第15話:社長の気遣いに心が温かくなる日
このお話は主人公目線で語り口のように綴っております。
それからというもの、毎日が目まぐるしい速さで過ぎて行った。通常業務に加えて創立記念パーティーの準備だ。何もかも初めての事ばかりだ。招待客への招待状作成、テーブル席の席順、これを用意していた時に石川さんがポツリと「まるで結婚式の準備みたいね。クスクス。」と言っていたのが印象に残った。
前に友達の結婚式におよばれしたが、そうか、こんな風に進めてくれてたんだな…。私もいつかは好きな人と結婚かぁ…。そう思った時、ふと社長の顔が浮かんだ。
え…?なんで…?!私はあたふたしたが、毎日近距離であの美形を見ているからなんだわと思った。
そしてとうとう創立記念パーティーの日がやってきた。当日はお天気にも恵まれた。その日はもう夏も終わりそうな、だけどまだ暑さが残る日だった。
取引先への対応に追われる私達秘書課。そして秘書課の事務。他に営業課からも応援が来ている。女性社員が応対し、男性社員は玄関でお客様をお迎えする形をとっている。
社員たちはもう各々の席に座り、私達秘書課が取引先を席までご案内するのだ。全員が着席したあと、社長から感謝の言葉が述べられた。私は社長秘書として舞台袖で待機している。
社長の挨拶が終わると会長にバトンが回り、乾杯の挨拶によりパーティーの開始だ。秘書たちは専属の上司と共に取引先へ挨拶に回る。私も今回初めて挨拶に回った。いつも資料で目にする会社の方々だ。先方も社長職の方がほとんどでもう胃が痛くなるほど緊張していた。
社長ともなると取引先全員への挨拶となるのでヒールを履いた足が痛くなった。少し足を引きずっていたのだろうか、社長に言われてついていくと待機室へと案内された。そして座るように促され、目の前で社長が跪いたので驚いた!
「しゃ、社長?!」
すると社長は私の足を見て
「これは酷いな。さっきもらってきたが、これでカバー出来るか?」
そう言ってポケットから絆創膏を取り出して私に渡してきた。
「あ、ありがとうございます。」
そう言って絆創膏を受け取り、痛む所に貼ってみた。
「これで帰りまでもつと思います。ありがとうございます。」
私は社長の気遣いに心が温かくなった。
「少しここで休憩しているといい。何なら話相手に石川を呼んでこようか?」
「いえ、お気遣いなく…。」
「ハハハッ、きっと石川も抜け出すタイミングを狙っているさ。」
そう言って社長は会場へと戻って行った。しばらくして石川さんがやってきて
「あら、あなたも休憩?流石にちょっとくたびれちゃったわね。ふふっ。」
「はい、足をちょっと…。」
「まあ、靴擦れ?絆創膏が役目を果たせてないんじゃない?」
「いえ、これはさっき社長が…。」
私がそう言った時、石川さんが目を見開いて私を見た。
「社長が?え?あの社長が?!」
「え…ええ、そうですが…。」
石川さんが「ふぅ~ん、へぇ~。」と言いながら私を見てきた。
「な、なんですか?」
「ふふっ、社長に大事にされてるのね。」
「ちょっとその言い方は意味深なんですけど…?」
「あら、わかった?ふふっ。」
何だか石川さんは楽しそうにしていた。私は緊張と疲れで早く帰りたいのに……………。
そこへ例の三人組がやってきた。
「あら、あなた達も休憩を?」
石川さんは強気だ。それだけ彼女に対して皆が立場を弁えているからだ。
「はい。」
三人がそう答えた。
「そう、今日はみんなご苦労様。準備もそれぞれ大変だったでしょう。先輩としてみんなを労うわ。」
「ありがとうございます。」
「こちらこそ、ありがとう。」
そうして私達秘書課は全員ここで休憩をすることになった。
ーなんだか気まずい…。皆がきっとそう思っていただろう。
ご覧下さりありがとうございます。奈々のちょっとした変化に気付いた社長はパーフェクトな男性です。




