表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の望むもの  作者: マチャピン改三
第2章「First Mission」
14/53

第12話「俺と妹と銀髪の少女」

「は?今なんて」

「お兄ちゃんの様子を見に来た」

 少女はにこりと微笑みながら、繰り返して言った。

 はて。俺にこんな妹はいただろうか?

「えっと、そのお兄ちゃんって俺のこと?」

「うん」

 少女はこくりとうなずきながら肯定した。

「お姉ちゃん?どういうこと?」

 成実が不安げにこちらを見ている。

それりゃそうだろうな。下手したら、この少女は両親の不倫とかでできた子かもしれないし。

「まさか、見ず知らずの少女にお兄ちゃんと呼ばせて喜んでるの?」

 そうそう、こういう女の子にお兄ちゃんと呼ばれるとうれしく……

「ならねーよ。つか、お前気にするとこそこかよ」

 まったく、しょうもない事を考える妹だ。もっと周りを見習ってほしいものだ。

「……間違えた。お兄ちゃんではなく、お姉ちゃんだった」

 例えば、自分の間違いを訂正しているこの少女を見習ってほしいものだ。

 ……って、あれ。なんか間違えてる気が。

「そうそう。男の子なんかに勘違いされちゃお姉ちゃんがかわいそうだよ」

 うん、間違いじゃなかった。

 名も知らない少女よ、お前は間違えてなどいなかった。間違えていないから呼び方を元に戻してくれ。

「お前のその言葉が、どれだけ俺に傷を負わせてるか考えた事あるか」

「うん、今度から気をつけるよ」

「じゃ、お姉ちゃんと約束できる?」

「うん」

 スル―された。

「成実、いい加減にしろ。なんか、取り返しのつかない誤解を与えてる気がするのだが……」

「えー、いいじゃん。お姉ちゃんかわいいし。全然問題ないって」

「かわいいかわいくない以前に俺は男だから。これ重要な」

 たびたび思うのだが、こいつは本当に俺性別を勘違いしているんじゃないか。

「え、大きい方のお姉ちゃんがお兄ちゃんでお姉ちゃん?」

 銀髪の少女は、俺と成実を交互に見ながら謎な言葉を言っている。

「おい、お前のせいでそこ混乱してるぞ」

「私のせいじゃないもん。お姉ちゃんがかわいすぎるのがいけないんだよ」

 何当然のことを、と言わんばかりの雰囲気で成実が言う。俺からしてみれば、異常以外の何物でもないのだが……

「訳分からないこと言うな。だいたいいつも、かわいいだの可憐だの言いやがって。俺は男だって何回言ったらわかるんだ」

「でもあそこだと、女の子だったじゃん」

 そのことを、思い出させるな。あんなことは、記憶の奥底にコンクリ詰めして鎮めてたのに。

「あんなのは、ただの夢だ」

「あれ?さっきは心当たりないって言ってた気がするんだけど」

「何のことだ?さっぱりわからないのだが」

 しまった。危ない、危ない。誘導されてしまった。危うく、あの夢を認めるところだった。

「お姉ちゃん、現実逃避は止めようよ」

「現実逃避じゃねえ。あんなもん、ただの夢なんだよ」

「ほんとにあきらめが悪いね、お姉ちゃんは。アイリスちゃんからもなんか言ってあげなよ」

「ただの夢は、ただの夢なんだよ。ん、今なんて」

 アイリスという単語が聞こえた気がするのは気のせいだろうか?

「アイリスちゃん、さっきからお姉ちゃんおんなじことばっかり言ってるよね」

「おい、ちょっと待て。今確かにアイリスって言ったか。言ったよな、絶対」

「お姉ちゃん、明らかに動揺してるよね。アイリスちゃんはどう思う?」

「うむ。私もマスターは動揺していると思う」

「だから無視すんな。おい、あれは夢なんだろ。夢なんだよな。なんでおアイリスがここに居んだよ」

「……マスター、少しは静かにしてくれ」

「あれは、あれは夢じゃなぐふっ」

 おい、なにも鳩尾に入れることはないだろ。

「お姉ちゃん、大丈夫?まってて、今私が助けてあげるから」

「ちょ、待て。状況が理解出来なぐふっ」

 多少よろめきながらも立ち上がった俺に対してアイリスは、そう言ってさきほどと全く一緒のフォームで殴ってきた。

「お姉ちゃん?何が起こったの。どうして、そんなにつらそうなの?ねえ!」

「ごほっ、いや、心配するならまずそのてをおぐふっ」

 なおも攻撃は続き、

「お姉ちゃーん、しかっりして。お姉ちゃーん」

 俺は心身ともにボロボロになっていた。

「……アイリスちゃんって、案外危険な子かも」

「ごほっごほっ、成実、何だこの状況は。しっかり説明しろ」

 何故俺が殴られたのかの事情聴取を行い、判決を言い渡そうとしていたのだが、帰ってきたのは、

「いいけど。ただ単に、お昼休みにアイリスちゃんが教室に来て、事情の説明とかしてくれただけだよ」

 こんな、一言だけ。

「ならなぜ、俺はこのように地面に転がらないといけないのだ?」

 こんな状況になるときは、成実も一枚かんでいる時が多いので、成実に集中的に質問することにする。

「さあ?なんでだろうね?」

「さあ?なんでだろうね?じゃねえよ。ちゃんと答えろよ」

 答えは、予想外のところから帰ってきた。

「だって、お兄ちゃんが気づいてくれなかったんだもん!!」

「だってさ」

アイリスからだ。確かにこいつが実行したんだからな。俺には、こいつに聞くという選択肢はなかった。

「わかるかよ、そんなもん」

「ん?我が主と我は契約をしているので問題なく気づけたはずだぞ」

 へえ、そうなんだ。でもあれ、

「じゃ、俺はなんで気づけなかったんだよ」

「こっちから気づけないようにしたからな。ところで、さっきから何かなっておるが?」

 軽く受け流された気がする。で、何かが鳴ってるって?

「ん?確かに。携帯にかかってきてる。誰だろう」

 画面を見ると、知らない番号からだった。無視しようかとも思ったが、とりあえず出てみることにした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ