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身長48メートルの巨大少女ですけど普通のJKさせてもらっても良いんですか!?  作者: 穂鈴 えい
Ⅰ 入学

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優しい怪獣と意地悪な怪獣 3

「何やってんのよ……」と困惑している小鈴ちゃんの声が聞こえてきた。わたしは小鈴ちゃんに背中を向けながら、校舎を見下ろして答えた。


「ねえ、小鈴ちゃん。怪獣みたいな子っていうのは、こういうことする子のことを言うんだよ」

「こういうこと? ……って、何してんのよ!」

わたしは左足を地面に置きながら、右足を校舎の屋上にソッと置いてみた。もちろん、地面にある左足に全体重をかけて、なんなら右足は少し浮かしている。新しい校舎だから比較的頑丈なはずだけれど、東條さんが何回かうっかり足を当てて壊してしまったと言っていたから、多分ちょっと力をかけただけで壊れてしまう。わたしたちにとっては、とても脆い校舎なのだと思う。


足が疲れて間違って上に乗せてしまったら、多分中の一般生徒を何人か葬ってしまうから、一刻も早くこの状態をやめたい。だから、小鈴ちゃんを信じて待った。彼女が優しい子なら、わたしの作戦通りに動いてくれるはずだから。


「ちょ、ちょっと! 月乃! 何してんのよ!!」

小鈴ちゃんも先ほどのわたしと同じように大きく地面を揺らしながら、わたしの元へと駆け寄る。グラウンドの端から端まで、あっという間にやってきた小鈴ちゃんがわたしのことを慌てて校舎から引き離した。

「ちょっと、小鈴ちゃん、そんなに勢いよく引っ張ったら転んじゃうよ!」


小鈴ちゃんが校舎とは反対方向の誰もいないグラウンドの方に体重をかけて引っ張ってきたから、そのままわたしは無人のグラウンドに尻餅をついた小鈴ちゃんの上に倒れ込んでしまった。わたしたちは背は30倍だけど、体重は27000倍。そんな2人が一緒に勢いよく転んだわけだから、地面が大きく揺れた。


いろいろとまずい気もするけれど、とりあえずわたしは立ち上がって、グルリとあたりを見回した。こんなことしたらヤバいのはわかっているけれど、もう賽は投げられてしまったわけだし。大きな声で宣言した。

「わたしは悪い怪獣さんだけど、今わたしを止めた小鈴ちゃんは優しい怪獣さんだから、小鈴ちゃんのこと怖がったり、悪く言ったりしたら、悪い怪獣さんが懲らしめちゃうからね! 小鈴ちゃん怪獣は意地悪なわたしを止める優しい怪獣さんだから、怒らせて拗ねちゃったら、もうわたしのこと止めてくれる人はいなくなるからね!」

とりあえず、さっきわたしたちのことを怪獣呼ばわりしてた子たちのいる、スクールバスの乗降口の方に向かって言った。


「何よ、それ……」と小鈴ちゃんは困ったように言う。

「マズかったかな?」

うん、と小鈴ちゃんが頷いた。

「こんなことしたら問題になっちゃうかもしれないじゃん。入学初日から問題児なんて嫌なんだけど」

小鈴ちゃんはプイッと顔を背けてしまった。


「ごめん……」

「謝るのはわたしじゃなくて、無関係に巻き込まれた校舎の中の子たちでしょ!」

小鈴ちゃんに言われたから、校舎に向かって頭を下げる。

「すいませんでした。お騒がせしました……」

一人一人は小さくてよくわからないから、まるで建物に向かって謝っているみたいだった。


謝り終えた後で、小鈴ちゃんが小さな声で呟いた。

「……でも、今までわたしのために怒ってくれた人っていなかったから、ちょっとだけ嬉しかった。やり方はとても褒められたものじゃないけど……」

小鈴ちゃんがデレた。わたしはまだ座ったままの小鈴ちゃんの前でしゃがんで、そのまま小鈴ちゃんのことを抱きしめたのだった。


「良かった。嫌われちゃったかと思ったよ」

「そんなんで嫌わないから……。てか、重いから退いてってば」

わたしが体重をかけてそのままもたれかかってしまったから、小鈴ちゃんは背中から倒れ込んだ。その瞬間に聞こえてきた「ヒィッ」という怯えた叫び声はわたしたちの耳には入ってきていなかった。グラウンドで巨大な少女2人が無駄に抱きしめ合いながら寝転がってしまっていた。

「はーい」と言って小鈴ちゃんの上から退こうとした瞬間に、小鈴ちゃんの頭あたりから声がした。


「春山ぁ、白石ぃ……! あんたたち入学早々何してるんのよ……!」

萩原先生が苛立った声を出しながら小鈴ちゃんのふわふわブラウンヘアの中から這い出てきた。わたしのせいで、あわや小鈴ちゃんの頭に萩原先生が潰されかけてしまっていたらしい。

「いや、その……」

小鈴ちゃんは困惑するわたしのことを急いでどかして、ギョッとした顔で起き上がってから、四つん這いになって、萩原先生の方を見た。


「せ、先生、怪我は無かったですか!?」

顔を地面に限界まで近づけて、土下座みたいな体勢になりながら、小鈴ちゃんが尋ねていた。

「え、ええ。危なかったけれど、なんとか大丈夫よ……」

小鈴ちゃんがグッと顔を近づけて、泣きそうな顔で萩原先生のことを見ていた。


小鈴ちゃんの鼻先が触れてしまいそうなくらい近くで見られた萩原先生が一瞬びっくりして背筋を正した後、3歩ほど後ろに下がってから、咳払いをする。

「と、とにかく、入学式は参加してもらうけど、終わったら事情聴取はするからね!」

えー、と頬を膨らませるわたしの横で、小鈴ちゃんが「そりゃそうでしょ」とため息をついていたのだった。

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