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身長48メートルの巨大少女ですけど普通のJKさせてもらっても良いんですか!?  作者: 穂鈴 えい
Ⅰ 入学

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48メートルのギャルと50メートルのお姫様 4

詩葉先輩がお姫ちゃん先輩の部屋のドアをノックする。部屋は3室あるけれど、わたしたち含めて4人しか生徒はいないから、詩葉先輩とお姫ちゃん先輩は2人部屋を1人で使っているみたいだ。

「お姫ちゃん先輩、入るからね」

何も返事はなかったけれど、詩葉先輩はズカズカと入っていく。中に入ると、スースーと小さな寝息がしていた。まあ、小さなと言っても、普通サイズの人からしたら台風みたいな音なんだろうけれど。


ここに来るまであまり触れないようにしていたけれど、お姫ちゃんというあだ名の理由が正直わたしにはわからなかった。多分名前が姫乃とか姫子とか、そういう名前なのだろうと適当なことを思っていた。けれど、実際にお姫ちゃん先輩と呼ばれている先輩の姿を見て理解した。

「お姫様だ……」

2段ベッドの下の段に寝ている少女を見て、思わず声に出してしまった。


堀が深くはっきりとした顔立ちの彼女は、童話の中のお姫様がそのまま現実世界に飛び出したみたいに美人だった。きっと足元から見上げる彼女は女神様みたいに神々しいのだろうなということも理解できた。今までこの大きさに不便を感じたことはほとんどないし、むしろ大きな体を楽しんでいたけれど、リアル女神様に見えるお姫ちゃん先輩を下から見上げられないことは、大きくなってから今までで一番損した気分かもしれない。


「お姫ちゃん先輩マジ美人でしょ?」

詩葉先輩がこちらを見て微笑んできたから、わたしは大きく頷いた。

「凄いですね」

小鈴ちゃんに至っては指を差して口をパクパクさせてオーバーリアクションをしているから、美人すぎて驚いているのだろう。そんなことを考えていたら、小鈴ちゃんが声を出す。


「さ、さ、さささ、SAKI、SAKIがいる! なんで? え? なんでなの?」

「サキってお姫様の名前? 小鈴ちゃん知り合いなの?」

巨大少女仲間のオフ会とかあったのだろうか。だったらわたしも行っておいたら良かったな。


「ちがうわよ! モデルのSAKIさんじゃない!!」

「白石さんお姫ちゃん先輩のこと詳しいんだね」

詩葉先輩が笑う。

「詳しいっていうか、SAKIさんの限界オタクっていうか、憧れの人っていうか、モデル転向前の子役時代からファンっていうか……」

小鈴ちゃんが初恋の人を見る目でお姫ちゃん先輩のことを見つめていた。

「で、でも、SAKIさんって身長172センチですよね?」

そう言ってから、小鈴ちゃんがわたしの方に顔を近づけてきた。


「ねえっ! もしかしてわたしたち、いつのまにか普通サイズの身長に戻ってたりしない!? わたしの身長146センチになってたりする!?」

かなり期待の眼差しで尋ねてくる小鈴ちゃんには悪いけれど、わたしたちが元通りの身長になっていたら、この巨大な部屋を自由に歩くことはできないと思う。

「残念ながら、普段通りと思うよ」

わたしは詩葉先輩の胸ポケットに入っている萩原先生を指差しておいたら、小鈴ちゃんが焦る。


「で、でも、SAKIさんのインスタの写真は全部普通サイズでしたよ!! SAKIさんはちゃんと1年生の頃から通ってるみたいですし、それならなんで……」

小鈴ちゃんがわたしたちに見せてくる画像は、たしかにどう見ても普通サイズの少女の生活風景だった。強いて文句を言うなら、被写体が美人すぎて現実感がないけれど、少なくともサイズがおかしいなんて全く思えない。


「インスタまでフォローしてるってちゃんと応援してるんだね」

わたしが感心していると、詩葉先輩がお姫ちゃん先輩の寝ているベッドの近くでしゃがんで、前髪をソッとかきあげてから、耳元で呟いた。

「良かったね、お姫ちゃん先輩、お姫ちゃん先輩の雑コラとトリックアート、まったくファンの子にバレてないみたいだよ」

「ざ、雑コラ……? トリックアート……?」

小鈴ちゃんの口から溢れた言葉に、詩葉先輩が頷いた。


「そ。基本は背景合成してんの。お姫ちゃんそういうの得意らしくて」

「こ、高性能すぎますよ……。まったく気づきませんでした」

「トリックアートっていう意味ではこれが一番面白いよ」

詩葉先輩が指差した写真には『良い天気だし、山登ってきたよ〜。高いところ最高に好き!』と文章が添えられて山に登って山頂から街をバックに自撮りをしている写真があった。


「これ普通に座って山に背中もたれ掛けさせながら、麓に足つけて撮ってるとか思わないよね。あたしらからしたら全然高いところじゃないのに、か弱いふりしてちょっと猫かぶってるのも可愛いよね」

「すごっ!」と感心する。

「クオリティも凄いし、そもそもこれまで巨大少女だってバレずに活動してきてるのも凄すぎるんですけど……」

小鈴ちゃんが言ってるけど、確かにそうだ。わたしなんてただ生活してるだけでみんなに巨大少女だとバレていて街の人たちがわたしの行動に気を付けてくれていたから。

「基本は家に篭って寝てるからね。さっきの山の写真も立ち入り禁止の方角から背中つけて撮ってるから、仮に地面から背中側をみられてたとしても、世間にはSAKIの身長は172センチだって思われてる以上、SAKIが実は巨女で山に背中をくっつけて写真を撮ってるだなんて思われないだろうからね」

と話していると、突然お姫ちゃん先輩が布団から手を外に出して、詩葉先輩のおでこをピンと弾いてデコピンをした。


わたしたちが、突然のことに驚いていると、お姫ちゃん先輩がまだ眠たそうな顔でわたしたちを見回してから呟いた。

「おはよ」

「おはようございます……」

お姫ちゃん先輩は寝起きの声でも綺麗に澄んでいたのだった。

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