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RVALON Ⅰ  作者: 竜;
When I Come Around

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03-03

「イレギュラーな気配を追ってたら、まさかこのような奇跡に回り逢えるとは。そう、まさに運命!」


 いまだ状況を飲み込めないでいる益子とスパイクを気にする様子もなく、舞台で踊るかのごとく、逐一大袈裟なボディアクションを披露しつつその男は続ける。


「我が愛しの名器を探し月日は流れ、奪って行ったのはあの男。そうなれば必然的に居場所は限られる。しかし!」


 両腕を大きく広げると、スポットライトの様に木々の木漏れ日が男を照らした。


「今の私は管理局という城に近づくことすら許されない。あぁ、それはロミオとジュリエッッッツ!こんなにも近くて遠いというのかぁ! おぉ、幼き神竜よ。あなたは私を、そう!我が愛しき名器の元へ導くため、あの日途絶えたデュエットを再開するため、そして、あなたという転調が重なり、このセッションを至高へと巻き上げる為にぃ!」


 何処からか現れたのか、鮮やかな色をした小鳥達の群れが木の葉と共に螺旋を描くようにその男の周りを飛んで行き、一つの曲が終わったかのように、辺りは静まりかえった。


「あのぉ......、でしゅね。主しゃま......、ではないのでしゅか?」


 まるで次の場面までの一間に客席側から、舞台の役者に声をかけるようなご法度を侵しているかのように、申し訳なさそな声のスパイクは、中腰で両手を前に広げて天を仰ぎ、微動だにしないその男に聞いた。


「主......?なるほど、そのセリフからするに、今は名器と契約を交わし、主従の関係ということですかな?残念ながら、私などが我が愛しき名器の名を騙るなど冒涜。私は我が愛しき名器を最高、いえ!それ以上の状態に調律するだけの存在。神竜よ、私をお忘れか?」


「じゃんねんでしゅが覚えてないでしゅ。さっき「以前より姿が」って、言ってまちたが、それってあたちが覚醒してる時の姿でしゅかね?」


「私の記憶に欠落があるのが歯がゆいのですが、恐らく以前に私がお見受けした、神々しく燃えるような紅い鱗の竜があなたならば、お互いの見解は一致してると言って相違ない」


「あ~、それだと今のあたちは寝てる......、って、言うとちょっと違いましゅけど、いわゆるエコモードなので覚醒時の記憶は覚えて無いんでしゅ」


「おぉ~、なんとそれも運命の悪戯か。では、あなたは我が愛しき名器に起こったことの成り行きも、シンクロしたあの煌びやかな瞬間も......」


「あのぉ~」


 間髪入ったその声に、スパイクは言葉を遮られ顔を向けたが、相変わらず、白いガスマスクの男は構うことなく話を続けている。


「しかし待たれよ。そもそも私はあの時、我が愛しき名器にもあなたにも恨みはないが任務という条件の下、敵対と言う立場であった。だが、こうして出会った今は......」


「あのぉ!」


「なんでしょう?……おぉ若きレイディ、悦びの再会の感動にすっかり忘れてしまいました」


 無視していたわけではないが、自分の世界に入りかけていたその男は、大き目のその声を、まるで雑音とでも言わんばかりに明らかにトーンを落として答えた。


「もうすっかり恐怖も逃げる気すらも失せちゃったから聞かせて欲しいんだけど、あなた。ショッピングモールで見たマスクの人とは違う......、のかな?服装が微妙に変わってるし。それに、そうよ!あたしはショッピングモールで買い物してたのに、変なことが経て続けに起こって、気づいたらあなたに追っかけられてたんじゃない!」


 益子の言う通り、自分の目の前にいる男はショッピングモールで見た男とは違い、頭には軽やかな印象のシルク地のような帽子を被り、それに合わせるように上下も揃えた不自然な程、シワも埃もない真珠色のスーツとネクタイ。下のワイシャツだけが、白系色ではあるが微妙な色の違いで同化せず、ネクタイの存在を引き立てている。

 重たげなチェーンではなく、金色の細く、品性すら思わせるチェーンが上着の胸ポケットから弧を描き垂れ下がっている。全体的にスタイリッシュな印象はあるのだが、


「でもなんでガスマスクしてるのよ。それも服に併せて白、なんかの流行り?特殊な舞踏会でもあるの?」


「ふむ......」


 男は優しく金チェーンを掌に乗せ、胸ポケットから懐中時計らしきものを取り出した。


「全てを探し回る時間はございませんが、もし、あなたの居た場所が私の求める場所としたら、その時の私はあなたを気に留めることはないでしょう。となれば……。若きレイディ、あなたはあの光の先が出口だとお思いでしたね?」


「さっき、あなたから逃げてた時はね。でも違うって前塞いだんじゃない」


「状況が変わりました。是非、ご自身の目でお確かめください」


 一転して、ホテルのウエイターの様に礼儀正しく頭を下げると、今度は光の向こうへ行くように促す。


「もぅ、ちゃんと説明してよ」


 文句を言いながらも、ここで留まっているよりは進展があるだろうと、益子は森の出口へと足を進める。


「時にレイディ。海へは行かない方がよろしいかと。情熱迸る熱下にて焦がれるのも青春です。ただ......、山も良いものですよ」


「?……!?」


 益子は光に一歩踏み出した状態で後ろからの声に振り向いた。

 その瞬間、体が吸い込まれる感覚に包まれると視界が歪み、いつしか気を失っていた。


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