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RVALON Ⅰ  作者: 竜;
Suppuration

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13/52

02-03

 気がつくと平野は、自分の家の近所にある公園のベンチに座っていた。


「......ここって」


 寝ぼけている感覚ではないが、少しぼんやりとした頭で辺りを見回す。人通りこそ少ないが、犬の散歩をしている中年の男性がいたり、近くの家からは家族で団欒しているのか、談笑する声すら聞こえてきた。


「寝てた......、のかな?嘘だろ、もうすっかり暗い。せっかく直帰で早く終わったのに」


 両手両足を目いっぱい伸ばし、軽くベンチからずり落ちたところで、薄っすらと星がちらついている夜空を見上げた。

 早く仕事が終わったところで、これと言って趣味の無い平野だが、それでも数時間公園で寝てたのかと思うととても損をした気になる。


「財布とかは......、特に何も盗まれてないよな。それにしても、えらく美人のおねえちゃんと会っていたような......」


 とりあえずここにいてもしょうがないのでのんびりと立ち上がり、家路へと歩いていると、普段は気にもかけない小さな神社の前を通りかかり、入り口にいる二対の狐の石造の前で足を止めた。


「化かされてた......、ってか? そうだ、今日の晩飯はキツネうどん......、のカップ麺にでもするかな」


 なにやら不思議な体験をした気はするが、恐らく夢だろうと片付け、少しだけ高揚した気分で平野は、見慣れた景色とその道を眺めながら歩き出した。


 平野が通過した狐の石造から、向こう側が透けるほど薄っすらとした玉藻とタツメが上半身だけ姿を現す。


「当主さま、今の男……」


「えぇ きっと近いうちにまたお会いするでしょうねぇ。普段は特定の人物しか近づけない結界の中に異常な回り道をして偶然......、ではありませんねぇ。あぁんもぉ、玉藻ちゃん何処でポカしたんでしょうかぁ?主様がご不在なので、気づかれない内に何とかしなきゃですねぇ」


 石造の中に体を引っ込めると、家の裏の社の道に続く、小さな鳥居から出てきた。


「管理局には依頼しませんの?」


「手続きの手間がかかるだけなのでぇ、解決できるなら自分でやった方が早いんですのよぉ。基本お役所仕事なんですからぁ。

 あぁ、大昔に使った術式ですしぃ、現在と照らし合わせると段取りが違うから巻物引っ張りだして来なきゃですぅ。どこにしまったかしらぁ?屋根裏ですかねぇ......」


「それなら当主さま」


 先程までスパイクとお昼寝(夕寝?)していたからではなく、普段から目を半分ほどしか開けていない眠そうな目のタツメは、見張り番の時の暇つぶし専用携帯型端末(共用)を玉藻に渡した。


「アーカイブして入れてありますの。まだ六割程ですが、使える術式が入ってたら巻物引っ張り出さずに済みますの......。あ、そのタグですの」


「はぁ~、世の中便利ですねぇって、ベタな台詞しか出ませんけど......。あ~、これどんぴしゃですぅ♪

 巻物だの古書だのの掠れて間違えそうな文字とは比べ物にならない綺麗さですぅ。タツメ、これ一人で?」


「基本、見張り番は暇なので。古すぎて読めない文字とかはにいねえ達に手伝ってもらってますの。ちなみに、元はサボりたいアノヒ、アツネ両兄から出たアイデアですが、実際画期的なアプリになったのがこちらですの」


 そう言ってタツメがデフォルメした火の玉の中心が目になっているようなアイコンをタップすると、玉藻とタツメを真上から見下ろす画面に切り替わった。


「タツメでも、範囲で言えば駅くらいまでなら監視できますの。ただ、ズームしたり記録時の解像度は術者の能力次第になりますの。個々のアカウントでログインすることによって記録が残るので、見張り番の時のログも残りますし、術的、物理的の同時に邪魔されない限り、証拠としてはまず信用して良いと思いますの」


「なんだか玉藻ちゃん浦島太郎さんですのぉ。と、いうことはですよ、タツメ。これの記録......、ここ三~四時間ほどの映像って出せますぅ?」


「アノミ兄が見張り番してたから、たぶん超高画質で見れると思いますの。まだ共有フォルダに入れてないので、兄に聞いた方が早いですの」


「ではではぁ、お家に戻って、ご飯ご飯しながら作戦会議といきましょうかねぇ♪今日は基本放任主義で自由奔放にさせてるお子達がグレずにどころか、こんなに優秀に育ってるってことがわかって、玉藻ちゃん目頭が熱くなってヨヨヨヨヨ~って感じ......。とも言ってられないんですが、とりあえずお子達のおかげで迅速に、そして丸く収められそうなので......。ま、お寝んねしててお夕飯遅れたタツメの件は帳消しに加え、ご褒美で宝島カレーに旗刺してあげますねぇ♪」


「当主様、お宝、島の中にお宝入れて欲しいですの!」


 眠そうな半分しか開いていない目の角度を少しだけ斜めにしたタツメは、鼻息荒く玉藻の後ろをピョンピョン跳ねながらついて行った。


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