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死の同窓会

ボクの名前はナオキ。25才だ。

一流大学卒業後外資企業に就職して3年間、優良顧客に株を売りまくった。

上がりそうな株は自分でも購入してる。

完全歩合制だし株は爆上がりしたところを売り抜けたから貯金は15億ほど貯まった。

タワマンに住み高級車を乗り回す優雅な日々を送ってる。

順風満帆の人生を送るボクには野望があった。

復讐だ。

一心不乱に牙を研いだのはすべて復讐のためだ。

10年前、中3の時にひどいいじめを受けた。

気分が悪くなると思うから割愛するけど、自殺未遂を3度するほど苛烈ないじめだ。

親に心配かけたくないし他県の名門校を受験することにして1年間耐えた。

15才のボクはいじめっ子にはぜったいに復讐してやるぞ!と心に誓っている。

だれになにをされたかも全部ノートに書いて覚えてる。日付もね。

莫大なお金を稼いだのは復讐計画を実現するためだ。

練り上げた殺人計画書の手順通りまず山奥のボロい温泉旅館を1億で購入した。

改築に追加で3億を投じる。

10億かけて毒と遠隔操作できるダイナマイトと小型爆弾を秘密裏に購入した。

満を持して中3の時のクラスメイトにオシャレな同窓会の案内を出す。

山奥にある新築の温泉旅館にごちそうを用意してる。

泊まるのも自由。おみやげも用意してる。

と書いたら、みんな出席すると返事してきた。

返事が遅いやつには催促の電話もしようと思ってたけどその必要もなかった。

バカめ!おまえらぜんいん皆殺しだ!

時間の経過とともに復讐の炎は鎮火すると思いきや、どんどん膨れ上がりいまや世界を覆い尽くすほどの炎が心に渦巻いている。

いじめのトラウマでふとした時にいじめの記憶を思い出して苦しい。

これはPTSDだ。ボクはずっと苦しんできた。

トラウマから解放されるためにはあいつらをぜんいん殺すしかない。

計画を実行する3日前にボクは会社を辞めた。

会社に迷惑をかけられない。

ボクも死んだことにして海外に高跳びする手はずを整えてる。

飛行機のチケット代でお金はなくなり無一文だ。

異国の地で生まれ変わってやり直す。

決行日、ボクは広い駐車場でみんなを笑顔でお出迎えした。

今日が命日だと知らずにウキウキした様子でみんなやってくる。

「よう!ひさしぶりだなナオキ!」

「ひさしぶりねナオキくん!」

みんなボクをいじめてたことなんて完全に忘れた顔だ。

けっきょくこの10年、だれも謝罪に来てない。

いまいましい。

鳳凰ほうおうの間にお菓子とコーヒーを用意してるから、そこでくつろいでよ。みんなそろったら龍神の間で乾杯しよう」

同窓生たちは軽やかな足取りで旅館に向かう。

あとは中でスタッフが案内するだろう。

しばらくしてみんな到着したので車を見回す。

ボクをいじめていたクラスのリーダーはヤンキーの乗るような派手な車に乗っていた。

巨漢の不良だったが、金髪に髪を染めてさらにぶくぶく太っていた。

金ブタだ。

こいつには女子の前でパンツを脱がされたりカツアゲされたり、さんざん殴る蹴るをされた。

椅子で頭を打ちつけられて何針も縫う大怪我を負ったこともある。

ドブ川の汚水を飲まされたりトイレの床も舐めさせられたし屋上で子分たちにリンチを受けた。

お気に入りの自転車も壊された。

女子には無視されたり椅子や靴の中に画鋲を入れられたり掃除用のロッカーに閉じ込められて体操服を隠されたこともある。

教師である冴えない中年男はボクがいじめを訴えても見て見ぬふりをした。

自分のクラスでいじめがあると評価が下がるからだ。

不良たちが怖かったのかもしれない。

ボクの机に線香や花が置かれる葬式ごっこが行われてみんなが寄せ書きをした色紙を置いていたことがある。

「さようなら」「いなくなってよかった」「成仏してね」「バンザーイ」などと書かれていた。

ボクはそれを額に入れて部屋に飾っている。

この寄せ書きを見るたびに地獄の日々を思い出して憎しみの炎が燃え上がり恨みを忘れずにすんだ。

その寄せ書きは担任教師のこいつも書いている。

いじめを止めなきゃいけない教師がいじめに加担していたんだ。

万死に値する。

中学時代、ボクに服従を強い、ボクを虐待し、ボクを虫けらのように扱ったおろかものどもが許せない!

ボクは奴等をこの世から消滅させてやる。

旅館に戻るとみんなお菓子やコーヒー、高級茶、果実100%の新鮮なジュースを飲みながらくつろいでいた。

鳳凰の間は洋風だ。クロスをかけた丸テーブルとソファーを用意してある。

みんなそれぞれ思い出話に花を咲かせているようだった。

ワイワイガヤガヤしてる。

せいぜいいまのうちに楽しんでいるがいい。地獄に突き落としてやる。

「ナオキ、出世したなぁ。今度、タワマンに遊びに行かせてくれよ」

「ナオキくん、いま彼女いるの?」

「フェラーリ乗せてぇ」

「ナオキ、かねめぐんでくれーい」

みんな浮かれ気分でボクをもてはやす。

ボクは謙虚に感じ良く応じつつみんなに龍神の間への移動を呼びかけた。

龍神の間は和風だ。輝く御膳が並んでいる。

一流の料理人が作った最高級の料理だ。

飲み物はワイン、日本酒、焼酎、ウィスキーなんでも用意してる。

水もお茶もジュースもすべて高級品だ。

「すげ〜うまそう!生きててよかったぁ!」

「はやく乾杯しよーぜ!」

みんなは目を輝かせて名前の書いてある座席に着席した。

アレルギーも事前に聞いてアレルギー持ちにはアレルギーが心配ないように配慮している。

ボクを信用させるために完璧にいい人を演じた。

好きな飲み物を聞いて乾杯用の飲み物も事前に用意してある。

ぜんぶ毒入りだ。

現時点でスタッフはぜんいん帰宅させた。

これから惨劇が幕を開ける。

苦しみもがきのたうち回るがいい!

乾杯の音頭はとうぜん呼びかけ人のボクだ。

よだれを垂らして待ちわびている罪人どもに満面の笑みで死刑執行ボタンを押す。

「本日はみんな来てくれてありがとう!みんな愛してるよ!カンパ〜・・・」

言い終える直前、ガラッとふすまが開いた。

キラキラしたオーラをまとった絶世の美女が登場する。

オシャレに興味がないボクでもわかる洗練されたオシャレなファッションだ。

だれだこいつ?

呼んでないぞ!

こんな山奥だれも来ないし、玄関に貸し切りの立て札も出した。

部外者はだれもくるはずないんだ!

場違いな訪問者にボクだけじゃなくみんなあっけにとられている。

「じゃんじゃじゃーん!サプライズゲストのミオちゃんだよ〜!」

1人の女子が立ち上がり美女を紹介した。

シンガーソングライターのミオです。みなさんおひさ」

ミオはピースサインする。

「ミオだ!なんでこんなところにミオがいるんだ!?」

みんなざわつきはじめる。

ん?

有名人か?

ボクはテレビを見ないし流行にはうとい。

みんなは歓喜の声をあげていた。

旅館が割れて山奥にこだましそうな音量だ。

スーパースターを迎えた時のリアクションだな。

どうやらミオは知らぬものはないトップアーティストらしい。

「ミオちゃん同じクラスだっけ?」

「ほら~1学期で転校した子いたじゃ~ん!スズキミオナちゃん!」

「あ〜いたかも!まさかこんなに可愛くなるなんて!」

「付き合っとけばよかったぜ!」

「わたしがSNSで正体に気づいて同窓会に招待したんだよ。お手柄でしょ?ミオちゃん招待状もらってなかったみたいだからさ。みんなを驚かせるためにちょっと遅れてきてって伝えたの」

「どもども。招待されてないのに来ちゃってたいへん恐縮です」

ミオは申し訳なさそうな顔をする。

「いやいやいや大歓迎だよ!」

「ナオキしっかりしなさいww!」

和やかなムードのなかボクは呆然としていた。

古い記憶が蘇る。

スズキミオナはみんなにいじめられていた。

彼女をかばったことでいじめの対象がボクにうつったんだ。

彼女はボクに「ありがとう。ごめんね」と泣きながら謝って転校して行った。

好きなアーティストが同じで盛り上がった思い出もある。

おとなしい雰囲気と控えめな笑顔が可愛くて大好きだった。

気が弱くて声も小さかったので歌が上手いイメージはない。

いじめで一度心が死んで転校先で生まれ変わったんだろう。

彼女に死の招待状を送らないのはあたりまえじゃないか!

「ちょうど乾杯だったんだよ。ミオちゃん何が好き?」

「ウーロン茶好き」

「りょーかい」

どうにかミオとお近づきになりたくてしょうがない女子がウーロン茶を用意してミオに手渡す。

あれも毒入りだ。

突然のアクシデントで頭がパニクリ体が凍りついてしまう。

「じゃあ、ミオちゃんに乾杯してもらおーぜ」

「さんせ〜い!」

「あたしでいいの?」

「ミオちゃんがいー!」

まずい流れだ。

どうしてこうなった!

やばいやばすぎる!

ミオはグラスを掲げる。

「みんなが集まる機会を作ってくれたナオキくんありがとう。3年B組の再会を祝してしてカンパ・・・・」

「ダメだぁ!」

「ふぇっ?」

「飲んじゃダメだ!」

ボクはミオのグラスを叩き落とした。

ミオを殺すわけには行かない!

畳の上にウーロン茶のシミが広がる。

すべてぶち壊しだ!

「なにすんだよナオキー!主役の座を取られたからってみっともねーぞ!」

「そーだそーだ!」

激しいブーイングが巻き起こった。

「ナオキは抑えとけ」

「あいよ」

ボクは背の高い男子にはがいじめにされる。

「はいミオちゃん。もういっかい♩」

「うん。みんなカンパー・・・」

ボクは絶叫する。

「飲んじゃダメだ!毒が入ってるんだ!」

みんなぎょっとしてボクに注目する。

先刻までのお祭り騒ぎは波を打ったように静まり返る。

数分後、ボクは正座させられてみんなに囲まれた。

ホールの金魚鉢で飲み物が毒入りであることが確認されてしまい吊し上げにあっていた。

「なんでオレたちを殺そうとしたんだ?ナオキくんよぉ」

「・・・いじめられたから」

ボクは怨嗟の声でつぶやく。

「いじめなんてしたか?」

「ちょっといじってたかもな」

「ふざけてただけだろ。あんなのお遊びだよ」

「楽しかった思い出しかないぜ。プロレスごっこをいじめに受け取るなんておまえ歪んでるぞ」

「そーそー。被害者意識強すぎ」

「断言する。我がクラスにいじめはなかった」

最低の教師は平然と嘘をつく。

怒りが沸点を超えた。

ドス黒い感情の荒波が胸に押し寄せる。

「ふざけるなぁ!ボクはぜんぶ覚えてるんだ!

ひとりひとりの名前をあげていじめの内容を告発してやった。

どれだけ憎んでいるのかも伝える。

同じことをやり返したい。

恋人や妻や子供にもやり返してこんなひどいことをされたと伝えたい。

身内や友人、知人にすべてバラしてやりたい。

ボクの魂の叫びにみんな青ざめてる。

10年間溜まりに溜まったすべての憎しみを洗いざらいぶちまけてスッキリした。

最初からこうすればよかった。

加害者のためにボクがずっと苦しみ眠れなくなる必要なんてなかったんだ。

ぶつけられたボールは投げ返せばいい。

加害者がずっと苦しみ眠れなくなればいいんだ。

心の荷が降りて心は羽のように軽くなった。

けして抵抗しないと思って安心していじめていたのに10年越しに手痛い反撃を喰らったせいかいじめっこたちは不機嫌な顔だ。

みんなでボクをどうするか話し合う。

「どうするこいつ?」

「殺せ殺せ」

「山に埋めようぜ」

「また復讐されちゃたまんねー。ダチや家族にうそを吹き込まれても困るしな」

「こっちは殺されかけたんだ。殺されても文句いえねーよ」

結論が出かかった時、美しい声が響いた。

「待って!」

ミオだ。

ボクを守るようにいじめっこたちの前に立ちはだかる。

「みんな忘れてるけどあたしもみんなにいじめられてたよ?

ぜんぶ覚えてるしテレビで告発してsnsでも公開できる。

それがイヤならナオキくんを許してあげて。

あとこれからは人に優しく生きること。

ちょっとでもひとをいじめてることがわかったらテレビとsnsでさらすからね。

友だち、恋人、奥さんと子供に知られるのはイヤでしょ?

親にも知られたくないはず。

あたしいくらでも探偵をやとえる財力あるから本気だよ。

これからの人生ずっと見張られてると思って暮らしなさい」

いじめっ子たちは顔面蒼白だ。

すごい勇気だな。

かつてのいじめっ子たちと勇敢に戦ってる。

足も震えてない。

転校してからだいぶ自分を鍛えたんじゃないだろうか。

よく見るとムダな脂肪のない引き締まったいい体だ。

ミオは心も体も強くなっている。

みんなは苦々しい表情でうつむいていた。

ミオの完勝だ。

しかし、そううまくはいかなかった。

金ブタは舌打ちする。

「こいつら2人とも殺そうぜ。死ぬまで秘密を握られたまま怯えて生きるなんておらぁごめんだ」

ミオは眉根を寄せる。

「ひとをいじめないで生きる自信がないってことだね。

そのくせ大事なひとにいじめをしていた過去を知られたくない。

この臆病者ッ!」

「うるせぇ!ぶっ殺してやんよ!おめーらやっちまえ!」

ブチ切れた親分の号令で子分たちがミオに襲いかかる。

社会人になっても昔の上下関係をしっかり覚えてるんだな。

それだけ金ブタが怖いんだろう。

ミオは殴りかかってきた子分のパンチをかわしてカウンターで顎に右ストレートをぶちこむ。

脳震盪を起こした子分は糸が切れた人形のように崩れ落ちる。

アチョー!と飛び蹴りをしかけてきた子分にはもっとすばやい飛び蹴りをお見舞いして顔面を潰した。

クビが逆方向によじれてる。

すごい威力だ。

酒瓶を持って襲いかかってきた子分の攻撃をしゃがんでかわすと足払いで転ばしてぶよぶよのビール腹を踏み抜く。

鍛えてない腹筋は豆腐のように踏み抜かれた。

子分たちはあっさり全滅する。

「ふざけやがってぇ!このあま!」

金豚はミオにタックルをぶちかます。

ミオもタックルで対抗した。

「おわっ!」

弾かれたのは金ブタだ。

ミオのほうが足腰が強く体幹がいい。

よろけた金ブタのえり首をつかんで背負い投げで畳の上に叩きつける。

「ブヒーッ!」

金ブタは醜いうめき声をもらした。

ようやく女性陣から悲鳴が上がる。

ミオは畳に転がるいじめっこたちを見ろした。

「いじめられても返り討ちにできるように転校してから格闘技習い始めたんだ。

復讐ってカ・イ・カ・ン ♡」

「クソが!」

金ブタは畳を殴りつける。

「抵抗をやめなさいミオさん。ナオキくんを殺しますよ」

「!?」

いつのまにか背後に忍び寄った教師がボクの首にベルトをかけていた。

「秘密をばらされることをあなたがいちばん怯えてるのね。先生」

「ボクの命なんてどうでもいい。逃げるんだミオ!逃げてみんなの秘密を暴露してやれ!」

「ナオキくんの命には変えられない」

ミオはその場にあぐらをかいて座り込む。

無傷のクラスメイトたちが浴衣の帯でミオを縛りはじめた。

「きみが戦わないと2人いっしょに殺されるだけだ!」

「それでもいい。あたしはナオキくんが大好きだから」

「ミオナ・・・」

こんな修羅場で初恋の女の子から告白を受けるなんて人生はホントになにがあるかわからない。

「ボクも大好きだ」

ミオは花が咲いたように笑う。

このまま時が止まればいいのにな。

ミオは畳の上に転がされボクも浴衣の帯で手足を縛られる。

「ナオキのポケットからこんなものが見つかりやした!」

戦闘には加わらなかった腰抜けの子分が金ブタに爆弾の起爆スイッチを渡す。

刀の柄みたいになっていてロックを解除すれば簡単にボタンを押せる。

「なんだこりゃ?ミオを痛めつけられたくなかったら洗いざらいしゃべれ」

「起爆スイッチだよ。最後はダイナマイトで証拠をぜんぶぶっ飛ばすつもりだったんだ。

床に大量のダイナマイトを用意してる」

「とんでもねーやろうだな。イカれてるぜ」

「平気で人をいじめて覚えてない人間のほうがイカれてる」

「ナオキのくせに刃向かいやがって。おい!この女、みんなでまわそーぜ」

「やめろ!」

無力な自分が悔しい。もっとボクに力があれば。

「あたしに触れたら舌噛んで死んでやる」

ミオは本気でやりそうだ。

最低の教師が反対する。

「ダメです。処女のまま天国に送ってあげなさい」

「なんで処女ってわかんだよ?」

「デビュー以来、スキャンダルはひとつもなかったですからね。

私はミオさんのファンクラブにも入ってます。ミオさんについてはだれよりもくわしい」

「自分の生徒だったこと忘れてたじゃねぇか」

「それはそれです。彼女が純潔なのは間違いありません」

「きむすめか。なおさら犯してーぜ」

金ブタはいやらしい目でミオを見る。

傍観していたクラスメイトたちが話の輪にくわわる。

「同じ女として反対よ」

「わたしは見てみたいけどね〜あのミオがいたぶられるところ。興奮するわ」

「スマホで動画残してぇ」

「俺は女に乱暴するのは好かん」

「やるなら順番はジャンケンにしよーぜ」

「腕っぷしの強い順に決まってるだろ!」

みんながもめはじめてめんどくさくなったのか金ブタは肩をすくめた。

「わかったわかった。なんもしねーよ。胸くそわりーし、もう帰ろうぜ」

ミオをめぐって仲間割れが起こり余計な死者を増やすのは避けたいようだ。

金ブタは安っぽい腕時計を見やる。

「ダイナマイトは大量に埋まってるらしいからな。

車で遠くに逃げねぇと巻き添えくらうぜ?

1分後にドッカーンだ!」

金ブタはニヤリと笑って走りはじめる。

「わー待って待って!」

「やばいやばい!」

「もーそーいうのやめよー!」

みんなあせって逃げはじめた。

金ブタはいじめっ子気質だからみんなをビビらせて楽しんでいる。

あっという間に人だれもいなくなり旅館にはボクとミオだけが取り残された。

帯はきつく結ばれてとてもほどけそうにない。

どうにか身を起こしてミオと体育座りで背中合わせになる。

ミオはこんな時なのに歌を歌いはじめた。

片思いの相手を想う純粋でやわらかなバラードだ。

ずっと聞いていたい。心が癒される。

こんなすばらしい曲で天国に行けるなら最高だろう。

ミオは集中力を切らすことなく歌い終える。

拍手ができないのが残念だ。

「これナオキくんを思って作ったんだよ?」

「素敵な曲だ。きみの声は天使みたいだね」

ボクはミオと口づけをかわした。

「最後がナオキくんと一緒でよかった」

「ボクもだよ。最後じゃないけどね」

「えっ?」

「もう1分はとっくに経過してるよ」

「あれ?なんで爆発しないんだろう?」

「ボクの胸ポケットのボールペンが旅館の爆破スイッチだよ。

あいつが持って行ったのは車の爆破スイッチ。

みんなの車に小型爆弾仕掛けてたんだ。

毒を飲まないで逃げるやつがいたら使うつもりだった」

「ってことは悪は滅んだ?」

「たぶんね」

計画では乾杯でボクも毒を飲んで死んだふりをする予定だった。

みんな死ねば旅館を離れて爆破すればいい。

飲まなかったやつがその場にとどまり電話で救急車を呼ぶようならトイレに吐きに行くふりをして旅館を抜け出し爆破だ。

飲まずにパニクって車で逃げるやつがいたら車を爆破する。

イレギュラーもあるし完璧に立てた計画もうまくいかないもんだな。

でも結果よければすべてよし。

「ゆっくり帯をほどく方法を考えよう」

「うん♩」

帯はハサミを使って切ったけどかなり時間がかかった。

3分以内に帯を解いて車で旅館から遠く離れるなんてミッションインポッシブルだ。

毒入り飲料はすべて処分してミオと2人っきりでごちそうに舌鼓を打つ。

温泉もいっしょに入ったし初体験もすませた。

ボクは復讐に夢中で恋人はいなかったからミオと同じ純潔だ。

ミオはそのことをたいへんよろこんでいた。

夜のニュースで30台の車が山中で爆破して全員死亡したというニュースが流れた。

とくになんとも思わない。

ミオの提示した条件を飲んでいい人として生きれば良かっただけなのに彼らは自分で死を招いた。

数日後の続報で犯人が判明した。

犯人は爆破スイッチを持っていたことから金ブタだ。

事件はクラスメイトを巻き込んだ集団自殺で処理される。

金ブタは多額の借金を抱えて家庭でのDVで妻に離婚され会社でパワハラとセクハラモラハラで部下に訴えられている超問題人物だった。

トラブルを多く抱えたせいで精神を病んでいた金ブタは同窓会を絶好のチャンスととらえ仲の良かった同窓生を道連れに幸せな思い出を抱いてあの世へドライブしたと考察された。

ボクとミオはとくに仲良くなかったから見逃されたというわけだ。

金ブタは日頃の行いが悪いから犯人にされてしまった。

いじめの過去をみんなにバラされたくなかったみたいだけど今さらだろう。

みんなにやっぱりかと思われるだけ。

あんなやつにもあの人だけには本性を知られたくないっていう大切な人がいたのかな。

それとも全国に悪事がバレるのは恥ずかしかったのか。

社会的に抹殺されるし。

その後、ミオとふたり温泉旅館でしっかり骨休みをした。

復讐を果たして人生の目的を失ったボクにミオはアドバイスをくれる。

「ナオキくんを高学歴で英語もできるしイケメンだから政治家になりなよ!

いじめられっ子だったからいじめられてる子供の気持ちわかります!

学校からいじめを根絶します!って公約で選挙に出馬すればぜったい当選するよ!

あたしも全面的に応援するし!まずは市長選だね!」

とくになにもすることがなかったのでミオの言うとおりにしたらすごい得票数でトップ当選した。

4年後に今度は県知事選に立候補する。

「市長時代に学校のいじめを教師、生徒、保護者と共有したことでしっかりいじめの抑止力になっています!

いじめ加害者は転校させてメンタルケアも受けさせました!

家庭環境が悪ければ毒親からは引きはがし良心的な大人に囲まれた環境で成長してもらっています!

いじめやパワハラセクハラモラハラする人間をみんなで情報共有するんです!

町単位で成功したことを今度は国単位で行えばひとを傷つける人間はこの世界からいなくなります!みんなでいっしょにいじめのない世界に行きましょう!」

街宣で市長としての実績を語るとまたもやぶっちぎりでトップ当選を果たす。

誠実な態度で有言実行に挑んでいると国民の信頼が厚くなり瞬く間に総理大臣の座まで駆け上った。

このままの調子でやさしい世界が実現されるまでミオと二人三脚でがんばりつづけたい。

いじめ根絶にいそしむある日、ミオにいじめっこたちへの復讐を考えなかったのか聞いたことがある。

もちろん考えたと言っていた。

格闘技を習って体を鍛え改造銃を作るところまでは行ったが、途中でやめたらしい。

ミオは転校で引っ越したけど、祖父母の家はいじめを受けた中学校と同じ町だったので長期の休みで祖父母の家に帰った時は祖父母にいじめっ子たちの近況を地情報集してもらっていた。

それによるといじめっ子たちはみんな不幸になっていたそうだ。

金ブタだけじゃなくみんななんらかの不幸を抱えていた。

肉親の死や姉妹の重い病気、失恋、離婚、いじめ、事故、いろんなトラブルに巻き込まれている。

それに気づいて復讐心を捨てたそうだ。

因果応報、人にしたことはいいことも悪いことも必ず跳ね返る。

復讐は神にまかせて自分の手を汚すことはないんだよ。

ってミオは言っていた。

いっぽうでイヤなことをされたらやり返すことも必要だとも言っていた。

相手がビビっていじめをしてこなくなったりイヤな想いをずっと抱え込まなくて済むという理由だ。

ボクも同意見だね。

やりすぎはよくないけどやられたのと同じ分だけは返すべきなんだ。

もちろん許せるほど心が広ければそれが1番いい。

ボクがやったようにイヤなことをされた思い出をどうしても許せなかったなら加害者にぶつけてもいい。時間とともに癒えない傷もある。

究極、自分の心を優先することが1番大事で自分の心がスッキリするならどんな方法をとってもいいんだ。加害者のせいで被害者が死ぬまで苦しみ続ける必要なんてない。

理不尽な暴力暴言には怖くても戦わないといけない時がある。たとえ1人でも。

自分の人生と命を守るために。

これでボクの復讐譚ふくしゅうたんはおしまい。

最後までお付き合いいただきありがとう。

みんなの復讐もうまくいくことを祈る。

佐賀同窓会大量殺人未遂事件を参考にしてます。

これ犯人も悪いけど、いじめをしてたやつらも悪いよねぇ。

自分たちが犯人に恨まれていたことはだれも信じなかったみたい。

いじめたほうは忘れてるんだよ。

恨みといえばこの前の大雨の日、真夜中4時にずっとインターホンの音がルルルルル♩って

鳴り響いて怖くて耳を塞いでた。

小学生時代からさかのぼってだれかに恨まれてないか考えたけど何もなかったよ。

原因は雨水がインターホンに混入したせいでした。

これからもだれの恨みを買わずに生きたい!

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