダメだ」
「よし、じゃあ、もう一回行ってみよう」
これまた結果は、
「また、ダメだな」
「ああ」
そんなやり取りをあと数回繰り返したころ、最初から傍観していたアイリスが口を開いた。
「私が実体化してるから、封装からは魔法が使えないと思うぞ」
と。
今までの努力は、何だったんですか?
ちなみに、アイリスが封装に戻ってからすぐに、次元跳躍魔法が使えるようになった。
15話であんな終わり方をしたら、書くことが少なくり、短くなりすぎてしまったので、今回は15.5話として投稿します。
たぶん明日、16話を投稿すると思います。
最後に、誤字脱字等ございましたら連絡いただけると幸いです