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第47話『Dance in Zamaa』8/9

「関係ねぇよ、そんな話」


 転生前の話を簡潔に終わらせて、礼司をいじめられていた原作者だと想定して放った言葉。

 しかしその想定は間違いだった。


「関係ない? 何を言ってるのさ、いじめられた時の腹いせだろ? 僕が君を見捨てたから、それが許せなくて、僕に復讐しようとこの数日で勇者を味方にしてチート無双。良く考えられてるよ、自分の作った物語なら洗脳だって簡単だったろう」


 竜子は話の全てを理解し心は読まず言葉から聞いた事だけで判断する。


(コイツ、馬鹿だな。それが本当だとして礼司はどうやってお前をクラスメイトだと判断するんだ? そんな矛盾にも気がつけないのか? いや、違うな。コイツは多分玲子さんを見捨ててから考えるのをやめた、作業の様に世界を変えていき都合の良い事しか信じられなくなったんだな。中身が何歳だか知らないが老いとは恐ろしいものだ)


 冷静に転生者の愚かしさを暴く。


 ただ目の前の愚者を愚者と判断しただけだ。


「愚かしさの極みだ、やっぱりお前は何も見ていないんだな」


 魔王のこの一言に尽きる。

 結局は転生云々のどうこうではなく目の前の事を見てこなかった。

 誰の忠告も、誰の諌める優しさも聞いてこなかった。


 この事態になった直接的原因は彼が目も耳もない怪物になってしまった事なのだ。


 もう何も考えずに殺して良いタイミングだ。

 この世界の人間の話を聞かない怪物にはさっさと退場してもらう。

 それが本来の話の展開だろう。




 だが。



「お前が俺の話を聞かないなら、()()()()()()()()()()()


 意外にも魔王が話に乗る。


 人を殺す事に躊躇いが多少あることも間違いはない、だがこの話の起点。

 わずかな時間記憶を共有した者への礼儀。




 いや。


「あの男の、()()()()()だ」


 兄貴、この世界にはいない存在。

 記憶の中にいる男の記憶。


 魔術を理解し始めた礼司は記憶を()()()()()()()()一人の男の物語を語る。



 その『兄貴』という言葉に驚愕する人間がいた。

 愚王ではない、竜子だ。


(そいつは、私の中にいたあの礼司の兄を名乗る不審者の事か?! なんで礼司はアイツの事を知っている?! アイツは記憶の中にしかいない現実でない存在! 礼司に、礼司が会えるわけはないのに!)


 逐一心を読むヤンデレにはあり得ないはずの言葉。


(大体礼司の心にはアイツの記憶も何もないのに何を語ってる?! ………………心の中にすらない無意識の中の記憶? わ、()()()()()()()()()()()()()()!!?)


 人の心見て楽しむ変態竜子さん。


 恋人の事をなんでも知っているという絶対的自信の揺らぎ。

 勇者に読めない心はない。

 そんな世界のルールが通用しない。


 これは異世界から来た転生者の特徴。


 だが礼司自身はもちろん転生者ではない。


 原作者と深い関係を築いたと予想される幼少の頃。

 その時に苛まれた声の正体のひとつ。




 礼司は原作者と対話していた。




()()()()、お前らの事なんか憶えてないぞ?」



「なん、だと?」




 死ぬ間際でさえ自分の世界へ逃げようとした盾一に乗り移った転生者。

 ただ殺せばそれで終わりだがそれではただの暗殺だ。


 そして転生者はどうやら何も知らなかった様だ。

 そう、()()()()()()





 ()()()()()()()()()()()





「兄貴にとって一番重要なのは前に進む事。お前らにいじめられても兄貴は卒業まで学校に居続けた。何故なら逃げる事を念頭に入れてなかったから。そしてその後もお前らの事で悩むこともなかった、何故なら考えても仕方のないこと、得なんて何もない」


 第三者視点での意見。

 いや愚王自体が第三者なのだから別世界視点、もしくは第四者視点とでも言うべきか? 感情的になる必要のない者からの冷静な意見。


 その言葉は愚王の心に突き刺さった。


「嘘だ」


 耳を持つ様になった耳が()()()()怪物は思い出す。


「だからお前らの事なんて顔も覚えてない。綺麗さっぱり忘れていた。だからな、お前がこの世界でちゃんと俺の親をしていれば……………お前を恨む奴なんて一人も居なかったんだよ」


 この世界でしてきた愚行の数々、その悪行の全てを。


「そんなわけない! だったら、そうだとしたら僕は何のために罪悪感を誤魔化して生きてきたっていうんだ!! 正義だと嘯いてきたというんだ!! 心を殺してきたっていうんだよ!!!」


「この世界の誰かのために生きていれば少しは違ったのかもな? だがもう遅い」




 その言葉責めは異次元的に異質のものだった。

 恐らくこれまでの全てを物語として見てきた者にも魔王の言ってる意味が分からない。


 だがその意味不明な言葉は怪物の心を掴み潰す。



 愚王は大粒の涙を流し、その瞳から光が消えていった。


 そもそもが限界だった老いた精神状態で思いもよらない言葉での攻撃にとどめを刺されたのだ、もう生まれ変わって記憶があっても無意味だろう。



「僕は、悪なのか?」



「悪? そんなのはどうでも良い、お前が邪魔だから殺す、それだけだ」



 力の抜けた人形の様に全身の力が抜けていく様だった。

 彼自身がこの世界の人を人形と断じてきたそれになったのだ。


「竜子、お前の手を借りて良いか?」


「あ、ああ構わない」


 竜子の手を借りる。それは竜子の手を持ってエクスカリバーを愚王を斬首するということ。


 竜子がこの殺戮パーティを考えていたことから考えていた悪趣味。

 それを言うまでもなく礼司は考えついていた。


 何故に悪趣味なのかというとこの図式は男女がともにひとつのことを成す姿が、まるで結婚式のケーキ入刀、つまりははぢめての共同作業の様だと勇者が一人で妄想していたからだ。


 項垂れ肩を落とした愚王に、もう抵抗の意思すら感じられない。


 だが殺す事に何も変わりはしない。

 これはケジメ、9000人超の命を殺した最後のケジメだ。



 エクスカリバー 1 ロンギヌス


 刃渡り1メートルはある太いバスターソードを取り出した。

 

「お楽しみの時間だ❤︎」


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