第17話:社長専属秘書として…。
このお話は主人公目線で語り口のように綴っております。
あの創立記念日以降、秘書課は皆、仲良く一つのチームとなった。社長室を訪れた時、社長が「認められたようでよかったな。」と一言ポツリと言った。私は「はい。」と頷いて笑った。
それから社長と外回りする事も出始めた。最近では空がよく澄んで朝晩が少し涼しいなと感じるようになった。もう鈴虫も鳴く時期だ。毎日が本当に早い。
「春川。今日は午後から予定は空いていたな?そろそろ慣れてきただろうから、先日の創立記念パーティー参加頂いた方へ挨拶に行くぞ。」
突然、そう言われたので驚いた。
「は、はい!社長っ、挨拶に伺うのでしたら手土産とかは…。」
「わが社の記念品を添えて行こう。そこに用意してもらってるから10個ほど持って行こう。」
そう言って慌てて私は袋に詰めた。
「あの、何社位回る予定ですか?」
社長は立ち止まって考えて
「午後からだと回われて3社だろうな。最低3つを3社分、用意しておいてくれ。」
「わかりました。明日以降も訪問されますか?」
「ああ、時間を取るようにしてくれ。」
「わかりました、スケジュールを組んでみます。」
記念品を詰めた袋を持って慌てて社長のあとを付いて降りる。
「車はロビーに回すように手配しました。」
「よし、気が利くな!」
二人でエレベーターに乗り込み1階に降りた。受付の前を通る時に
「秘書課春川、社長と共に挨拶周りに〇〇社と△〇社、□□社の三社へ行って参ります。」
そう声をかけた。
「行ってらっしゃいませ。」
そう言って受付の二人は社長と私を見送ってくれた。
社長専属の運転手の佐々木さんが
「まずは〇〇社ですか?」
と尋ねたので社長がそうだ。そのあとは□□社へ…と付け足した。
私はこれが社長と二人で外出するのが初めてなので緊張した。
「春川、緊張してるのか?大丈夫だ。挨拶だけしてあとは微笑んでいればいい。」
「本当にそれだけでいいんですか?」
「まあ、あと1年は俺と行動を共にしないと先方との会話に混ざるのは難しいだろう。それでいい。」
これは社長なりの気遣いなのか、本心なのか…。
「わかりました。」
今の私には確かにそれ以外出来そうにないのだけは事実だ。
こうして私達は3社に無事、挨拶を終えて帰社した。
「秘書課春川、社長と共に戻りました。」
受付に声を掛ける。
「お疲れ様でした。」
二人は社長に向かってお辞儀をした。
社長室に戻ってようやく一息つけそうだ。
「戻って早々に悪い。春川、コーヒーを二つ買ってきてくれ。一つはお前の分だ。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
私はまた外に出向く。
「秘書課春川、社長の所要で外出しますがすぐに戻ります!」
受付の人たちは
「帰って早々に大変ね。」
と、そっと私に言ってきた。
────そう。社長は見た目はいいのだが、厳しいと噂があるからだ。だけど私は社長はよく笑う人だと知っている。
「そうでもないですよ。心配してくれてありがとう。」
そう言って微笑んだ。
ご覧下さりありがとうございます。創立記念パーティーが済んでこれからは本格的に社長と二人で行動する事が増えそうです。




