第1話:理不尽な毎日だけど誠実でいたい
このお話は主人公目線で語り口のように綴っております。
私、春川奈々(26)はOLだ。その傍ら趣味である物語を書くことで〝ライトノベル作家〟を目指している。この前のボーナスで買ったノートパソコンが今の私の愛用品だ。
一般レベルの大学を出たことで会社の中ではどうやら下に見られることが多いようで、よく雑務を頼まれるのだが、私は意外とその雑務が好きだ。ちなみに私が所属しているのは駿河商事という会社で営業課の事務を担当している。この会社では女子社員は秘書課と営業担当のみが自前のスーツ着用だ。それ以外の課や担当は制服が配布されている。私も規定により配布された制服を着用している。
「おーい、春川!この書類、総務まで持ってってくれ。」
そう声を掛けてきたのは同じ部署で確か同期のはずなのだが、何故かいつも偉そうにしてくる笹川雄介(26)だ。
〝また?さっきもそう言って総務まで書類を持って行ったとこなのに、さては渡しそびれたな?〟
本音はそうなのだが、なんせ人に言い返すことが難しいという、何とも困った性格なのだ。
「これだけ?他にはない?」
「おう、多分な。すまんな。」
雄介は口ではそう言うが、本心は私のことを雑用係とでも思ってるのだろう。ちょっと悔しい。別にいい顔をしたいからではない。性格的に言い返せないだけなのだ。私はそんな自分の性格があまり好きではない。
笹川から預かった書類をさっさと総務へ持って行って、自分の仕事を進めなくては…。
私は一つ上の階にある総務へと急いで足を運んだ。
キィィィ…。
うわぁ…。総務の扉ってどうしてこう軋む音がするの…。恥ずかしい。
そっと扉を開けているつもりだが、何故か軋む音がする。
すると一斉に皆がこっちを見るのだ。私は恥ずかしさを堪えて
「すみません、追加の書類を預かってきました。よろしくお願いします。」
そう言って手前に座っている総務の人に書類を預けるとその人は
「ああ、笹川さんからの依頼分ですね、いくつか漏れていたのでこれで間に合うと思います。ありがとうございます。」
と言って軽くお辞儀をしてくれた。私は慌てて
「いえいえ、お役に立ててよかったです。」
と答えてそそくさと扉を閉めて総務を出てきた。
私自身はそんなつもりはないのだが、よく「誰にでもいい顔をする」と陰口を叩かれてしまうのだ。実際、こういう雑用も嫌いじゃない。オフィス作業はどうしても座りっぱなしだから少しでも立って動く機会があれば嬉しく思うのだ。だから用事を頼まれても嫌だとは思わないから、嫌な顔をする事はない!
でも、そんな私を良く思わない人がいるのも事実だ。んー、だったら自分も同じようにすればいいのに、どうして出来ないのだろうか?私からすれば簡単なのになぁ…。
そう考え事をしながら歩いていると
────ドンッ!
「キャッ。」
人とぶつかってしまった。あーぁ、やってしまった。
「ご、ごめんなさい!」
私はすぐさま相手に謝ったのだけど、相手からは何も言葉がなくて、思わず目を見開いたのだけど、なんと…!
「しゃっ、社長っつ!?」
驚いて咄嗟に声が出てしまったの。
「す。すみませんでした!」
相手が社長だとわかった私はすぐさま頭を下げてちゃんと謝ったのだけど、
「ん………。いや、俺もよそ見をしていたから、……悪かった。」
ぶっきらぼうに言う答えが返ってきてびっくりしたの。その言葉はまるで彼の外見をそのまま体現しているようだったわ。
流石社長!貫禄ある…!って……………。それにしても………綺麗な顔立ちだわ。
私は間近で社長を見て少し見惚れてしまったようだ。
「はい、これは君のだね。」
社長にそう言われて〝ハッ〟とした私。社長が手にしていたのは私の社員証だった。
「す、すみません、ありがとうございます!」
そう言って社長の手から社員証を受け取ったのだ。そして慌ててその場を離れるために
「この度は失礼しました。」
そう言って、深くお辞儀をしてその場をあとにして自分の部署まで戻ったのだ。その時の社長の視線に気付きもしないで……………。
ご覧下さりありがとうございます。今回のお話は主人公目線で進めていきますので、主人公の日記を読むような、独り言を聞くような、そんなイメージで進めております。
いつもなら全体的なイメージを最初の時点で描いてからのスタートなのですが、今回は全く思い浮かばない状況からのスタートとなります。
どんなお話になるか、ドキドキしています。




