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第48話『48日』2/6

 誰も助けられない。


 そもそも助けてもらおうと思っていない魔王にその資格はない。

 誰も勇者を責めないだろう。

 誰も魔王を慰めないだろう。


 この時代の主役を誰も引き摺り下ろせない。


「これでようやくジンさんの言ってた『五分の条件』ってのが叶う訳だ」


「対等扱いの前段階、人類の制圧段階か? しかしあの男との対等になる為にやるついでがコレか? 何人死んだと思ってる、魔王」


「あ? たかだか反抗貴族らが4、50人だろ? 何も知らない異能者が数万人死ぬより遥かにいい」


 世界を繋ぐ魔王として、礼司はジンに課題を出されている。


 本当なら手取り足取り時間をかけて濃密に教育した方がいいのだがそんなホモ展開を変態竜子さんが許すわけがない。

 なので大まかな課題を出してそれを竜子達と共にクリアーしていくようにしているのだ。


 現在の課題は①自分の世界の人類の制圧、支配。②魔法の存在の伝搬。③科学技術の衰退の阻止。


 ①と②は向こう側と対等に扱ってもらうためには絶対条件である。

 ③は魔法優位になると科学が蔑ろになってしまう為なるべくなら科学者の人材を確保しておいてくれと言うジンの個人的要求である。


 医学や建築、農業技術など魔法で代用できるが魔(・)力(・)、魔(・)術(・)、魔(・)法(・)な(・)し(・)でそれらの高度な技術を体現した知識は異世界側にはないのだ。


 コレは魔術の大敵である〈反魔法〉という特殊能力者のテロリズムに対抗できる強固な策になるので技術の輸入において大きな外交カードとの事だった。


 とはいえ人間は楽な方へと流れる生き物だ。

 ある程度の技術体系の衰退は避けられない。


 だから③は①②のついでである。


 最重要課題は制圧と支配、その後の魔法の伝搬が優先事項だ。


「魔王らしくなったなぁ、礼司。お前はやはり格が違う、お前みたいな奴がジンの様な小物の言うことをいちいち聞いてやる必要など無いのではないか? もう面倒いから人類を絶滅させる勢いで………………」


 無茶苦茶だが竜子の言う提案は効率という一点では最適解である。

 魔術の炎で弱い人間を殺し、生き残った人間を魔族化、その後に最小限の人数に魔法を研究させる。


 知り合いを殺された感情など生きる為という最大目的の為なら人間は無視することができる。


 ただ一つ感情という人間の根幹を無視した最適解である。


「ジンさんは小物じゃあないよ、寧ろこっちが小物だ。俺らは魔術の術式を指で数えられるくらいしか知らない、実践経験も実戦経験も少ない、全くこんなんで『魔王』と名乗っているのだから恥ずかしくなってくるよ」


(ジンさ(・)ん(・)、本人の前では言わないが本心では憧れの様な感情を持ってる様だな、妬かせてくれる❤︎)


 礼司が言いながら竜子の唇に指をかける。


「お前の魔眼〈蛇眼〉があれば目視しただけで魔術を完全にコピー出来る、俺も得意術式なら覚えられる、目で見て盗むというのは日本の職人教育の基本らしいがそれは向こう側も知っている。更に〈魔法〉の領域になると話が複雑になってしまう、故にどうあっても俺たちは異世界側には下に見られて当然の立場なんだ、見て覚えて書に書き記す。そんな大昔の人間がやってきた事をしていくしかないのだから」


 グレンがいなければそのまま接吻をしてしまう雰囲気だ。

 目に指がかかるギリギリで竜子の頬を撫でる。


 頬を赤くした竜子、だが直ぐに表情を真顔に戻す。


「礼司、本当に向こう側に行くつもりなのか? そんな必要はない、お前が行くまでもなく異能者共を実験的に投入して消費すればいい、お前の命に変えられるものなどこの世にも向こう側にもないっ!!」



 異世界出兵。

 魔王自身が異世界に行き魔法や魔術、その有用性や実戦を学びに行く。


 当初の何も知らない異能者を出兵させて無駄に死なせる愚策を防いだ今、彼ら異能者を連れていく理由がなくなり、生徒としてキチンと学びに行ける。


 だが竜子は異世界にいけない。


 そういう魔法をジンと交わした。



 だが厳密に言うとこの魔法は破ってもいい。



 だが破れば異世界側の侵略の理由になりえてしまう。

 まぁ実際はジンが顔をきかせてるから怖いもの知らずの魔族しかやってこないが、それでもこちら側の被害は見当もつかない。


 つまり1人だけホモの元に魅惑魔術が得意なビッチ魔王♂を行かせたくない、というのが一(・)番(・)の(・)理(・)由(・)で(・)、その次が魔王の身を案じてのことだ。


 礼司の処女、ではなく命に比べれば異能者如きが何人死んでも構わないのだ。


「阿呆、さっきも言ったが俺は愚王になりたくない。俺たちの『血の花の惨劇』を忘れるな、あれを最小限の犠牲とした俺の罪を忘れるな。それにな、人ひとりの命は軽くない、一万人もお前に殺させた俺が言うのは愚かしいかもしれんがお前にはもう誰も殺させたくない。出来れば、だが」


 その時が来れば魔王は勇者の力に頼ることに躊躇はない。

 だが自分が弱いままで守られる気もない。


 そして変態竜子さんは魔王に弱いままでいて欲しくて自分に依存してほしい。

 自分よりはるかに強いジンの元に行って欲しくない。


(強くなるべきは私だ。礼司、お前は私を使い倒せばいいんだ。お(・)前(・)は(・)優(・)し(・)す(・)ぎ(・)る(・)ん(・)だ(・))



 竜子は魔王のやり方に疑問を持っている。


(原作者(アイツ)のストーリー通りに私が異世界にいけば魔術の強奪も、魔法の優位性も何もかも解決する。ジンの管轄の魔族に手を出さなければ異世界側の人間と野良魔族をいくら殺そうが問題はないんだ、それは原作者との対話で知っている。だから本当ならお前の行く理由なんてないんだ)


 竜子は魔王の優しさを殺したい。


(お前が異世界側の人間まで守ろうとしているのは知っている、私はお前の心を逐一確認している。だからお前が優しい魔王だと言う事は誰よりも信じて知っている、そんなお前に優しくされた人間が私は許せない、お前には残虐で冷徹な魔王になってほしい。お(・)前(・)の(・)優(・)し(・)さ(・)は(・)私(・)だ(・)け(・)の(・)物(・)で(・)あ(・)る(・)べ(・)き(・)だ(・)、誰にも、人間如きが受けていい物ではない)



 勇者は魔王の優しさを何も知らずに享受している人類が憎い。



(嗚呼、人間などみんな消えて了(しま)えばいいのに)




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