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40メートルちょっとの同級生 3

「ところで、月乃の着てるそれって中学の制服なの?」

小鈴ちゃんが興味深そうにわたしの服を見ていた。

「そうだけど?」

「まさかと思うけど、その格好で学校行ってたの……?」

小鈴の表情が怪訝なものになっていた。

「そうだけど……」


困ったようにわたしを見てくる小鈴ちゃんの感情がよくわからなかった。普通サイズの制服をわたしが着られるように特別に大きくしてもらっただけで、デザインは普通の制服だから、今の普通サイズに見える状態でわたしの制服を見ても、何も面白いことはないと思うけれど……。


不思議に思っていると、突然小鈴ちゃんがわたしの足元で仰向けになる。

「何してんの……?」

何を思ったのか、わたしのことを足元から見上げている。わたしのスカートの中を全部見られているから、ちょっと恥ずかしかった。小鈴ちゃんは真面目そうに見えて結構変態趣味があるのだろうかと思っていると、小鈴ちゃんが思いっきりため息をついた。車くらいなら吹き飛ばせちゃいそうなくらいの強風がわたしの足元に吹きつけていた。


「やっぱり……」

「何が?」

「月乃、あんたずっとパンツ見せながら歩いてるじゃないのよ!」

「えぇ……、別にスカート履いてるから良いんじゃないかな。ていうか、わざわざ人のスカートの中覗くって、小鈴ちゃん、結構変態だったりする……?」

「いや、衆人環視の中でパンツ出しながら歩いている月乃ちゃんの方が変態だからね……?」

「別にわたしはパンツだけで歩いてるわけじゃないよ? スカート履いてるし……」

わたしが答えると、小鈴ちゃんは「例えばね……」と呆れたように話しだす。


「もし、わたしたちが元のサイズに戻れたとして、キャンプに行って、わたしがテントの中でパンツを突然掲示し出したらどう思う?」

「ねえ、小鈴ちゃん、ほんとにさっきから何言ってんの? なんでそんな変態的な質問し出したの?」

わたしが困惑していると、小鈴ちゃんは少し恥ずかしそうに顔を赤らめながら、語気を強める。

「変態じゃないから! なんでも良いから答えなさい! もし初対面のわたしが背伸びして、テントの中でパンツ掲げ出したらどうすんのかって聞いてんの!」

小鈴ちゃん、ずっと真面目な顔で何言ってるんだろ……。


まったく意図がわからないけれど、答えないと怒られそうだし、適当に答える。

「ヤバい子だって思うけど……」

「それで、わたしがテントの中は内側だから、見せてないのと同じよ、とか言い出して、納得できるわけ?」

「でも、わたしも一緒にテントの中にいる設定なんだよね?」

「そうよ」

「じゃあ、やっぱりヤバい子だと思うけど……。少なくとも、わたしが一緒に中にいるわけだし……」

「そうでしょ? そうなのよ! 月乃のスカートはテントのなの!」

「何言ってんの? わたしのスカートはテントじゃなくて、スカートだけど……。小鈴ちゃんって、なんか変な趣味とかあるの?」

変わった性癖でも持っているのだろうか。そう思っていると、小鈴ちゃんが思いっきり否定する。


「ち、違うわよ! 変な趣味っぽくなってるのは月乃の方なの!」

わたしが首を傾げていると、小鈴ちゃんが続ける。

「わたしたちの大きさだと、普通の人がわたしたちの足元にいるときには、真上を見たらスカートの中が丸見えなの。スカートで隠してるって言っても、足元の人たちにとっては、それはテントの内側にいるみたいなものだから、隠してるとは言えないの。丸見えなの!」

「な、なるほど……」

どうやらわたしはパンツを全校生徒や街の人に見せながら歩いていたらしい。


「わかってくれた?」

「うん、よくわかった……」

まあ、今更言われてもどうしようもないけれど……。


「じゃあ、小鈴ちゃんはずっとスカートは履かなかったの?」

「そうよ……」と俯きがちに呟いてから、パッと顔を明るくした。

「でも、この建物の中なら、わたしだって、問題なくスカートを履けるのよ! 最高だわ!」

そして、楽しそうにスカートの裾を持ってくるりと回っている。


「ねえ、ここの学校の制服すっごい可愛いわよね!」

実際に制服が可愛いのもあるけれど、ドール人形みたいな容姿の小鈴ちゃんが着ているから、より可愛らしくなっていた。そして、2段ベッドの1段目に置いてあった制服を小鈴ちゃんが渡してくる。袋に入った制服の上には、細い字で春山と書いてある。


「これ、月乃のやつだから、着たらそろそろ入学式の準備しよ。もうすぐ時間だから」

「もうそんな時間なんだ」

わたしは急いで着替え始める。やっぱり楽しくおしゃべりしていたら時が経つのはかなり早いらしい。

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