第24話:社長の判断
このお話は主人公目線で語り口のように綴っております。
店内には賑やかな雰囲気が漂っている。しかし私達のいる個室は今、呼吸の音が聞こえそうなほどとても静かだ。目の前のイケメン社長が私に交際を申し込んだ。そして私からの答えを待っているからだ。
「社長……………。」
やっとのことで言葉にしたのがその呼称だった。
「────ハッ!…社長か。」
その短い社長の吐き捨てる言葉に私は戸惑った。〝怒らせてしまった────〟
「あのっ、私…。」
慌てて言葉を探す私に社長は言う。
「わかった。今はいいよ。」
「え…。」
────怒ってない…?
「俺はこれから先、お前にアプローチしていくよ。そしてそのあともう一度お前に交際を申し込もう。」
「え…、」
目の前の社長は満面の笑みを浮かべていた。
怒らせてしまったかと思ったから社長からの言葉は意外なものだったのだが…、果たしてこれから先どうすれば…。そう戸惑う私に社長は声を掛けた。
「今は何も考えずに食事をしよう。」
「あ、はい…。」
それからあとの話は半分頭の中に入ってこなかった……………。
社長は本気なのだろうか…。
「春川の好きなものを知りたい。」
そう言い出して社長は食事の間ずっと
「春川の好きな食べ物は?」
「春川の好きな本は?」
「春川の…。」
ずっと私の好きなことを中心に色々と質問攻めにあっていた気がする…。私が緊張しないように気遣ってくれて、話が途切れて気まずい思いをしないように、質問攻めにする…。
「ふふっ、なんだか社長の手の上で転がされてるような気がするのですが…。」
「ん?ああ、あながち間違いないだろうな。ハハハッ。」
社長は終始とても楽しそうだった。
私達が食事を終えてお会計をしようとしたら
「俺が誘ったんだ。気にしないでくれ。こっちはお土産に…。」
そう言ってデザートの箱を手渡された。私はいつの間に用意までしてくれたのだろうと思いながら社長のスマートな対応に驚きながらも素直に頂くことにした。
「あ…、ありがとうございます。」
「ん…。」
社長は嬉しそうに、恥ずかしそうにそう短い返事をした。
そして二人で車に乗り込んだら
「今度、庶民のおすすめの店を紹介してくれるか?」
そう尋ねられた。忘れてなかったんだ……………。
「わかりました。」
私はそう返事を返した。今日おごってもらったんだから、お礼にご馳走しなくちゃ。きっと社長は同じ待遇を望んでいるわけではないはず。「庶民の」と、わざわざ付けて言うってことは、そういうことだろう。
そして社長はまた私の家まで車で送ってくれたのだ。
「今日はご馳走様でした。」
「ああ。」
「では、また明日……………。」
「ああ、明日またよろしく頼むよ。」
もう上司モードに切り替わっているようだ。
「はい。お気をつけて。」
そう言って私は社長にお辞儀をしてそのあと社長の車を見送った。
それから家に入って私は玄関でへたり込んだ。
「あの社長から交際を申し込まれたんだ……………!」
その実感が今頃湧いてきたからだ。
ルックスよし!財力よし!性格よし!(私には)
何も問題ないよね?
なのに何故私はあの時、オッケー出来なかったのだろう……………。
やっぱり上司と部下だからかな…。それとも社長がイケメン過ぎるから?私はその場で色々と自己分析をしてみた。でも答えは見つからない。
私って別に好きな人がいるわけじゃないし、オッケーしても良かったんじゃ……………。
ううん、違う。
多分…。社長の事が好きではないから、あの完璧な人の隣に並ぶ自分に自信がないからだわ。
私が辿り着いた答えはこれだった。私は未だに社長が言うように〝自分に対して誇れていない〟のだと思った。
ご覧下さりありがとうございます。イケメン社長はすぐに答えを聞きたかったが、奈々の気持ちが社長にはないと気付いて返事を先延ばしにして奈々にアプローチする事に方針転換したようです。




