第38話:要、渋々お見合いに行く
このお話は普段は主人公目線で語り口のように綴っておりますが、今回は要目線でお送りします。
「お帰りなさい。社長。」
俺の部屋で俺が戻るまで仕事の調整をしてくれていた奈々が俺を出迎えてくれた時、俺の心が温かくなるのを感じた……………。
奈々を大切にしたい……………。その気持ちが変わることはなかった。どうせすぐに断るのだからわざわざ奈々の耳に入れるまでもないか、俺はそう判断した。
「ああ、資料の進捗は?」
「はい。あと少しで出来上がります。」
「うん。」
「会長のお話はどうでした?」
────ドキッ!
「ん…、まあ……たまには実家に顔を出せというものだったよ。」
「なんですか、それ……。ふふふっ。」
「会社に私情を持ち込まないで欲しいよな。ハハッ。」
俺はそう言って笑って誤魔化した。────これでいい……………。
そしてその週の日曜日。お見合いの日がやってきた。
俺はいつものスーツで約束の場所を訪ねた。時間まで少し早いだろうが………。待っていよう。そう思ってその場所に着いた。
こういうお見合いでなければここへまた奈々と一緒に来たいな。いい雰囲気じゃないか……………。そう思っていた時に声を掛けられた。
「────要?」
この聞き覚えのある声は……………!
「あぁ、やっと会えた!」
そう言って目の前に現れたのは元カノの真理だった。
「なん────っ!どうしてお前がここに?!」
俺は戸惑った。真理の恰好を見ると嫌な予感でしかない……………。
「ふふっ、聞いてないの?それより見て。この姿。綺麗でしょ?」
そう、真理は着物姿で現れたのだ。
何にもない日曜日に着物姿でここにいる────ってことは間違いない。
「はっ!俺の見合い相手がお前だっていうのか……………。」
「そうよ。ちゃんと聞いていなかったの?私がお父様に頼んでこの場をセッティングしてもらったんだから。」
「………………。この前俺は言ったよな?」
「あら。恋愛は自由にしたらよろしくてよ?だけど私と結婚する時にはちゃんと別れてくれればね!」
真理はそう言い切った。
「俺はお前とは結婚しない。もう俺たちは終わったんだ。それは変わらない。」
俺は手をギュっと握って自分の意思をハッキリと真理に伝えた。
「あれは私が若すぎたせいよ。今なら私達の前に立ちはだかるものなんてないわ!」
「そういう事じゃない!あの時にもう俺たちは終わったんだ。」
「………………私はそうは思っていないわ。私達は引き裂かれた……………!私は今もあの頃のまま、あなたの事が好きなままなのよ!」
俺は真理の言い分を聞いてこれ以上言っていても平行線だと思った。
「はぁー、この前も言ったが、だったらこの前あそこで出会うまでにもいくらでも連絡方法があったじゃないか。それをしなかったのは君だろ?」
「………………そ、それは……………。」
「この前俺と再会したから今こういう場を設けたんだろ?それまで忘れてたんじゃないか……………。つまり、お前の中でも俺との事は終わってたってことだろ?」
俺は冷静に真理を追い詰めた。
「でも…っ!」
真理は中々引かない。
「俺はこのまま見合いを続行するつもりはない。今後一切俺に関わらないでくれ。」
そう言って席にも着かずにそのまま身体を翻してその場を後にした。後ろで真理が何かを言っているが、こういう場合は相手にしないことが鉄則だろう。そうでなければいつまでも真理は俺にすり寄ってくるだろうから…。
ご覧下さりありがとうございます。なんと要のお見合い相手はまさかの元カノでした。




