第35話:この扉のむこうに…
このお話は主人公目線で語り口のように綴っております。
それから私達は安心して寝るまでの時間を二人で楽しんだ。普段は仕事の話をしている方が多い。だけど今日は自分たちの生い立ちなど少し踏み込んだ話を沢山したのだ。
「お。もうこんな時間か。奈々と一緒だとすぐに時間が過ぎてしまうな。」
彼のその言葉で私も部屋の中にあった時計を見た。
「本当に早いですね。」
「もうシャワーして寝よう。また明日の朝な。」
要さんが爽やかにそう言った。もう少し一緒にいたい気持ちもあったけど明日の朝は早めに行動するし、ここがいいタイミングなのかもしれないと思ったので
「はい。おやすみなさい。」
「ああ。おやすみ。」
そう言って私はもう一つのベッドルームへと移動した。
要さんがスイートを選んだ理由はこのベッドルームがもう一つあるからだ。恋愛初心者の私のために色々と我慢してくれてるんだろうなぁ…と思いながら私はその部屋へ移り、その室内にあるシャワールームでシャワーを浴びてからベッドに腰かけてでゆっくりと今日を振り返っていた。
本当に…朝からずっとドキドキしっぱなしだったわ。お怒りのお客様への対応から始まって、元カノ登場だもんね。本当、疲れたわ……………。私は眠気を感じてきたのでそのままベッドに横になり
〝あの扉の向こうで要さんがいるんだわ……………。ちょっと緊張しちゃうけど…何だか嬉しいわ。〟
そう幸せに浸りながら眠ってしまった。
一方要さんは
〝あの扉の向こうに奈々がいる…!〟
そう思うと中々眠れなかったようだ。(後日談)
翌朝、私達は予定通りに早めの朝食をルームサービスで摂り、身支度をして他の客が朝食を摂る時間までにサッサとチェックアウトを済ませたお陰で元カノにハチ会うことがなくホテルを後にすることが出来た。
帰りの新幹線の中で
「そう言えば……………。元カノさんは誰かと一緒に来てるはずですよね?」
「そうだな、一人でこういう所には泊まらないだろうな。それにこの辺りは観光地でもないしな。」
「その方は要さんの事を知っているのかしら……………。」
「さあな。もうアイツの事は忘れろ。この先会う事もないだろう。」
「そうですね。」
そうして私達が無事家に戻ってきた頃には辺りは真っ暗になっていた。
「やっぱり遠かったな。」
「ですね。」
「明日からまた頼むな。」
「はい、お任せ下さい。ふふっ。」
要さんは私を送ってくれたあと、自宅へと戻った。
翌朝、私はお土産を手にして出社する。秘書課の皆はクレーム対応が大変な事を知っているので労ってくれた。
石川さんは私の顔を見てニマニマしている。もう、それだけで皆にバレてしまいそう……………。
「お疲れ様でした。無事、解決したようで何よりです。」
金山さんが社長に向かって言う。
〝違う問題も発生したんですけどね……………。〟
私は心の中でそう呟いた。
〝そう言えば金山さんは元カノの存在を知っているのだろうか…。石川さんは……………?〟
私はいつか機会があれば聞いてみようと思った。
ご覧下さりありがとうございます。ホテルをチェックアウトしてようやく元カノとの遭遇から解放された二人でした。




