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第65話~閑話12~約束と任命




「ついにこの日が来た……!」


 体に力が漲る。

 今なら何でも出来そうな気がするほどに。


「来たって何がー?」


 ミクロが不思議そうに首を傾げた。


「スキル復活!!」

「おー!」


 蟹男は腰に手を当て、指を天に向けてポージングする。 ミクロは訳も分からず楽しそうに拍手した。


「では久しぶりにマーケットへ行きますか?」


 マルトエスの提案に蟹男は首を振った。


「行きたいところだけど、その前に約束を果たさないと」

「ああ、タクト・リア・オルゴールきょうのスマートフォンですか」

「うん、さすがに今動かないと買えなくなりそうだからさ」

「そうですね」


 世界は、少なくとも日本はこれからダンジョンによって変わるだろう。

 避難が始まれば携帯ショップは閉ってしまう。 その後となると、再び買えるのはいつになるか分からない。


「うん、だから久しぶりに南に行ってくるよ」

「スキルの転移先はそのまま残っていたのですね。 良かったです」


 蟹男は吸血鬼を伴って、南東京へと転移した。


「さあ、ここが……え?」


 しかし南東京があった《《はず》》の景色を見て蟹男は混乱した。


「ふむ、街とやらはどこにある?」

「い、いや確かにあったはずなんだ。 スキルのバグかなんかか……?」


 蟹男の周囲は崖に囲われていて、そして地上には何もない。 建物も、人も、何もなかった。


「いえ、ここは南東京の街ですよ。 間違いなく」

「そんなものどこにあるって――」


 マルトエスが足で地面を撫でると、砂が払われ見覚えのあるものが露出した。


『南東京支部冒険者ギルド』


 それは看板だった。


 蟹男が冒険者登録したギルドに掲げられていたものだ。


「どうしてこんなところに……?」

「ふむ、なるほど」


 呆然とする蟹男だったが、一方吸血鬼は何かに気づいた様子で頷くと、一人上空へ飛び上がった。


「分かったぞ――


――ここはジャイアント・ギガスの足跡だ」


 着地した彼女は平然とそう言った。


 その言葉の意味を蟹男の脳が理解するまで、しばらく時間が必要だった。






「ふむ、どうするのだ?」


(やべえ、どうしよう)


 蟹男は焦っていた。


 やることは決まっている。 次の街へ行けばいい。


 しかしスマホで検索をかけると、東京近郊の店舗はなぜか全て休業となっていた。


「あ~、少々お待ち――」

「まさか、出来ぬとは申さぬよな?」

「はい!」


 吸血鬼の眼光に蟹男が冷や汗を流している、そんな時、


――bbbbbbb


『加賀アリス』


 タイミングよくアリスから着信が入った。


 蟹男はまるで逃げるように通話ボタンを素早く押す。


『お久しぶり。 色々と話が付いたので一応ご報告よ』

「そ、そっか。 こっちも丁度相談があって」

『……やっぱ後にしようかしら?』

「いやいやいや、このままお願いします!」


 通話越しにため息が聞こえてきたが、蟹男も背に腹は代えられない。


『あなたの頼み事って嫌な予感しかないんだけど』

「いや、そんな難しいことじゃ……ないかもしれない。 少なくとも危険が伴うような無茶な話じゃない」

『そ、なら先にこちらから簡単に報告させてもらっていいかしら?』

「ああ、もちろん。 それでダンジョンとかどうなったんだ?」

『簡潔に言うとダンジョンは移動都市とすることに決まったわ。 それとあなたには階層長をやってもらうことになったから』

「なるほどね。 移動都市に階層長ね…………へ?」


 ダンジョンコアの使い道に興味のなかった蟹男は適当に話を流そうとしたが、聞き捨てならない言葉に動きを止めた。


「階層長って、俺が? そもそも階層長ってなに……?」

『まあ、所謂村長とかそういうやつよ。 昇進おめでとう』

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?! いやいやなんでそうなるっていうか、なんで俺? 嫌だぞ、絶対!?」


 蟹男は焦っていたことも忘れて、今度は違う意味で脇をしめらせた。


『ダンジョンコアは不本意ながら私の功績となってしまったわ』

「そうだよな、なら俺は」

『それで聞かれたの、信用出来て、ダンジョンに詳しい人物に心当たりはないかって』

「まさか……」

『正直、申し訳ないと思ってます……戦闘からの徹夜で会議に参加していて魔が差してしまって。 ただ個人的な情報は明かしていないから、断ることはできるけど……もし良ければ受けてくれないかしら?』

「いや」


 しかし断れば、この後アリスに相談はし辛くなる。


 とはいえせっかく自由な生活を手に入れたのに、責任に縛られるのはごめんだった。


『階層長といっても、いくつもある階層の一つでしかないわ。 いうなればあなたの拠点が広がると思えばいいと思うの』

「いやいや、そんな個人の勝手にしていい土地じゃないのでは?」

『そこは私とカルロスで交渉済みよ』


 蟹男は予想外に大きな話に、しばらく考えて小さく息を吐いた。


「面倒ごとは嫌いだ」

『ええ』

「生産ゲーム感覚でやるけどいいか?」

『ええ、構わないわ』

「即答かよ……」


 引く理由はない。

 正直、責任が伴わないなら面白そうな話ではあるのだ。


 アリスも蟹男の性格を理解して、交渉を済ませたのだろう。 それに拠点もミクロやマルトエスもいる蟹男はいつでもやめられるのだ。 ならば、


「分かった。 受けるよ、その話」

『ホント!!!?』

「ただし条件がある」


 蟹男はそう言って、いくつかの条件を伝え、アリスは即答でそれを了承するのだった。


「みんな行く先が決まった」


 蟹男ら一行は、アリスたちのいる冒険者ギルド本部へと向かうのだった。







閑章終

読んでいただきありがとうございます!

次話より新章入ります!


感想ありがたく読ませていただいております。

感想、評価、そして読んで下さっている事実に支えられながら執筆しております。心から感謝申し上げます。


なお面白い、つまらないどちらでも構いませんので、小説ページ下部の☆ポイントを付けてくださると大変嬉しいです!


批判・批評は大歓迎です!

お待ちしております(ニッコリ

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